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車のこちら側に一人。仁王立ちになり、両手で拳銃を構えている。
パン! パン! パン!
男が闇雲に撃つ。
勇治は姿勢を低くして男の胸元に飛び込んだ。
「うえ!」
男が慌てたように顔を歪める。
ビシュッ!
勇治は下から刀を振り上げた。
鈍い手応えがあった。
血飛沫が飛ぶ。
「ウギュ!」
斬られた男が叫びにならない声を出して倒れる。
勇治はその横を駆け抜け、車のボンネットに飛び乗った。そしてさらに大きくジャンプする。
車の向こうに二人いた。
坊主頭の太った男が慌てて拳銃を向ける。勇治はその男の脳天へと刀を振り下ろした。
太った男は反射的に腕を上げて頭を反らす。体格の割には素早い動きであった。しかしそれで刀から身を守るには無理があった。
力強い一撃は男の腕を薙ぎ払い、頭の側面に突き刺さった。そのままの勢いで勇治は男と激突する。
太った男は跳ね飛ばされるように後ろへと倒れた。倒れたままビクビクと体を震わせて血を撒き散らす。
「う、うわー」
車の陰にいたもう一人が走り出した。
勇治は無言で後を追う。
背後に気配を感じた男が振り向いた時、勇治は刀を振り下ろしていた。
まるで手応えがないと思えるほど見事に男を切り捨てた。それだけ気が入っていた。
骨と心臓を断たれた男はあっけなく絶命してその場に崩れ落ちる。
パンと音がして勇治は脇腹に熱い衝撃を感じた。咄嗟に身を沈め、低い草の中に体を隠す。もう一台の車が停まっていた。
勇治は地に這いつくばるような姿勢で素早く移動する。片手で刀を持ったまま、もう一方の手でズボンに挟んであった拳銃を抜く。
相手も警戒しているらしい。波の音と吹き抜ける風の音がしてくるばかりである。
草むらに身を隠した姿勢で刀を置き、拳銃の安全装置を外す。そして辺りを警戒しながら撃たれた脇腹に手をやってみる。ぬめぬめした感触があったが、斬った男たちの返り血を浴びたため、己の血か斬った者の血かわからない。しかしそこには確かにきりきりとした痛みがあった。
「おい! 出てこい!」
男の図太い声が聞こえた。
勇治は拳銃を構えたままじりじりとさがる。さがりながら辺りを見る。
真直ぐに海沿いに伸びる堤防。それと並行に走る道路。その間の砂地に雑草が生い茂っている。相手の目から身を隠すことはできるが、銃弾から身を隠すものは何もない。見つかるのは時間の問題である。
男たちは大胆になった。車の陰から出てきて歩き回る物音が聞こえる。
「おい、見ろ」
「うへ、化け物か、あいつは」
男たちの声。斬られた仲間を見ているらしい。
追ってきたもう一台の車に乗っていたのも三人。何とかやれるか。勇治がそう思った時である。
さらに一台の車が停まり、バタンバタンとドアの閉まる音がした。
「セガワにモク、ヨッさんが殺られました」
「あいつはどこだ?」
その声を聞いた時、勇治の背に電気が走った。忘れもしない。組幹部、太田の声である。
「近くの草ん中に隠れていると思いますが。普通の奴じゃないもんで」
「何言ってんだ」
プシュン、プシュンとくすんだ音が発せられた。闇雲に草むらに向かって拳銃で撃っているらしい。
「早く捜せ!」
太田が怒鳴った。
男たちがガサゴソと草むらの中を歩く。
勇治は草の中から飛び出した。獲物に狙いを定めたチーターのように走る。
「いた!」
男の怒鳴り声。
数発の銃声が続く。
パン! パン! パン!
男が闇雲に撃つ。
勇治は姿勢を低くして男の胸元に飛び込んだ。
「うえ!」
男が慌てたように顔を歪める。
ビシュッ!
勇治は下から刀を振り上げた。
鈍い手応えがあった。
血飛沫が飛ぶ。
「ウギュ!」
斬られた男が叫びにならない声を出して倒れる。
勇治はその横を駆け抜け、車のボンネットに飛び乗った。そしてさらに大きくジャンプする。
車の向こうに二人いた。
坊主頭の太った男が慌てて拳銃を向ける。勇治はその男の脳天へと刀を振り下ろした。
太った男は反射的に腕を上げて頭を反らす。体格の割には素早い動きであった。しかしそれで刀から身を守るには無理があった。
力強い一撃は男の腕を薙ぎ払い、頭の側面に突き刺さった。そのままの勢いで勇治は男と激突する。
太った男は跳ね飛ばされるように後ろへと倒れた。倒れたままビクビクと体を震わせて血を撒き散らす。
「う、うわー」
車の陰にいたもう一人が走り出した。
勇治は無言で後を追う。
背後に気配を感じた男が振り向いた時、勇治は刀を振り下ろしていた。
まるで手応えがないと思えるほど見事に男を切り捨てた。それだけ気が入っていた。
骨と心臓を断たれた男はあっけなく絶命してその場に崩れ落ちる。
パンと音がして勇治は脇腹に熱い衝撃を感じた。咄嗟に身を沈め、低い草の中に体を隠す。もう一台の車が停まっていた。
勇治は地に這いつくばるような姿勢で素早く移動する。片手で刀を持ったまま、もう一方の手でズボンに挟んであった拳銃を抜く。
相手も警戒しているらしい。波の音と吹き抜ける風の音がしてくるばかりである。
草むらに身を隠した姿勢で刀を置き、拳銃の安全装置を外す。そして辺りを警戒しながら撃たれた脇腹に手をやってみる。ぬめぬめした感触があったが、斬った男たちの返り血を浴びたため、己の血か斬った者の血かわからない。しかしそこには確かにきりきりとした痛みがあった。
「おい! 出てこい!」
男の図太い声が聞こえた。
勇治は拳銃を構えたままじりじりとさがる。さがりながら辺りを見る。
真直ぐに海沿いに伸びる堤防。それと並行に走る道路。その間の砂地に雑草が生い茂っている。相手の目から身を隠すことはできるが、銃弾から身を隠すものは何もない。見つかるのは時間の問題である。
男たちは大胆になった。車の陰から出てきて歩き回る物音が聞こえる。
「おい、見ろ」
「うへ、化け物か、あいつは」
男たちの声。斬られた仲間を見ているらしい。
追ってきたもう一台の車に乗っていたのも三人。何とかやれるか。勇治がそう思った時である。
さらに一台の車が停まり、バタンバタンとドアの閉まる音がした。
「セガワにモク、ヨッさんが殺られました」
「あいつはどこだ?」
その声を聞いた時、勇治の背に電気が走った。忘れもしない。組幹部、太田の声である。
「近くの草ん中に隠れていると思いますが。普通の奴じゃないもんで」
「何言ってんだ」
プシュン、プシュンとくすんだ音が発せられた。闇雲に草むらに向かって拳銃で撃っているらしい。
「早く捜せ!」
太田が怒鳴った。
男たちがガサゴソと草むらの中を歩く。
勇治は草の中から飛び出した。獲物に狙いを定めたチーターのように走る。
「いた!」
男の怒鳴り声。
数発の銃声が続く。
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