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グルドフ旅行記・10 靴職人レンダルの非日常な出来事
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グルドフとポポンはレンダルとは違う宿を取っていた。前日はリモタカという町に泊まったから、ウォースターの町は初めてだった。
日が沈み、グルドフが剣の手入れをしている時に来客があった。二人の男だという。
「はて?」
当然のことながら、ウォースターに知り合いなどいない。グルドフは疑問に思いながら客たちを招き入れた。
二人の男は立派な体格をしていた。背の高い方の男は腕に包帯を巻いている。
「ゴロと申します」
腕に包帯をした男がまず名乗った。
「トーミスと申します」
もう一方の男も名乗った。
グルドフとポポンも自己紹介をした。
「夜分に済みません。私どもはレンダルさんの警護をしていました。しかし魔物と戦っている最中に邪魔が入り、レンダルさんとはぐれてしまいました」
話をするのはゴロと名乗った男だ。
「私どもはレンダルさんの無事を祈りながらこの町に来て、宿泊予定の宿へ行きました。宿の主人が言うには、レンダルさんは元気で、お客様のところへ靴を届けに行っているとのことでした。私どもがレンダルさんと別れる時、レンダルさんは強大な魔物に追われていましたので、もしかしたら助からないかもしれないと危惧していたので、大いに安堵しました」
「うむ」
グルドフは話を聞きながら頷き、男たちを値踏みするように見ている。
「レンダルさんが帰ってくるのを待ち、話を伺いました。レンダルさんを救ったのは旅のお方で、一撃で魔物を倒してしまったから、その方に明日の警護を頼んだと聞きました。それはあなたたちでよろしいでしょうか?」
「はい。確かに明日、マゼルまでのお供を頼まれました」
「あなたは魔物との戦いに慣れておられるようなので大丈夫かとは思いますが」
そこでゴロは言葉を切り、グルドフの前に握りしめた拳を出した。
手を開くと、中に鉄の玉があった。
「魔物と戦っている最中に私に打ち込まれた玉です。不覚にもこのおかげで私は魔物の一撃を食らい、怪我をしてしまいました。これは魔物が放った物ではありません。人間が放った物です」
「という事は、レンダルさんの旅を邪魔しようとする者がいるというわけですかな?」
「そう思います。ですから、明日の旅も、十分に気を付けていただきたいと伝えに参った次第です」
「わかりました。気を付けましょう。レンダルさんは必ず無事にマゼルまでお連れしますのでご安心ください」
「ありがとうございます」
「傷の具合はいかがですかな?」
「完治するまではしばらくかかると思いますが、なに、強力な魔物と戦えばよくあること。良い経験になりました」
グルドフはうんうんと納得したように何度か頷いた。
「あの二人で大丈夫だと思うか?」
グルドフたちのいる宿を出た後でトーミスがゴロに尋ねた。
町の建物の遥か上方で星々が瞬いている。
「年配の方は魔法を使うように見えた。もう一人はかなり腕の立つ人物に違いない」
「しかし一人だ。この鉄玉を放った者たちはどれほどの人数がいて、何のために我々の旅を邪魔しようとしたのかが、全然わからない」
トーミスの言葉を聞きながら、ゴロは鉄の玉をポーン、ポーンと軽く空に放り投げては受けとめることを繰り返した。
二人は二体の魔物を倒したあと鉄の玉を発見して、自分たちの戦いを邪魔した者の正体を突き止めるべく辺りを捜索したいという思いはあったが、それよりも先に依頼人の救出に向かわなければならなかった。
「それにしても、グルドフという名前はどこかで聞いたことがある」
ゴロが歩きながら考える。
「そういえばどこかで・・・・丸顔にちょび髭・・・・」
「あっ」
「あっ」
ゴロとトーミスは同時に思い当たって顔を見合わせた。
「ゲルグ王国の勇者、グルドフ!」
小さなテーブルの上にローソクがひとつ。黄色い炎がゆらゆらと揺れている。
部屋はマゼルの隠れ家よりさらに小さかったが、そのローソク一本で全体を明るく照らし出すには役不足だった。
ローソクを囲むようにしてフィルとアンドロが椅子に座っている。
「この町に顧客名簿の二番目と三番目がいる。今日の旅で靴を届けようとした客だ。明日はそこへ行ってちょいとばかり脅かしてやろう」
フィルが言い、アンドロがニヤリと笑って頷いた。
日が沈み、グルドフが剣の手入れをしている時に来客があった。二人の男だという。
「はて?」
当然のことながら、ウォースターに知り合いなどいない。グルドフは疑問に思いながら客たちを招き入れた。
二人の男は立派な体格をしていた。背の高い方の男は腕に包帯を巻いている。
「ゴロと申します」
腕に包帯をした男がまず名乗った。
「トーミスと申します」
もう一方の男も名乗った。
グルドフとポポンも自己紹介をした。
「夜分に済みません。私どもはレンダルさんの警護をしていました。しかし魔物と戦っている最中に邪魔が入り、レンダルさんとはぐれてしまいました」
話をするのはゴロと名乗った男だ。
「私どもはレンダルさんの無事を祈りながらこの町に来て、宿泊予定の宿へ行きました。宿の主人が言うには、レンダルさんは元気で、お客様のところへ靴を届けに行っているとのことでした。私どもがレンダルさんと別れる時、レンダルさんは強大な魔物に追われていましたので、もしかしたら助からないかもしれないと危惧していたので、大いに安堵しました」
「うむ」
グルドフは話を聞きながら頷き、男たちを値踏みするように見ている。
「レンダルさんが帰ってくるのを待ち、話を伺いました。レンダルさんを救ったのは旅のお方で、一撃で魔物を倒してしまったから、その方に明日の警護を頼んだと聞きました。それはあなたたちでよろしいでしょうか?」
「はい。確かに明日、マゼルまでのお供を頼まれました」
「あなたは魔物との戦いに慣れておられるようなので大丈夫かとは思いますが」
そこでゴロは言葉を切り、グルドフの前に握りしめた拳を出した。
手を開くと、中に鉄の玉があった。
「魔物と戦っている最中に私に打ち込まれた玉です。不覚にもこのおかげで私は魔物の一撃を食らい、怪我をしてしまいました。これは魔物が放った物ではありません。人間が放った物です」
「という事は、レンダルさんの旅を邪魔しようとする者がいるというわけですかな?」
「そう思います。ですから、明日の旅も、十分に気を付けていただきたいと伝えに参った次第です」
「わかりました。気を付けましょう。レンダルさんは必ず無事にマゼルまでお連れしますのでご安心ください」
「ありがとうございます」
「傷の具合はいかがですかな?」
「完治するまではしばらくかかると思いますが、なに、強力な魔物と戦えばよくあること。良い経験になりました」
グルドフはうんうんと納得したように何度か頷いた。
「あの二人で大丈夫だと思うか?」
グルドフたちのいる宿を出た後でトーミスがゴロに尋ねた。
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「しかし一人だ。この鉄玉を放った者たちはどれほどの人数がいて、何のために我々の旅を邪魔しようとしたのかが、全然わからない」
トーミスの言葉を聞きながら、ゴロは鉄の玉をポーン、ポーンと軽く空に放り投げては受けとめることを繰り返した。
二人は二体の魔物を倒したあと鉄の玉を発見して、自分たちの戦いを邪魔した者の正体を突き止めるべく辺りを捜索したいという思いはあったが、それよりも先に依頼人の救出に向かわなければならなかった。
「それにしても、グルドフという名前はどこかで聞いたことがある」
ゴロが歩きながら考える。
「そういえばどこかで・・・・丸顔にちょび髭・・・・」
「あっ」
「あっ」
ゴロとトーミスは同時に思い当たって顔を見合わせた。
「ゲルグ王国の勇者、グルドフ!」
小さなテーブルの上にローソクがひとつ。黄色い炎がゆらゆらと揺れている。
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ローソクを囲むようにしてフィルとアンドロが椅子に座っている。
「この町に顧客名簿の二番目と三番目がいる。今日の旅で靴を届けようとした客だ。明日はそこへ行ってちょいとばかり脅かしてやろう」
フィルが言い、アンドロがニヤリと笑って頷いた。
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