少年少女たちの日々

原口源太郎

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「梨花」
 俊輔と梨花が振り返ると、真希とみゆきがいた。
「おやおや、二人いい雰囲気だね。深夜のデートかな?」
 真希が言う。
「どうしたの? こんな遅くに」
 梨花が真希に尋ねた。
「それはこっちが聞きたい。いつからそんな仲だったの?」
「違うよ。二人とも寝るところがなくて、ここでたまたま一緒になっただけ」
「なーんだ、私たちと同じか。結局、若者が疎外されるんだよね」
「しょうがないだろ。四つしかベッドがない部屋に六人も押し込まれるんだから」
 俊輔が女性たちの会話に加わる。
「ショウ君と修君はどうしたのかな?」
 みゆきが言った。
「ずーずーしくベッドで寝ているのじゃないの?」
 真希がみゆきの言葉に応える。
「あいつらなら床の上でも寝られる」
「何だって」
「きゃ」
 不意に四人の後ろで声がして、誰かが可愛い悲鳴を上げた。
「あれ、ショウも」
「シュン一人が女の子に囲まれているのは許せんからな」
「何言ってる」
「どうせなら修も起こしてこようぜ」
「やめときなさいよ」
 真希が止めた。
「修だって可哀相だよ。昼間俺たちが寝ているのに、あいつだけ起きているってのは。シュン、行こう」
「部屋知ってる?」
「知ってる」
 二人は船内へと戻っていった。
「ねーねー、二人で何を話していたの? もしかしたら、愛の告白?」
「違うよ。だって私の好きな人、シュン君じゃないもん」
「よかったわね、みゆき」
「何で」
 みゆきは素っ気無く言った。
「あれ? 何かしら」
 海を見て梨花が言った。
「何?」
 真希も海を覗きこむ。
「あそこ、魚が跳ねたみたい」
 海の中に何か白いものが見えた。
「何だろう」
 三人で海を覗きこんだ。
 その時だった。
 三人の顔がパッと明るく映し出され、その後で爆音が響いた。
 一番近くの貨物船の横で光る水柱が上がった。
 パッパッパッと船上で小さな爆発が見え、たちまち炎に変わった。
 少女たちは目の前の出来事に恐怖に包まれて身動きできずにいる。
 サイレンがけたたましく鳴りだし、男たちがばらばらと甲板に飛び出してきた。
 先頭をきって出てきたのが俊輔たち三人で、あとに軍服を着た男たちが続く。
「おい、お前たち、何があったか見ていたか?」
 軍人が三人の少女に尋ねた。三人は青くなって震えている。
「え? 見ていなかったか?」
「爆発したんです」
 真希が何とか言葉を口にした。
「それは見ればわかる」
「そういえば、梨花」
 真希は梨花を見た。
「何か海の中を白いものが行って・・・」
 軍服の男は振り返って後ろの男に怒鳴る。
「やはり魚雷だ! 至急警戒レベルを上げるよう連絡しろ! レーダーの影は潜水艦だ」
「はい!」
「避難体制とれ! 護衛艦からの連絡は!」
「まだありません」
 甲板に軍人は少ししかいない。何でもない貨物船だからだ。
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