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第二章

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 兼成の祖父であり赤吹藩初代藩主の永野友行は、若くして関ヶ原の戦いに出陣した。父がその直前の伏見城の戦いで急死し、友行は急遽後を引き継ぎ、関ヶ原の戦いでは松尾山に陣を構えた。友行にとって大将としての初陣であった。西軍に属しながら戦いが始まると寝返って東軍として戦うと徳川家康と通じていた。ところが戦いが始まっても永野の軍は動かなかった。開戦から数時間後に家康はいったんの撤退を決め、兵を引いた。
 家康が撤退を始めたのと同時刻に友行は戦闘を命じ、西軍の大谷陣に攻め入った。その直後に家康撤退の報を聞き、友行は慌てて家康を追った。
 家康は友行がいったんは西軍と戦い始めながら、兵を引いて東軍の後を付いてくると聞いて激怒し、友行の首を刎ねよと命じた。しかしすぐに考え直し、東軍のしんがりを務めさせた。
 やがて駿河の要害の地で、しんがりの永野軍にその場に留まり西軍が追って来たら迎え撃つように命じた。
 しかし西軍は追ってこなかった。家康は強大な兵力をほとんど温存したまま撤退したので、三成も無理をしなかった。家康に勝利したという事実があればよかったのである。
 家康は友行に西軍に備えて陣を張る砦跡を改修し、いつか来るかもしれない石田三成勢に備えよと命じた。いわば東軍の最前線の砦となったのである。その際に家康は若い永野友行を人質として江戸に呼び寄せた。
 残された永野家の家臣たちは、自分たちの若い主人がそのような仕打ちを受けるのは、ふがいない自分たちのせいだと奮闘し、その地に素晴らしい城を築き上げた。
 数年後に、家康の元で様々な事柄を学んだ友行は家来たちのところに戻り、やがて石田三成討伐、大坂冬の陣、夏の陣と活躍した。家康が天下統一を果たし、江戸幕府政治を確立させると友行は元々の支配地域であった美濃赤吹の地に移封されて二万石の大名となった。
 徳川家康、二代目将軍徳川秀忠の寵愛を受けた永野の赤吹藩は親藩格の扱いを受けるなど、特別扱いをされた。
 赤吹藩主永野友行はそんな特別扱いに慢心することなく、逆に自分のことをそれほどまでに認めてくれた将軍家のために全ての大名の手本となるべく、文武両道、質実剛健の藩の基礎を作り上げ、自分もそのように生きたのである。
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