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グルドフ旅行記・6 年老いた武道家
マットアン王国の王様
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「グルドフ殿、久しぶりであるな」
マットアン城の城主であり、マットアン王国を治めるマットアン王が広大な城の謁見室で言った。
「はい」
グルドフは頭を下げたまま返事をした。久しぶりと言っても、数カ月前にアザム王国の城で勇者ダルガムの結婚式の時に会ったばかりだ。
「先日はそなたたちのおかげで極悪人どもを捕らえることができた。厚く礼を言うぞ」
「とんでもございません。他国に来て、そのような差し出がましい振る舞いをしてしまいまして・・・・」
「それは高名な勇者だったそなただから、当然のことをしたまでのこと。気にすることはない。さて。マドゥ殿。今日はご子息の事で話があって参ったとのことだが?」
「はい」
マドゥ殿と呼ばれたマドゥ城の城主、ルク・マットアンが返事をした。
「実は王様も聞き及んでいるかもしれませぬが、我が息子、レイが一般人と恋をし、その・・・・」
ルク・マットアンが言いよどんだ。
「駆け落ちしたというのであろう?」
王様が言った。
「はい。まことにお恥ずかしながら」
「そなたはなぜ息子たちの結婚を認めてやらなかったのか?」
「身分の違う娘であるが故・・・・」
「そなたも考えが古いのう」
「しかしこの国ではまだそのような・・・・」
ルクの口調は歯切れが悪い。
「実はな、我が王子も近々婚約の儀が整う。そろそろそなたにも連絡をしようと思っておったところだ。相手は城の門を出たすぐのところにある宿屋の娘だ」
「へ?」
マドゥの城主は驚いて王様を見た。
「昔からの幼馴染でな。よく城に遊びに来ておった。初めに王子から話を聞いた時にはさすがに驚いたが、もはや親たちが子供の結婚相手を決める時代でもあるまい。そうであろう?」
「まあ、確かに・・・・」
「そなたの息子のほうが歳は大きいし、そちらで先例を作ってくれると、こちらもやりやすい。丁度良かった」
「はあ」
「レイはよくできた息子ゆえ、大切にしてやりなされ」
「はい、ありがとうございます」
「それから、じゃじゃ馬の姫のほうも嫁ぎ先が決まってな」
「え? 姫様がご結婚なさるので?」
「そうなんじゃよ」
王様は嬉しそうに言った。グルドフとポポンは顔を見合わせた。
「姫の場合は放っておいたらいつまでも一人でいるだろうから、こちらは私が世話をした。初めはぶつぶつ言っておったが、最近はすっかりその気になっておるようだ」
「そうですか」
「ダーズハル王国の王子のところへ嫁ぐのだが、かなり美形な王子で、本人を見た途端に姫の心も変わったようだ」
「いずれ王女となられるなら、もう冒険のことも言ってはおられませぬな」
「もちろんだ。冒険よりももっと興味をそそられるものができたからの」
「そうですか。それにしてもあの姫様が」
マドゥ城の城主はしみじみと言った。
マットアン城の城主であり、マットアン王国を治めるマットアン王が広大な城の謁見室で言った。
「はい」
グルドフは頭を下げたまま返事をした。久しぶりと言っても、数カ月前にアザム王国の城で勇者ダルガムの結婚式の時に会ったばかりだ。
「先日はそなたたちのおかげで極悪人どもを捕らえることができた。厚く礼を言うぞ」
「とんでもございません。他国に来て、そのような差し出がましい振る舞いをしてしまいまして・・・・」
「それは高名な勇者だったそなただから、当然のことをしたまでのこと。気にすることはない。さて。マドゥ殿。今日はご子息の事で話があって参ったとのことだが?」
「はい」
マドゥ殿と呼ばれたマドゥ城の城主、ルク・マットアンが返事をした。
「実は王様も聞き及んでいるかもしれませぬが、我が息子、レイが一般人と恋をし、その・・・・」
ルク・マットアンが言いよどんだ。
「駆け落ちしたというのであろう?」
王様が言った。
「はい。まことにお恥ずかしながら」
「そなたはなぜ息子たちの結婚を認めてやらなかったのか?」
「身分の違う娘であるが故・・・・」
「そなたも考えが古いのう」
「しかしこの国ではまだそのような・・・・」
ルクの口調は歯切れが悪い。
「実はな、我が王子も近々婚約の儀が整う。そろそろそなたにも連絡をしようと思っておったところだ。相手は城の門を出たすぐのところにある宿屋の娘だ」
「へ?」
マドゥの城主は驚いて王様を見た。
「昔からの幼馴染でな。よく城に遊びに来ておった。初めに王子から話を聞いた時にはさすがに驚いたが、もはや親たちが子供の結婚相手を決める時代でもあるまい。そうであろう?」
「まあ、確かに・・・・」
「そなたの息子のほうが歳は大きいし、そちらで先例を作ってくれると、こちらもやりやすい。丁度良かった」
「はあ」
「レイはよくできた息子ゆえ、大切にしてやりなされ」
「はい、ありがとうございます」
「それから、じゃじゃ馬の姫のほうも嫁ぎ先が決まってな」
「え? 姫様がご結婚なさるので?」
「そうなんじゃよ」
王様は嬉しそうに言った。グルドフとポポンは顔を見合わせた。
「姫の場合は放っておいたらいつまでも一人でいるだろうから、こちらは私が世話をした。初めはぶつぶつ言っておったが、最近はすっかりその気になっておるようだ」
「そうですか」
「ダーズハル王国の王子のところへ嫁ぐのだが、かなり美形な王子で、本人を見た途端に姫の心も変わったようだ」
「いずれ王女となられるなら、もう冒険のことも言ってはおられませぬな」
「もちろんだ。冒険よりももっと興味をそそられるものができたからの」
「そうですか。それにしてもあの姫様が」
マドゥ城の城主はしみじみと言った。
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