色々なSF作品 短編集

原口源太郎

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何でも溶かす薬 part 2

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 私は昔、何でも溶かす薬を作り、地球を溶かしてしまった愚かな科学者だ。
 星々を渡り歩き、銀河系の彼方、岩ばかりのこの星に今は落ち着いている。
 この辺境の地では、私が人類発祥の地、地球を消してしまったことなど誰も知らない。
 そこで私は、ここであの薬を発表することにした。

 この星は地球より小さく、星の中心まで岩石でできていて、地表には人類が生活できるほどの酸素と大気がある。もちろん昔この星を開拓した地球人が苦労してそんな環境を築いたのだ。
 この星ならあの液体を作っても星が壊されることはないだろう。何でも溶かすあの黒い液体は惑星の中心に居続け、周りの岩石を徐々に溶かすだろうけれども、この星を消滅させるまでは何万年もかかる。
 
 発表の会場には多くの人々が集まった。そして大部分の人々が驚き、その薬を信じた。
 黒い液体は様々な素材で作った容器を溶かして、その惑星の中心へと続く穴を作っていった。しかし一部の人は、実際にその物を見るまで信じないと言った。会場にできた穴ぼこだって本物かどうかとも。

 数日後、私は一部の愚かな人々を乗せて宇宙空間へ出た。
 宇宙船の真ん中に黒い液体を浮かべ、そこにあらゆるものを放り込んでいった。
 みんなジュッと音がして消えた。それでみんな納得した。
 誰かが息苦しさを訴え、私も頭がくらくらした。
 宇宙船が酸素不足の非常事態を告げ始めた。
 私は慌てて宇宙服へと向かって飛んだ。
 私は酸素ボンベを取り出す前の薄れていく意識の中で、自分の愚かさを呪っていた。
 あの薬は何でも溶かす薬だ。
 空気でさえも。
 そういえば、宇宙へ出るとき、なんとなく息苦しさを感じた。
 きっとあの星も今頃は・・・・


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