グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・9 偽物グルドフ

道場破りの男・3

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「き、貴様、勝つつもりでおるな?」
「もちろん」
「うぬぬ。よし、勝負だ」
 クルドフは木刀を正眼に構えた。
 グルドフも同じように構える。
 正対してみて、グルドフはなるほどと思った。
 人並み以上の剣の使い手だとは思っていたが、それどころではない。言うだけのことはあって、かなりできる。
 クルドフはじっと構えて、グルドフの隙を窺っている。
 グルドフはクルドフが打ち込んでくるのを待った。
 だが、クルドフも待っているのか、それともグルドフに隙を見つけられないのか、打ってこない。
 しばらく二人はにらみ合った。
 これではらちが明かない。
 グルドフはほんの一瞬、わずかに手に力を入れ、動き出そうとするフリをしてみた。
 クルドフの木刀がスッと動いた。
 またにらみ合った。
 もう一度グルドフは一瞬、腕に力を入れた。
 クルドフの木刀がスッと動いた。そしてまた戻そうとする。
 そこを狙ってグルドフは打ち込んだ。
 クルドフはとっさに避けて反撃をしようとしたが、次のグルドフの攻撃のほうが早かった。
 クルドフはグルドフの攻撃を防ぎ、かわすのに手いっぱいで、後ろへと下がりながら足をもつれさせた。
 クルドフが体のバランスを崩したところを、グルドフが軽く小手を打った。
 クルドフは床に倒れた。
「うぬ! もう一度!」
 頭に血をのぼらせたクルドフが立ち上がり、もう一度木刀を構える。
「確か一本勝負のはずでありましたが」
 グルドフはすました顔で言った。
「うぬ!」
 クルドフは木刀を降ろし、頭を下げた。
「参りました」
 そう言い、頭を垂れたままでクルドフは動かずにいる。
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