色々なSF作品 短編集

原口源太郎

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美しい地球を嫌う侵略者

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 船団は続々と月の裏側に集結しつつあった。
 その船団の中の、巨大な旗艦の指令室中央に、その船団を率いる団長の椅子があった。
 団長はそこで、前方の巨大スクリーンに映し出される青い惑星を見ていた。
 静かに団長の脇に、団長付きの高官が現れた。
「長老たちの意見はまとまったかね?」
 団長はスクリーンの惑星を見たまま尋ねた。
「はい。第三惑星を支配している高等生物は好戦的でありながら、知能レベルは低いという調査隊の報告と、見るに堪えない姿に、共存するということは耐え難いというのが長老たちの意見です」
 高官は答えた。
「そうか。私も同意見だ。一時間後に総攻撃を開始すると全艦に告げよ」
「わかりました」
 高官は静かに姿を消した。
「それにしても、何とも醜い星だ」
 団長はそっとつぶやいた。

 280時間後に、その星を支配していた生物は宇宙人たちの手により全滅した。
 しかし宇宙船団はまだ月の裏側から動かずにいた。
 団長は指令室の中央で、巨大スクリーンに映し出される第三惑星を見ていた。
 静かに団長付きの高官が現れた。
「長老たちの意見はまとまったかね?」
 団長は高官に尋ねた。
「はい。遺伝子組み換えにより、第十二世代から補助装置なしであの惑星で生きていくことができるという学者達の報告でしたが、あのじめじめしていて、けばけばしい惑星で子孫を残していくのは耐え難いというのが長老たちの意見です」
 そう高官が答えた。
「そうか。私も同意見だ。一時間後に別の惑星に向け出発すると全艦に告げよ」
「わかりました」
 高官は消えた。
「やっとあの醜い惑星を見なくて済む」
 団長はそっとつぶやいた。

 恐竜を滅ぼした火星人たちは、別の太陽系の惑星を探索するために旅立っていった。
 醜い青色の第三惑星を持つ太陽系を離れる頃、静かに団長付きの高官が現れた。
「長老たちの意見はまとまったかね?」
「はい。今、目指している惑星が移住不可と判断された場合、もう一度この太陽系の第三惑星に戻って移住計画を検討するというのが長老たちの意見です」
「そうか」
「先ほどの惑星に戻るまでにかかる時間はおよそ6600万年になります」
「そうか。その頃にはあの惑星も少しはましになっているといいが」
 団長はそっとつぶやいた。
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