グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・11 本物の偽物グルドフ

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 若い男が店で因縁をつけている。
「これが200Gもするのか? 10Gで十分だろ。ほらよ、10G」
「ちょっと待ってください。いくらなんでも10Gはないです」
「ごちゃごちゃ言うな。10Gにまけておけ」
「そんな無茶な。勘弁してください」
「なんだと? この店をめちゃくちゃにしてやってもいいんだぞ」
「勘弁してください」
 店主は半泣きになって男に訴える。
「やめなさい」
 背後で声がして若い男は振り返った。
「なんだ、お前」
「そのような無茶なことを言うものではありません」
 旅姿のグルドフが言った。
「なんだと」
 男の顔つきが変わる。
「だからそのような無茶なことを言うものでありません」
「そんなことを聞いてるんじゃねえ! 俺様に文句をつけようってのか?」
「そうですね。そういうことになります」
 男はグルドフの姿を観察する。
「よそ者が口を出すな」
「そういうわけにはいきません。よそ者であろうとなかろうと悪いことは悪いと言うべきことは変わりません」
「ごちゃごちゃうるせえ爺だ」
「爺とは何ですか。言葉で駄目なら実力行使するまでです」
「ちょ、ちょっと待て。こっちは丸腰だぜ」
「この剣は人を傷つけるためのものではありません。しかし必要とあらば」
「待て待て待て。お前が強いのはわかってる。けどな、俺のバックには勇者がついているんだぜ」
「勇者?」
「そうよ。すげえ強ええ勇者だ。俺に何かあったらただじゃ済まされねえぞ」
「勇者がこのような場所にいるはずがありません」
「それがいるんだよ。嘘だと思ったらついて来い。お前なんかコテンパンにされちまうぞ」
「コテンパンにされるかどうか、とりあえず勇者とやらにお目にかかってみます」
 グルドフとポポンは若い男について歩き出した。少し離れて監視役の町の役人も三人の後についていった。

 ウォースターの町も他の町と同じように大きな石をレンガのように積んだ堅固な壁に囲まれている。
 若い男はその高い壁の近くにある大きな屋敷に入った。グルドフとポポンも後に続く。町の役人は入り口で立ち止まり、中を覗き込んだ。
 廊下の先の大きな部屋に数人の男がいた。頭や腕に包帯を巻いている者もいる。
「勇者さん」
 若い男は部屋の隅で寝ころび、くつろいでいる体格のいい男に声をかけた。
「何か」
 勇者と呼ばれた男が顔を上げた。ドラゴンのウロコでできた小ぶりな鎧を身に着けている。
「こいつらが会いたいと言ってます」
 若い男が告げた。
「何か?」
 今度は勇者がグルドフを見て言った。
「あなたが勇者?」
 グルドフが尋ねる。
「そうだ」
「お名前は?」
「俺はゲルグ王国の勇者、グルドフだ」
「そうですか」
「そうだ。貴様は?」
「私はゲルグ王国の元勇者グルドフです。こちらはゲルグ王国の元魔法使いのポポン」
 グルドフは後ろに控えるポポンも紹介した。
「ゲルグ王国のグルドフ? 何バカなことを。グルドフは俺だ」
「そちらこそ何バカなことを言いますか。私がゲルグ王国の元勇者グルドフ。グルドフはすでに勇者を引退したのです」
「引退などしておらん。現に俺がいるではないか」
「あなたは偽物。私が本物です」
「な、何を言うか!」
「真実を確かめてみますか?」
 グルドフが腰の剣に手をかける。
「よし! 表に出ろ!」
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