Love letter

原口源太郎

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 体育館裏のいつもの場所に『青山澄香ファンクラブの』面々が座り込んで話をしている。
「結構すごい新兵器なんだ」
 そう言って森下がパソコンを操作すると、小型のドローンに搭載されている超小型カメラが上下左右に動く。その映像がパソコンのモニターに映し出され、四人はそれを見て歓声を上げる。
「凄え」
「映像の倍率も上げられるし、ある程度の画像のデジタル処理もできる。あと、これはまだ製作途中なんだけど赤外線カメラも搭載して夜間でも」
「それはやめておけ。犯罪になるぞ」
 平が口を挟む。
「なんで?」
「なんでって、夜中にそんなもん飛ばしてたら、普通の人はヤバイことに使ってると思うだろ」
「そう?」
「そうだよ。お前すごく頭がいいくせに、そういう常識的なところでネジが一本抜けてんだよな」
「なんだよそれ」
「それで、これはどこで使うんだ?」
 河原が平と森下の会話に割って入る。
「まだわからない」
 森下が答える。
「そういえば俺、怪しい動きをキャッチしたんだ」
 河原はメンバーを見ながら言った。
「また澄香様に手を出そうとするやつ?」
 大崎が眉間にシワを寄せて言う。
「うん。俺のクラスの野村。今朝、ちょっと気になることがあったし、青山と席が隣になる数学の授業のときに何かを渡してたらしい」
「野村か。どちらかというと今までの三人とは違うタイプの男だな」
「あいつは硬派というか、悪く言えば女に対して意気地がないから、俺の思い過ごしかもしれないけど」
 大雄のことをよく知る河原が言う。
「澄香様はどんな様子だった?」
「俺が見てたわけじゃないからよくわからないけど、あまりいい感じの対応じゃなかったらしい」
「じゃあ、気にしなくてもいいだろ」
「いや、それがかえって良くないんじゃないか? 青山に交際を申し込んで振られた今までの男たちのときとは明らかに対応が違うとしたら、野村のことを嫌っているか、あるいは、もしかしてその逆もありうる」
「それなら最重要人物としてチェックしておいたほうがいいな」
 大崎は同意を得るようにメンバー全員の顔を見て言った。

 その日の放課後のグラウンドで大雄たちサッカー部員が練習をしている。
 時折強い風が吹き、砂埃を巻き上げる。
 大雄がボールを蹴った。パスの相手は同じサッカー部の山田だ。
 その隣では村沢が同じように相手とボールのやり取りをしている。
「今日渡すのか?」
 ボールを蹴ったあと、村沢が大雄に尋ねた。
「そのつもり」
 ボールを胸でトラップした大雄が答える。
「下駄箱にでも入れておく?」
「いや、直接渡す」
「そうか。頑張れ」
「でも、そんな勇気が・・・・」
「今更何言ってる」
 大雄はとんでもない方向にボールを蹴ってしまう。
 その向こうのテニスコートでは、青山が他のテニス部員とボールを打ち合っている。

 日が傾いてきた。高校の敷地内にある銀杏の大木を風がさわさわと揺らしている。
 部活を終えた生徒たちが昇降口や部室から出て、校門へと歩いていく。
 昇降口の近くに身を潜めるようにして青山澄香が立っている。
 着替えを済ませた大雄が走ってきた。
「待った?」
「来たばかり」
 大雄はカバンから手紙を取り出す。
「これ、読んでほしい」
「なに?」
 青山は怪しい物でも見るような目つきで手紙を見る。
「手紙」
 青山はふて腐れたような目で大雄を見た。
「わざわざ呼び出さなくても、数学のときに渡してくれたらよかったのに」
「他人の目がある」
 青山が手紙へ手を伸ばしたとき、突風が吹いた。
 青山は髪の毛とスカートを手で抑える。
 手紙は風に飛ばされて空に舞い上がった。
「あっ」
 青山が小さく声を出す。
 大雄は慌てて手紙を追って走り出した。
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