9 / 15
9
しおりを挟む
体育館裏のいつもの場所に『青山澄香ファンクラブの』面々が座り込んで話をしている。
「結構すごい新兵器なんだ」
そう言って森下がパソコンを操作すると、小型のドローンに搭載されている超小型カメラが上下左右に動く。その映像がパソコンのモニターに映し出され、四人はそれを見て歓声を上げる。
「凄え」
「映像の倍率も上げられるし、ある程度の画像のデジタル処理もできる。あと、これはまだ製作途中なんだけど赤外線カメラも搭載して夜間でも」
「それはやめておけ。犯罪になるぞ」
平が口を挟む。
「なんで?」
「なんでって、夜中にそんなもん飛ばしてたら、普通の人はヤバイことに使ってると思うだろ」
「そう?」
「そうだよ。お前すごく頭がいいくせに、そういう常識的なところでネジが一本抜けてんだよな」
「なんだよそれ」
「それで、これはどこで使うんだ?」
河原が平と森下の会話に割って入る。
「まだわからない」
森下が答える。
「そういえば俺、怪しい動きをキャッチしたんだ」
河原はメンバーを見ながら言った。
「また澄香様に手を出そうとするやつ?」
大崎が眉間にシワを寄せて言う。
「うん。俺のクラスの野村。今朝、ちょっと気になることがあったし、青山と席が隣になる数学の授業のときに何かを渡してたらしい」
「野村か。どちらかというと今までの三人とは違うタイプの男だな」
「あいつは硬派というか、悪く言えば女に対して意気地がないから、俺の思い過ごしかもしれないけど」
大雄のことをよく知る河原が言う。
「澄香様はどんな様子だった?」
「俺が見てたわけじゃないからよくわからないけど、あまりいい感じの対応じゃなかったらしい」
「じゃあ、気にしなくてもいいだろ」
「いや、それがかえって良くないんじゃないか? 青山に交際を申し込んで振られた今までの男たちのときとは明らかに対応が違うとしたら、野村のことを嫌っているか、あるいは、もしかしてその逆もありうる」
「それなら最重要人物としてチェックしておいたほうがいいな」
大崎は同意を得るようにメンバー全員の顔を見て言った。
その日の放課後のグラウンドで大雄たちサッカー部員が練習をしている。
時折強い風が吹き、砂埃を巻き上げる。
大雄がボールを蹴った。パスの相手は同じサッカー部の山田だ。
その隣では村沢が同じように相手とボールのやり取りをしている。
「今日渡すのか?」
ボールを蹴ったあと、村沢が大雄に尋ねた。
「そのつもり」
ボールを胸でトラップした大雄が答える。
「下駄箱にでも入れておく?」
「いや、直接渡す」
「そうか。頑張れ」
「でも、そんな勇気が・・・・」
「今更何言ってる」
大雄はとんでもない方向にボールを蹴ってしまう。
その向こうのテニスコートでは、青山が他のテニス部員とボールを打ち合っている。
日が傾いてきた。高校の敷地内にある銀杏の大木を風がさわさわと揺らしている。
部活を終えた生徒たちが昇降口や部室から出て、校門へと歩いていく。
昇降口の近くに身を潜めるようにして青山澄香が立っている。
着替えを済ませた大雄が走ってきた。
「待った?」
「来たばかり」
大雄はカバンから手紙を取り出す。
「これ、読んでほしい」
「なに?」
青山は怪しい物でも見るような目つきで手紙を見る。
「手紙」
青山はふて腐れたような目で大雄を見た。
「わざわざ呼び出さなくても、数学のときに渡してくれたらよかったのに」
「他人の目がある」
青山が手紙へ手を伸ばしたとき、突風が吹いた。
青山は髪の毛とスカートを手で抑える。
手紙は風に飛ばされて空に舞い上がった。
「あっ」
青山が小さく声を出す。
大雄は慌てて手紙を追って走り出した。
「結構すごい新兵器なんだ」
そう言って森下がパソコンを操作すると、小型のドローンに搭載されている超小型カメラが上下左右に動く。その映像がパソコンのモニターに映し出され、四人はそれを見て歓声を上げる。
「凄え」
「映像の倍率も上げられるし、ある程度の画像のデジタル処理もできる。あと、これはまだ製作途中なんだけど赤外線カメラも搭載して夜間でも」
「それはやめておけ。犯罪になるぞ」
平が口を挟む。
「なんで?」
「なんでって、夜中にそんなもん飛ばしてたら、普通の人はヤバイことに使ってると思うだろ」
「そう?」
「そうだよ。お前すごく頭がいいくせに、そういう常識的なところでネジが一本抜けてんだよな」
「なんだよそれ」
「それで、これはどこで使うんだ?」
河原が平と森下の会話に割って入る。
「まだわからない」
森下が答える。
「そういえば俺、怪しい動きをキャッチしたんだ」
河原はメンバーを見ながら言った。
「また澄香様に手を出そうとするやつ?」
大崎が眉間にシワを寄せて言う。
「うん。俺のクラスの野村。今朝、ちょっと気になることがあったし、青山と席が隣になる数学の授業のときに何かを渡してたらしい」
「野村か。どちらかというと今までの三人とは違うタイプの男だな」
「あいつは硬派というか、悪く言えば女に対して意気地がないから、俺の思い過ごしかもしれないけど」
大雄のことをよく知る河原が言う。
「澄香様はどんな様子だった?」
「俺が見てたわけじゃないからよくわからないけど、あまりいい感じの対応じゃなかったらしい」
「じゃあ、気にしなくてもいいだろ」
「いや、それがかえって良くないんじゃないか? 青山に交際を申し込んで振られた今までの男たちのときとは明らかに対応が違うとしたら、野村のことを嫌っているか、あるいは、もしかしてその逆もありうる」
「それなら最重要人物としてチェックしておいたほうがいいな」
大崎は同意を得るようにメンバー全員の顔を見て言った。
その日の放課後のグラウンドで大雄たちサッカー部員が練習をしている。
時折強い風が吹き、砂埃を巻き上げる。
大雄がボールを蹴った。パスの相手は同じサッカー部の山田だ。
その隣では村沢が同じように相手とボールのやり取りをしている。
「今日渡すのか?」
ボールを蹴ったあと、村沢が大雄に尋ねた。
「そのつもり」
ボールを胸でトラップした大雄が答える。
「下駄箱にでも入れておく?」
「いや、直接渡す」
「そうか。頑張れ」
「でも、そんな勇気が・・・・」
「今更何言ってる」
大雄はとんでもない方向にボールを蹴ってしまう。
その向こうのテニスコートでは、青山が他のテニス部員とボールを打ち合っている。
日が傾いてきた。高校の敷地内にある銀杏の大木を風がさわさわと揺らしている。
部活を終えた生徒たちが昇降口や部室から出て、校門へと歩いていく。
昇降口の近くに身を潜めるようにして青山澄香が立っている。
着替えを済ませた大雄が走ってきた。
「待った?」
「来たばかり」
大雄はカバンから手紙を取り出す。
「これ、読んでほしい」
「なに?」
青山は怪しい物でも見るような目つきで手紙を見る。
「手紙」
青山はふて腐れたような目で大雄を見た。
「わざわざ呼び出さなくても、数学のときに渡してくれたらよかったのに」
「他人の目がある」
青山が手紙へ手を伸ばしたとき、突風が吹いた。
青山は髪の毛とスカートを手で抑える。
手紙は風に飛ばされて空に舞い上がった。
「あっ」
青山が小さく声を出す。
大雄は慌てて手紙を追って走り出した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる