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サプライズなプロポーズ
サプライズなプロポーズ
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「酔う前に言っておきたいことがあるんだ」
祐樹は友達を前にして言った。
「穂乃果にプロポーズをしたいと思う」
それは学生時代から続いている月に一度の飲み会の席でのことだった。
テーブルには祐樹のほかに大地、勇也、翔太、龍平の四人が座っている。学生時代からの悪友たちだ。
「何だ、今さら。ただ結婚しようって言えばいいだけのことだろ?」
乾杯後のビールを飲みながら大地が言った。
祐樹が穂乃果と付き合い始めたのは学生の時からで、みんながその頃からの二人を知っている。
「俺たち、ずっと付き合ってきたから、ただ結婚するだけじゃなくて、何年か後になっても話題になるようなプロポーズをして結婚したい。よくあるだろ? サプライズで指輪を渡すようなやつ」
「いいよ、やれば?」
勇也がたいして関心なさそうに言った。
「できればみんなに協力してもらって、穂乃果がびっくりするようなプロポーズをしたいと思うんだけど」
祐樹の言葉に四人は顔を見合わせた。
所々明かりの灯る夜の公園は暗かった。
「ねえ、どこに行くつもり?」
祐樹の後を歩く穂乃果が不安そうに尋ねた。
夜になっても明かりを持ってランニングする人や、犬の散歩をしている人が通り過ぎていく。
祐樹は人気のない小さな建物の前で立ち止まった。
「今日は特別な日になると思う」
「特別な日?」
聞き返した穂乃果の言葉を合図にしたかのように、突然、建物の壁が光った。
壁には学生時代の祐樹と穂乃果の姿が映し出されていた。
スライドするように写真が次から次へと変わっていく。
その後で画面いっぱいに大きな文字が並んだ。
『穂乃果、今までありがとう』
文字が消えて、別の文字になった。
『これからも、ずっと二人でいよう』
また別の文字になった。
『結婚してください』
祐樹は蓋の開いた小さな箱を差し出した。
穂乃果は壁に映し出された文字を見て、祐樹の顔を見て、差し出された指輪を見た。
少しの間、固まっていた穂乃果が動いた。
穂乃果は頭を下げて小さな声で言った。
「ごめんなさい」
「本当にごめんなさい」
そう言って穂乃果は指輪を見ようともせずに祐樹に背を向けて立ち去った。
呆然と立ちつくす祐樹の横に大地がやってきた。
「まさか・・・・」
祐樹に声をかけ、さらに続ける。
「気を落とすな。パーッと景気付に一杯やろう」
「ごめん、一人にしておいてくれ」
祐樹は力なく言った。
「ジャーン! 壁を見ろ!」
突然、大地が明るい声になって言った。
プロジェクターで映し出された文字は、また違う文字を映し出していた。
『祐樹おめでとう!』
文字が変わった、
『ドッキリ大成功!』
「ん?」
祐樹が大地を見ると、笑いだすのを必死にこらえている。
「なんだよ?」
祐樹は訳がわからず辺りを見まわした。
勇也と一緒に穂乃果がやってきた。
「びっくりしただろ? すんごいサプライズだっただろ?」
おかしさを抑えきれなくなって、笑いながら大地が言った。
「おい、ふざけんなよ」
「サプライズは終わり。じゃ、改めて結婚の申し込みを」
「もうそんな雰囲気じゃないよ。穂乃果までグルだったのか」
そう言いながら祐樹はポケットにしまった小さな箱をもう一度取り出した。
「穂乃果、ごめん。色々あったけど、これをはめてみて」
祐樹は指輪を差し出した。
「ごめんなさい」
穂乃果はまた、消え入りそうな声で言って頭を下げた。
「私、好きな人がいます。だから・・・・ごめんなさい」
そう言って穂乃果は走り去っていった。
今度こそ、そこにはボーゼンとした顔の男たち五人の姿があった。
「どうゆうこと?」
穂乃果の姿が完全に見えなくなったころ、大地が言った。
「好きな奴ができたんだってさ」
祐樹は持っていた小さな箱の蓋をぱたんと閉めた。そしてその箱をぎゅっと握りしめる。
「どうしようか」
大地が祐樹を気遣うように言った。
「俺、帰るわ」
そう言うと、祐樹は手に持っていた箱を、木々の生い茂る暗がりに向かって力いっぱい投げつけた。
一か月後、大地の元に一通の手紙が届いた。
それは祐樹と穂乃果の結婚式の招待状だった。
形式ばった文章のほかに、少しばかりの文字が添えられていた。
『びっくりしただろ? 神聖なるプロポーズの儀式を茶化そうとするお前らの態度が穂乃果には許せなかったんだってさ。だから俺と穂乃果でドッキリの仕返しをしてやったんだよ。結婚式はドッキリなしでやるから、是非出席してくれよな』
手紙を読み終えた大地はつぶやいた。
「やられた。・・・・でも良かった」
祐樹は友達を前にして言った。
「穂乃果にプロポーズをしたいと思う」
それは学生時代から続いている月に一度の飲み会の席でのことだった。
テーブルには祐樹のほかに大地、勇也、翔太、龍平の四人が座っている。学生時代からの悪友たちだ。
「何だ、今さら。ただ結婚しようって言えばいいだけのことだろ?」
乾杯後のビールを飲みながら大地が言った。
祐樹が穂乃果と付き合い始めたのは学生の時からで、みんながその頃からの二人を知っている。
「俺たち、ずっと付き合ってきたから、ただ結婚するだけじゃなくて、何年か後になっても話題になるようなプロポーズをして結婚したい。よくあるだろ? サプライズで指輪を渡すようなやつ」
「いいよ、やれば?」
勇也がたいして関心なさそうに言った。
「できればみんなに協力してもらって、穂乃果がびっくりするようなプロポーズをしたいと思うんだけど」
祐樹の言葉に四人は顔を見合わせた。
所々明かりの灯る夜の公園は暗かった。
「ねえ、どこに行くつもり?」
祐樹の後を歩く穂乃果が不安そうに尋ねた。
夜になっても明かりを持ってランニングする人や、犬の散歩をしている人が通り過ぎていく。
祐樹は人気のない小さな建物の前で立ち止まった。
「今日は特別な日になると思う」
「特別な日?」
聞き返した穂乃果の言葉を合図にしたかのように、突然、建物の壁が光った。
壁には学生時代の祐樹と穂乃果の姿が映し出されていた。
スライドするように写真が次から次へと変わっていく。
その後で画面いっぱいに大きな文字が並んだ。
『穂乃果、今までありがとう』
文字が消えて、別の文字になった。
『これからも、ずっと二人でいよう』
また別の文字になった。
『結婚してください』
祐樹は蓋の開いた小さな箱を差し出した。
穂乃果は壁に映し出された文字を見て、祐樹の顔を見て、差し出された指輪を見た。
少しの間、固まっていた穂乃果が動いた。
穂乃果は頭を下げて小さな声で言った。
「ごめんなさい」
「本当にごめんなさい」
そう言って穂乃果は指輪を見ようともせずに祐樹に背を向けて立ち去った。
呆然と立ちつくす祐樹の横に大地がやってきた。
「まさか・・・・」
祐樹に声をかけ、さらに続ける。
「気を落とすな。パーッと景気付に一杯やろう」
「ごめん、一人にしておいてくれ」
祐樹は力なく言った。
「ジャーン! 壁を見ろ!」
突然、大地が明るい声になって言った。
プロジェクターで映し出された文字は、また違う文字を映し出していた。
『祐樹おめでとう!』
文字が変わった、
『ドッキリ大成功!』
「ん?」
祐樹が大地を見ると、笑いだすのを必死にこらえている。
「なんだよ?」
祐樹は訳がわからず辺りを見まわした。
勇也と一緒に穂乃果がやってきた。
「びっくりしただろ? すんごいサプライズだっただろ?」
おかしさを抑えきれなくなって、笑いながら大地が言った。
「おい、ふざけんなよ」
「サプライズは終わり。じゃ、改めて結婚の申し込みを」
「もうそんな雰囲気じゃないよ。穂乃果までグルだったのか」
そう言いながら祐樹はポケットにしまった小さな箱をもう一度取り出した。
「穂乃果、ごめん。色々あったけど、これをはめてみて」
祐樹は指輪を差し出した。
「ごめんなさい」
穂乃果はまた、消え入りそうな声で言って頭を下げた。
「私、好きな人がいます。だから・・・・ごめんなさい」
そう言って穂乃果は走り去っていった。
今度こそ、そこにはボーゼンとした顔の男たち五人の姿があった。
「どうゆうこと?」
穂乃果の姿が完全に見えなくなったころ、大地が言った。
「好きな奴ができたんだってさ」
祐樹は持っていた小さな箱の蓋をぱたんと閉めた。そしてその箱をぎゅっと握りしめる。
「どうしようか」
大地が祐樹を気遣うように言った。
「俺、帰るわ」
そう言うと、祐樹は手に持っていた箱を、木々の生い茂る暗がりに向かって力いっぱい投げつけた。
一か月後、大地の元に一通の手紙が届いた。
それは祐樹と穂乃果の結婚式の招待状だった。
形式ばった文章のほかに、少しばかりの文字が添えられていた。
『びっくりしただろ? 神聖なるプロポーズの儀式を茶化そうとするお前らの態度が穂乃果には許せなかったんだってさ。だから俺と穂乃果でドッキリの仕返しをしてやったんだよ。結婚式はドッキリなしでやるから、是非出席してくれよな』
手紙を読み終えた大地はつぶやいた。
「やられた。・・・・でも良かった」
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