38 / 100
グルドフ旅行記・4 怪しい奴らの正体を暴け!
対決
しおりを挟む
そこは町の集会場のようで、奥に大きな部屋があった。
悪党どもはかなり前からポイの町のことを調べていたようだから、いざとなったらこの集会場に逃げ込むということも考えていたのかもしれない。
グルドフたちが広い部屋に入ると、バチバチバチッと火花が散った。
「ただのこけおどしだね」
ポポンが言った。
広間の中央に体格のいい男が三人、体に見合った大きな剣を持って立っている。
奥の一段高くなった壁際には、魔法使いの姿をした若い男が一人いた。
「貴様もマットアンの回し者か!」
若い魔法使いが叫んだ。
「私はただの旅の通りすがりの者。訳あって悪者退治に協力いたす」
グルドフはそう言いながら、広間の中央にいる男たちに歩み寄っていった。
すると、大男の一人が大剣を構えながらグルドフ目指して走った。
グルドフは腰の剣を抜いた。木刀で戦えそうな相手ではなかった。
大男の振った剣をグルドフは剣で受けたが、危うく後ろに倒れそうになった。それほど男の打撃は重かった。
すかさず大男は次の攻撃で剣を振ったが、グルドフはそれをかわして男の懐に飛び込み、足を斬ろうとした。
男は体に似合わず素早い動きでグルドフの剣をかわした。
その時、グルドフはもう一人の男が、滑るように近づいてくるのに気が付いた。一人でも手強いのに、それが二人となるとグルドフのほうが不利になる。何とか先に一人を片付けてしまわねばと、グルドフはもう一度先の男の近くに飛び込み、剣を振った。
しかし男はそれもかわし、グルドフの剣は男の服と腹の皮を薄く斬っただけだった。
グルドフはさらに踏み込み、後ろに逃れる男の足を斬った。
男は尻餅をつくように仰向けに倒れた。
グルドフは背後に気配を感じていた。
身をかがめながら後ろに迫る男の足を斬ろうとした。
だが背後の男はグルドフの剣を飛びあがってかわしながら、グルドフの頭上に剣を振り下ろした。
グルドフは床に転がって男の剣を避けた。
さらにもう一人がグルドフに迫ってきた。
迫る男の背後にまた影が現れ、たたっと跳んで剣を振った。
迫っていた男は振り向きざまに剣を振い、新たに現れた影の木刀を斬った。
新たな影はイナハだった。
イナハが三番目の男と対峙し、グルドフは二番目の男と向かい合って剣を構えた。
最初の、グルドフに足を斬られた男には、ポポンが妙な布を頭にかぶせ、何かしている。
一対一の戦いになれば、世の中広しといえども、グルドフとまともに渡り合える者は数えるほどしかいない。
その時、離れたところから戦いの状況を見ていた魔法使いが強力な炎を放った。
炎は一直線に広間の中央で戦っている者たちに向かってきた。
グルドフと男との間を炎が走り、男の手を焼いた。
「てめえ!」
男が魔法使いを睨んだ。
炎はそのまま反対側の壁まで走り、そこで左右に分かれ、導火線を伝う火のように壁際をさらに進んだ。
炎の走った所がめらめらと燃え出す。
広間の中央で戦っていた者たちは、炎にぐるりと取り囲まれた。
「てめえ、裏切ったな!」
もう一度男が叫んだ。
「手下の代わりなどいくらでもいるわ」
魔法使いも叫んだ。
怒り狂う男にグルドフはそっと近づき、木刀で胸を突いた。
キューッとなって男はそのまま床に倒れた。
イナハも丁度、戦っていた男を打ちのめすところだった。
ポポンは何かポンプのようなものをキコキコと押している。
するとポポンの手先から何やら液体が勢いよく飛び出し、若い魔法使いにかかった。
魔法使いは慌てて身をひるがえし、マントの陰に隠れたが、すでに遅かった。
そこへさらにポポンが液体を浴びせた。
さらに炎にも液体をかけると、炎は消えていった。
しかし一分もしないうちに液体の勢いは弱まり、チョロチョロッとなった。
「マスクとゴーグル!」
火の消えた部分を走り、魔法使いのもとに行こうとするグルドフに、ポポンが声をかけた。
グルドフは立ち止まると、マスクとゴーグルを装着し、再び走り出した。
魔法使いは慌てた様子で背にしているカバンを取り外そうとしている。
ポポンは近くの炎に、手にした火薬玉を近付け、導火線に火を点けると、魔法使いめがけて投げつけた。
魔法使いの近くでポンと音がして、火薬玉が弾けた。
魔法使いはグルドフに炎を浴びせかけようとしていたが、火薬玉が弾けて広がった大量の粉を吸い込み、背中を丸めてゴホゴホとせき込み始めた。その背中に、ゴーグルをしたグルドフが木刀を振り下ろした。
広間の向こうでは、駆けつけた役人や町の人々が大慌てで炎に水をかけて消火作業を始めていた。
悪党どもはかなり前からポイの町のことを調べていたようだから、いざとなったらこの集会場に逃げ込むということも考えていたのかもしれない。
グルドフたちが広い部屋に入ると、バチバチバチッと火花が散った。
「ただのこけおどしだね」
ポポンが言った。
広間の中央に体格のいい男が三人、体に見合った大きな剣を持って立っている。
奥の一段高くなった壁際には、魔法使いの姿をした若い男が一人いた。
「貴様もマットアンの回し者か!」
若い魔法使いが叫んだ。
「私はただの旅の通りすがりの者。訳あって悪者退治に協力いたす」
グルドフはそう言いながら、広間の中央にいる男たちに歩み寄っていった。
すると、大男の一人が大剣を構えながらグルドフ目指して走った。
グルドフは腰の剣を抜いた。木刀で戦えそうな相手ではなかった。
大男の振った剣をグルドフは剣で受けたが、危うく後ろに倒れそうになった。それほど男の打撃は重かった。
すかさず大男は次の攻撃で剣を振ったが、グルドフはそれをかわして男の懐に飛び込み、足を斬ろうとした。
男は体に似合わず素早い動きでグルドフの剣をかわした。
その時、グルドフはもう一人の男が、滑るように近づいてくるのに気が付いた。一人でも手強いのに、それが二人となるとグルドフのほうが不利になる。何とか先に一人を片付けてしまわねばと、グルドフはもう一度先の男の近くに飛び込み、剣を振った。
しかし男はそれもかわし、グルドフの剣は男の服と腹の皮を薄く斬っただけだった。
グルドフはさらに踏み込み、後ろに逃れる男の足を斬った。
男は尻餅をつくように仰向けに倒れた。
グルドフは背後に気配を感じていた。
身をかがめながら後ろに迫る男の足を斬ろうとした。
だが背後の男はグルドフの剣を飛びあがってかわしながら、グルドフの頭上に剣を振り下ろした。
グルドフは床に転がって男の剣を避けた。
さらにもう一人がグルドフに迫ってきた。
迫る男の背後にまた影が現れ、たたっと跳んで剣を振った。
迫っていた男は振り向きざまに剣を振い、新たに現れた影の木刀を斬った。
新たな影はイナハだった。
イナハが三番目の男と対峙し、グルドフは二番目の男と向かい合って剣を構えた。
最初の、グルドフに足を斬られた男には、ポポンが妙な布を頭にかぶせ、何かしている。
一対一の戦いになれば、世の中広しといえども、グルドフとまともに渡り合える者は数えるほどしかいない。
その時、離れたところから戦いの状況を見ていた魔法使いが強力な炎を放った。
炎は一直線に広間の中央で戦っている者たちに向かってきた。
グルドフと男との間を炎が走り、男の手を焼いた。
「てめえ!」
男が魔法使いを睨んだ。
炎はそのまま反対側の壁まで走り、そこで左右に分かれ、導火線を伝う火のように壁際をさらに進んだ。
炎の走った所がめらめらと燃え出す。
広間の中央で戦っていた者たちは、炎にぐるりと取り囲まれた。
「てめえ、裏切ったな!」
もう一度男が叫んだ。
「手下の代わりなどいくらでもいるわ」
魔法使いも叫んだ。
怒り狂う男にグルドフはそっと近づき、木刀で胸を突いた。
キューッとなって男はそのまま床に倒れた。
イナハも丁度、戦っていた男を打ちのめすところだった。
ポポンは何かポンプのようなものをキコキコと押している。
するとポポンの手先から何やら液体が勢いよく飛び出し、若い魔法使いにかかった。
魔法使いは慌てて身をひるがえし、マントの陰に隠れたが、すでに遅かった。
そこへさらにポポンが液体を浴びせた。
さらに炎にも液体をかけると、炎は消えていった。
しかし一分もしないうちに液体の勢いは弱まり、チョロチョロッとなった。
「マスクとゴーグル!」
火の消えた部分を走り、魔法使いのもとに行こうとするグルドフに、ポポンが声をかけた。
グルドフは立ち止まると、マスクとゴーグルを装着し、再び走り出した。
魔法使いは慌てた様子で背にしているカバンを取り外そうとしている。
ポポンは近くの炎に、手にした火薬玉を近付け、導火線に火を点けると、魔法使いめがけて投げつけた。
魔法使いの近くでポンと音がして、火薬玉が弾けた。
魔法使いはグルドフに炎を浴びせかけようとしていたが、火薬玉が弾けて広がった大量の粉を吸い込み、背中を丸めてゴホゴホとせき込み始めた。その背中に、ゴーグルをしたグルドフが木刀を振り下ろした。
広間の向こうでは、駆けつけた役人や町の人々が大慌てで炎に水をかけて消火作業を始めていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる