スーパースター

１７

　オリンピックが終わって一カ月が経った。日本中を震わせたオリンピックの興奮も冷めようとしていた。
　俺は大学の食堂で中沢たちと昼飯を食べていた。
　きょろきょろとしながら慌てた様子で吉田が入ってきた。
　吉田は俺を見つけ、急ぎ足で寄ってきた。
「どうした？」
　吉田が大学に来るなんて珍しい。
「神谷のこと、聞いた？」
「神谷がどうした？」
「死んだかもしれない。今テレビでやっているらしい」
　俺はスマホを取り出してニュースを見た。
　神谷が勤める研究所で爆発事故があり、数人が心肺停止の状態で病院に運ばれ、その中に神谷も入っているらしい。
　俺は残りの昼飯を掻き込み、席を立った。
　吉田はテレビを持っていないから、誰かからテレビでそのことをやっていると聞きつけ、俺のところへやって来たのだ。
　俺はまだ半信半疑で吉田と自分の部屋へ飛んで帰った。
　テレビをつけると、見たことのある製薬会社の門の前でレポーターが喋っていた。
「爆発があったのは今日の午前９時頃で、研究所の職員のうち８名が心肺停止の状態で病院に搬送されましたが、全員の死亡が確認されました。職員の中には先の東京オリンピックの金メダリスト、神谷光一さんも含まれていると思われます・・・・」
　俺はただ茫然とテレビの画面を見続けた。

　翌日、一通の手紙が届いた。神谷からだった。
　便箋には、あの汚い文字がびっしりと並んでいた。