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グルドフ旅行記・8 魔物の潜む町
優しい心の魔物
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「私は四年前まで旅の商人をしておりました。その頃、異国の地へ行商に行った帰りに、山道でこの子を見つけました。まだ人間の生まれたばかりの赤ん坊くらいの大きさで、顔にひどい傷を負って半死の状態で泣いていました。私はその小さな魔物を哀れに思い、傷の手当てをしてやりました。その時、顔を何か所も縫ったのでありますが、多分、生まれた時から全身に縫い合わせたような跡があるようなので、今見ても私が縫い合わせたのはどこだったかわかりません。そのままにしてきたら死んでしまうかと思い、私は魔物にパクンと名をつけ、商品の中に紛れさせてこの町に連れてきました。魔物のパクンは驚くべき治癒能力で傷はすぐによくなりました。そして私になつきました。私はパクンと一緒に生活することに決め、パクンを助けた時に同行していたボディーガードの剣術家と、私の部下だった男には魔物は死んでしまったと嘘を言い、旅の商人も辞めることになったと言って関係を絶ちました。パクンは食事を私の三分の一も取りませんが、体はたちまち大きくなり、三年ほどで今の大きさになりました。これ以上大きくなったらもうこの家で暮らすことはできなくなると思っていたのですが、一年前にこの大きさで成長は止まりました。ですから人間の年齢でいうと、パクンはまだ四歳かそれより少し大きいくらいだと思います。とても気立てのいい子で、もちろん人間の言葉を聞き、話すこともできます。町の中で魔物と暮らすことなど許されるはずはないと知っていたのですが、このような大きな姿になっても、パクンだけを町の外に放り出すわけにもいかずに、このまま・・・・」
「わかりました。夜中に魔物を見かけるという噂は、パクンだったのですかな?」
グルドフが尋ねた。
「きっとそうでしょう。ずっと家の中に閉じ込めたままではかわいそうだと思い、人目につかない夜中に時々二人で散歩をしていました。今日も二人で歩いているところを誰かに見られて、このような騒ぎになってしまったようであります」
「町長さん、いかがなさいますかな?」
グルドフはミレファルコの町長に尋ねた。
「このまま魔物を町の中に入れておくというわけにはいかないと思いますが、魔物に関してはグルドフ様のほうが詳しいので、あなた様はどのように考えるかお聞きしたいと思います」
「うむ。・・・・私はこのままでもいいのではないかと思います。パクンと話をしてもよいですかな?」
グルドフは再びアレクサンダーに尋ねた。
「はい、構いません。ただ、この子は体の成長と同じように物覚えが早く、人間の言葉を理解したり、話ができるようになったのは早かったのですが、頭の成長も一年前に止まってしまったようで、いまだに人間の四、五歳程度の理解力しかないと思います。ですので、難しい会話はできないのですが」
「構いません。パクンや、お前さんはずっとここで暮らしていきたいと思うかね?」
グルドフはパクンに優しく話しかけた。
大男のパクンは少し頭を傾けて考えた。
「ボクハオトウサントイッショニクラシタイダガヤ。ドコヘイッテモイイケド、オトウサントイッショガイイダガヤ」
「ん?」
「申し訳ありません。この子は言葉を憶えた時から妙なイントネーションで話すようになってしまいました。また、色々とめんどくさいことを説明してもよくわからないので、私はこの子の父親ということにしてあるのです。この子が今言ったことをわかりやすく言いますと、『おとうさんと一緒に暮らしたい、どこで暮らしてもいいけど、お父さんと一緒がいい』と言いました」
「パクンは体格がいいように見えますが、もちろん力持ちでしょうな?」
グルドフはもう一度アレクサンダーに尋ねた。
「あまり力仕事をやらせたことはないのですが、生まれつきの怪力の持ち主のようであります。しかし、人間を襲ったり、物を壊したりといったことは絶対にしません」
「生まれた時から本能的に凶暴な種類の魔物がいれば、パクンのように育った環境で性格が変わる魔物もいますからな」
「それでグルドフ様はこのパクンをどのようにしたらよいとお考えで?」
町長が尋ねた。
「わかりました。夜中に魔物を見かけるという噂は、パクンだったのですかな?」
グルドフが尋ねた。
「きっとそうでしょう。ずっと家の中に閉じ込めたままではかわいそうだと思い、人目につかない夜中に時々二人で散歩をしていました。今日も二人で歩いているところを誰かに見られて、このような騒ぎになってしまったようであります」
「町長さん、いかがなさいますかな?」
グルドフはミレファルコの町長に尋ねた。
「このまま魔物を町の中に入れておくというわけにはいかないと思いますが、魔物に関してはグルドフ様のほうが詳しいので、あなた様はどのように考えるかお聞きしたいと思います」
「うむ。・・・・私はこのままでもいいのではないかと思います。パクンと話をしてもよいですかな?」
グルドフは再びアレクサンダーに尋ねた。
「はい、構いません。ただ、この子は体の成長と同じように物覚えが早く、人間の言葉を理解したり、話ができるようになったのは早かったのですが、頭の成長も一年前に止まってしまったようで、いまだに人間の四、五歳程度の理解力しかないと思います。ですので、難しい会話はできないのですが」
「構いません。パクンや、お前さんはずっとここで暮らしていきたいと思うかね?」
グルドフはパクンに優しく話しかけた。
大男のパクンは少し頭を傾けて考えた。
「ボクハオトウサントイッショニクラシタイダガヤ。ドコヘイッテモイイケド、オトウサントイッショガイイダガヤ」
「ん?」
「申し訳ありません。この子は言葉を憶えた時から妙なイントネーションで話すようになってしまいました。また、色々とめんどくさいことを説明してもよくわからないので、私はこの子の父親ということにしてあるのです。この子が今言ったことをわかりやすく言いますと、『おとうさんと一緒に暮らしたい、どこで暮らしてもいいけど、お父さんと一緒がいい』と言いました」
「パクンは体格がいいように見えますが、もちろん力持ちでしょうな?」
グルドフはもう一度アレクサンダーに尋ねた。
「あまり力仕事をやらせたことはないのですが、生まれつきの怪力の持ち主のようであります。しかし、人間を襲ったり、物を壊したりといったことは絶対にしません」
「生まれた時から本能的に凶暴な種類の魔物がいれば、パクンのように育った環境で性格が変わる魔物もいますからな」
「それでグルドフ様はこのパクンをどのようにしたらよいとお考えで?」
町長が尋ねた。
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