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勇者と魔法使い
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きっかけは今晩のおかずを何にするかという些細なことだった。
「たまにはオラの好きなものを食べたい。毎日、勇者の食べたいものばかりで、ずるいや」
「俺が主役だから仕方がないだろ?」
「主役だからって、わがままが過ぎるんじゃない? 冒険にはオラたちみたいな脇役だって必要だし、魔法使いが主役になるってことだってあるし」
「ないない。俺がこの世界で一番偉い」
「そういう思いあがった態度がいけないんだよう」
「うるさい! 脇役は黙ってろ」
「なにー!」
「あっちに行け。シッシッ」
勇者は魔法使いに向けて手を振った。
「む、む、む、む、む、怒ったぞ!」
「何だよ」
「うー、ファイヤ!」
魔法使いが勇者に向かって炎を放った。
「うわ!」
勇者は危うく炎をかわした。
「やったな! うー、ファイヤ!」
勇者も魔法使いに向かって炎を放った。
魔法使いはかわしきれずに、服の袖をチロチロと焼いた。
「あっ! オラの一張羅が! もう本気で怒ったぞ! うー、ファイヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤー!」
勇者は魔法使いの呪文の言葉を聞き、慌てて遠くへ逃げた。
先ほどの五倍の炎が勇者を追いかけ、髪をチリチリと焦がした。
「おい! 俺を殺す気か!」
遠くで勇者が怒鳴った。
「大丈夫、勇者は主役だから死なない」
「勇者だって死ぬわ! うー、サンダ!」
雷が魔法使いめがけて落ちた。
「うわっ! 電気は炎と違って火傷くらいじゃ済まないぞ。こうなったら、うー、サンダダダダダダー!」
五倍の雷が勇者を襲った。
勇者はさっきよりももっと遠くへ逃げた。いくつもの雷が音を立てて地面に落ちた。
「いい加減にしろ」
近くまで走り寄ってきて勇者が言った。
「いーや、まだまだ!」
魔法使いは目の色が変わっていた。
「こうなったら、うー、アイス!」
勇者が呪文を唱えた。
氷の矢が魔法使いを襲った。
矢は魔法使いの服を切り裂いた。
「うー、アイスーイスイスイスイスイスー!」
勇者の放った五倍の矢が勇者を襲った。
無数の矢が地面に降り注ぐ頃、勇者ははるか遠くへと逃げ去っていた。
激しい魔法のバトルが続いた。
「もう諦めろ!」
魔法使いに近づきながら勇者が言った。
「まだまだ! ここからが本当の戦いだ! うー、ファイヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ・・・・・・」
魔法使いが長い呪文を唱えている間、勇者は一目散に逃げた。
巨大な炎が辺りを焼き尽くした。
超強力な魔法を使い、疲れ果てた魔法使いの前に勇者が立っていた。
「いい加減にしろ!」
勇者は魔法使いの頭をポカリと叩いた。
魔法使いはキューッとなって、鳴門の渦巻のように目を回して気を失った。
勇者は魔法使いを木の下の日陰に連れていき、優しく横たえた。
しばらくすると、買い出しに行っていた格闘家たちが帰ってきた。
「どうした? かなり強力な魔物に襲われたようだが。大丈夫か?」
辺り一面、焼け野原となっているのを見て格闘家が言った。
「大丈夫。魔物は逃げていったよ」
「魔法使いは?」
「ちょっと頭を打って気を失っているけど、たいしたことなさそうだ」
「魔物はどんな?」
「えっと、・・・・その、ドラゴンの親玉が三体ほど」
「それを二人で。さぞや大変な戦いであっただろう」
「いや、それほどでも・・・・」
「しばらくは用心したほうがいいな」
格闘家が真剣な表情で言った。
目をつぶって話を聞いていた魔法使いは、こらえきれなくなって、ぷっと吹き出した。
「たまにはオラの好きなものを食べたい。毎日、勇者の食べたいものばかりで、ずるいや」
「俺が主役だから仕方がないだろ?」
「主役だからって、わがままが過ぎるんじゃない? 冒険にはオラたちみたいな脇役だって必要だし、魔法使いが主役になるってことだってあるし」
「ないない。俺がこの世界で一番偉い」
「そういう思いあがった態度がいけないんだよう」
「うるさい! 脇役は黙ってろ」
「なにー!」
「あっちに行け。シッシッ」
勇者は魔法使いに向けて手を振った。
「む、む、む、む、む、怒ったぞ!」
「何だよ」
「うー、ファイヤ!」
魔法使いが勇者に向かって炎を放った。
「うわ!」
勇者は危うく炎をかわした。
「やったな! うー、ファイヤ!」
勇者も魔法使いに向かって炎を放った。
魔法使いはかわしきれずに、服の袖をチロチロと焼いた。
「あっ! オラの一張羅が! もう本気で怒ったぞ! うー、ファイヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤー!」
勇者は魔法使いの呪文の言葉を聞き、慌てて遠くへ逃げた。
先ほどの五倍の炎が勇者を追いかけ、髪をチリチリと焦がした。
「おい! 俺を殺す気か!」
遠くで勇者が怒鳴った。
「大丈夫、勇者は主役だから死なない」
「勇者だって死ぬわ! うー、サンダ!」
雷が魔法使いめがけて落ちた。
「うわっ! 電気は炎と違って火傷くらいじゃ済まないぞ。こうなったら、うー、サンダダダダダダー!」
五倍の雷が勇者を襲った。
勇者はさっきよりももっと遠くへ逃げた。いくつもの雷が音を立てて地面に落ちた。
「いい加減にしろ」
近くまで走り寄ってきて勇者が言った。
「いーや、まだまだ!」
魔法使いは目の色が変わっていた。
「こうなったら、うー、アイス!」
勇者が呪文を唱えた。
氷の矢が魔法使いを襲った。
矢は魔法使いの服を切り裂いた。
「うー、アイスーイスイスイスイスイスー!」
勇者の放った五倍の矢が勇者を襲った。
無数の矢が地面に降り注ぐ頃、勇者ははるか遠くへと逃げ去っていた。
激しい魔法のバトルが続いた。
「もう諦めろ!」
魔法使いに近づきながら勇者が言った。
「まだまだ! ここからが本当の戦いだ! うー、ファイヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ・・・・・・」
魔法使いが長い呪文を唱えている間、勇者は一目散に逃げた。
巨大な炎が辺りを焼き尽くした。
超強力な魔法を使い、疲れ果てた魔法使いの前に勇者が立っていた。
「いい加減にしろ!」
勇者は魔法使いの頭をポカリと叩いた。
魔法使いはキューッとなって、鳴門の渦巻のように目を回して気を失った。
勇者は魔法使いを木の下の日陰に連れていき、優しく横たえた。
しばらくすると、買い出しに行っていた格闘家たちが帰ってきた。
「どうした? かなり強力な魔物に襲われたようだが。大丈夫か?」
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「大丈夫。魔物は逃げていったよ」
「魔法使いは?」
「ちょっと頭を打って気を失っているけど、たいしたことなさそうだ」
「魔物はどんな?」
「えっと、・・・・その、ドラゴンの親玉が三体ほど」
「それを二人で。さぞや大変な戦いであっただろう」
「いや、それほどでも・・・・」
「しばらくは用心したほうがいいな」
格闘家が真剣な表情で言った。
目をつぶって話を聞いていた魔法使いは、こらえきれなくなって、ぷっと吹き出した。
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