殺し屋たちのレクイエム

原口源太郎

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 アキラは質素な食事を終えた。どうせ腹を殴られるだろうからたくさん食べない方がいい。
 しばらくすると扉が開いた。
「部屋から出てください」
 外からトモが言った。
 廊下にはトモとユウのほかに昨日拷問を加えた二人の男がいた。
 アキラは昨日の部屋に連れて行かれた。
 部屋にはもう一人の屈強な男と小柄なスーツ姿の男がいた。小柄な男がこの現場を仕切っている。
「どうだ?」
 そう言って小柄な男はアキラの顔を覗き込んだ。
 椅子に座らされたアキラは無言で男の顔を見つめる。
「話す気はないようだな。まあいい。ところでこの組織に加わる気はないか? 今までそれなりの訓練を受けてきたのだろう? それを生かす場を与えてやろうじゃないか」
「御免だぜ」
「そう言うと思った」
 男は不敵な笑みを浮かべた。
「昨日は薬を使って吐かせてやると言った。だか気が変わった。もう少し楽しむことにしたよ」
 男はいきなりアキラの顔を平手で打った。
「ああ、楽し」
 そう言って今度はこぶしを握りアキラの顔を殴ろうとした。
 アキラは咄嗟に身をそらして拳を避けた。
 むなしく空を切り、バランスを崩した男は床に倒れた。
「貴様!」
 顔を赤くして男が立ち上がる。
「思い切り痛めつけてやれ!」
 男はそう言い残して部屋を出ていった。
 残された男たちは無表情でアキラを殴り始めた。

 気を失っていたアキラはベッドで目を覚ました。体中がきしむ。目の周りが腫れているのか、まともに目を開くことができない。口の中はあちこちが切れて血の味がした。
 ベッドの横にユウがいた。心配そうな顔でアキラの顔をガーゼで優しく拭く。ガーゼはたちまち赤く染まった。
 近くに立つトモはそんな状況でも拳銃をアキラに向けている。
 ユウは目に涙をためていた。
 やっぱり子供だな。アキラはそう思った。そしてまた眠りに落ちていった。

「流石にもう限界だ。どうしても仲間の居場所を言うつもりはないんだな? 私たちも捜しているのだが、どうしても見つけられない。お前は居場所を知らないわけがないがないから、今日こそは教えてもらう」
 小柄な男が言った。アキラが拷問を受けてから三日目のことだった。
 一人の男が事務机の前に座っている。机の上にはいくつかの小さな瓶と注射器があった。
 針を瓶に入れ、ピストンを引く。液が注射器の中に入っていくのが見えた。
「話す気になったか? これが最後だ」
 アキラはろくに話すことができず、ただ首を横に振った。
「仕方ない。やれ」
 男が命じる。
 その時、入り口のドアが開いた。
 マシンガンを構えたハルカが部屋に飛び込んで来る。
「動かないで」
 その瞬間、一人の男が横に飛びながら拳銃を構えようとした。
 マシンガンが火を噴き、男の拳銃を飛ばした。血飛沫が舞う。
「動かないでって言ったでしょ」
 ハルカが落ち着いた声で言った。
「参ったな、降参だよ」
 小柄な男が両手を上げる。
 他の者たちも手を撃ち抜かれて床にうずくまる男以外は静かに両手を上げた。
「紐をほどきなさい」
 ハルカは銃口をトモとユウに向けて命じた。
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