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「神谷って、あの日本記録の神谷?」
「そうだよ。これで俺の言っていたことが嘘じゃないってわかっただろ」
「しかし汚い字だな」
そう言いながら吉田は手紙を読み始めた。
「でも神谷はすごく頭がいいんだぜ」
「ふーん」
吉田は気のない返事をしただけだった。
高校時代、俺は陸上部で走り高跳びをやっていた。神谷も同じ陸上部に所属し、短距離が専門だった。高校の時から、あのひょろひょろとした巨体が歩いているところは間が抜けているように見えたが、走り出すと人が変わったようだった。
高校三年の春、俺はインターハイの県予選で上位に残れず、陸上部員としての青春の1ページのほとんどが終わった。
まだ完全に終わったと言えなかったのは神谷がいたからだ。フィールド内で、俺は神谷が走る姿を我を忘れて眺めていた。
身長の大きな神谷はひときわ目立った。神谷の巨体がどたばたと走り、どん尻でゴールする姿は誰でも容易に想像ができた。しかし神谷はトップでゴールに滑り込んだ。滑り込むという表現がぴったりするような滑らかな走りだった。
全国大会で神谷が予選敗退したという知らせを聞いた時、俺の1ページは終わった。
「そっか」
あまり興味無さそうに、吉田は読み終えた便箋を畳んで封筒に入れた。
「メダルを狙うってさ」
「そりゃ無理だ」
吉田は俺の言葉を即座に否定した。
「やっぱり無理かな」
「十秒をやっと切れるかどーかじゃ、ちょっと無理でしょ」
「そうだよなあ」
そう言いながも、俺はやってくれるかもしれないという根拠のない漠然とした思いがあった。
「そうだよ。これで俺の言っていたことが嘘じゃないってわかっただろ」
「しかし汚い字だな」
そう言いながら吉田は手紙を読み始めた。
「でも神谷はすごく頭がいいんだぜ」
「ふーん」
吉田は気のない返事をしただけだった。
高校時代、俺は陸上部で走り高跳びをやっていた。神谷も同じ陸上部に所属し、短距離が専門だった。高校の時から、あのひょろひょろとした巨体が歩いているところは間が抜けているように見えたが、走り出すと人が変わったようだった。
高校三年の春、俺はインターハイの県予選で上位に残れず、陸上部員としての青春の1ページのほとんどが終わった。
まだ完全に終わったと言えなかったのは神谷がいたからだ。フィールド内で、俺は神谷が走る姿を我を忘れて眺めていた。
身長の大きな神谷はひときわ目立った。神谷の巨体がどたばたと走り、どん尻でゴールする姿は誰でも容易に想像ができた。しかし神谷はトップでゴールに滑り込んだ。滑り込むという表現がぴったりするような滑らかな走りだった。
全国大会で神谷が予選敗退したという知らせを聞いた時、俺の1ページは終わった。
「そっか」
あまり興味無さそうに、吉田は読み終えた便箋を畳んで封筒に入れた。
「メダルを狙うってさ」
「そりゃ無理だ」
吉田は俺の言葉を即座に否定した。
「やっぱり無理かな」
「十秒をやっと切れるかどーかじゃ、ちょっと無理でしょ」
「そうだよなあ」
そう言いながも、俺はやってくれるかもしれないという根拠のない漠然とした思いがあった。
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