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翌朝、私はゴミを出すためにマンションのドアを開けた。
すると丁度お隣の部屋のドアも開いて、山岡の旦那さんが出てきた。会社に行くような支度をして私と同じように片手にゴミの袋をぶら下げている。
「お、おはようございます」
岡山さんは私を見て狼狽えたように言った。
「おはようございます」
私も慌てて挨拶を返した。
私は専業主婦だけど岡山夫妻は共働きだ。よく二人揃って部屋を出ていくのを見かける。だけど今日は旦那さん一人だった。
岡山さんの持つゴミ袋の上の方に少しの赤い色が付いているのを見て、私はドキリとした。
黒っぽい赤。あれはもしかして血?
そんな私の視線に気づく様子もなく、岡山さんはエレベーターのボタンを押した。
エレベーターの中は私たちだけで、空気は重く、話す言葉もなかった。私はただ岡山さんが手にしているゴミの袋が気になっていた。
やけに重そうだ。
ゴミ置き場に袋を置くと、岡山さんは軽く会釈をして足早に去っていった。
私は岡山さんが置いていった袋が気になって仕方がなかった。自分のごみ袋を置きながらも、隣に置かれた赤い色の付着した袋の中を覗きたいという激しい欲求にかられた。
しかし朝の道は歩く人も多い。私は頭の中の疑惑を振り払い、自分の部屋へと戻った。
パソコンの画面をボーっと見ながら昨夜のことを考えていた。
お隣夫婦が喧嘩をするなんて珍しい。奥さんはともかく、旦那さんは大人しくて怒ったり大きな声を出したりする人のようには見えない。だけど昨夜は確かに言い争う声が聞こえてきた。
『あの女とは別れると言ったじゃない! この嘘つき!』
奥さんのそんな言葉だけを聞き取ることができた。ということは旦那さんが浮気をしていたということだろう。
あの腰の低い旦那さんが?
それからしばらく大きな声のやり取りがあり、ドスンドスンという物音。
ついに取っ組み合いのけんかを始めたのかしら?
でもそれはすぐに収まった。そして静寂。
一体何があったのだろう。
今朝のあの重そうなゴミ袋。
そういえば昨夜、お隣が静かになってから聞き耳を立てている時に、お風呂のある辺りから何やらゴトゴトという音が微かに聞こえてきた気がする。
もしかして旦那さんは奥さんを?
すると丁度お隣の部屋のドアも開いて、山岡の旦那さんが出てきた。会社に行くような支度をして私と同じように片手にゴミの袋をぶら下げている。
「お、おはようございます」
岡山さんは私を見て狼狽えたように言った。
「おはようございます」
私も慌てて挨拶を返した。
私は専業主婦だけど岡山夫妻は共働きだ。よく二人揃って部屋を出ていくのを見かける。だけど今日は旦那さん一人だった。
岡山さんの持つゴミ袋の上の方に少しの赤い色が付いているのを見て、私はドキリとした。
黒っぽい赤。あれはもしかして血?
そんな私の視線に気づく様子もなく、岡山さんはエレベーターのボタンを押した。
エレベーターの中は私たちだけで、空気は重く、話す言葉もなかった。私はただ岡山さんが手にしているゴミの袋が気になっていた。
やけに重そうだ。
ゴミ置き場に袋を置くと、岡山さんは軽く会釈をして足早に去っていった。
私は岡山さんが置いていった袋が気になって仕方がなかった。自分のごみ袋を置きながらも、隣に置かれた赤い色の付着した袋の中を覗きたいという激しい欲求にかられた。
しかし朝の道は歩く人も多い。私は頭の中の疑惑を振り払い、自分の部屋へと戻った。
パソコンの画面をボーっと見ながら昨夜のことを考えていた。
お隣夫婦が喧嘩をするなんて珍しい。奥さんはともかく、旦那さんは大人しくて怒ったり大きな声を出したりする人のようには見えない。だけど昨夜は確かに言い争う声が聞こえてきた。
『あの女とは別れると言ったじゃない! この嘘つき!』
奥さんのそんな言葉だけを聞き取ることができた。ということは旦那さんが浮気をしていたということだろう。
あの腰の低い旦那さんが?
それからしばらく大きな声のやり取りがあり、ドスンドスンという物音。
ついに取っ組み合いのけんかを始めたのかしら?
でもそれはすぐに収まった。そして静寂。
一体何があったのだろう。
今朝のあの重そうなゴミ袋。
そういえば昨夜、お隣が静かになってから聞き耳を立てている時に、お風呂のある辺りから何やらゴトゴトという音が微かに聞こえてきた気がする。
もしかして旦那さんは奥さんを?
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