グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・3 勇者をやっつけろ

勇者を岩で潰してしまえ!

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 高い岩山の上からのぞくと、はるか下を二人の人間が歩いているのが見えた。
(よし、できるだけ大きな岩を沢山集めろ。あまり物音を立てずにな)
 オオカミ親分が子分の魔物たちに命令した。
 そこは岩山なので、岩は沢山ある。皆苦労して大きな岩を運んできて、一か所に集めた。
(よし、こんなもんでいいだろう)
 そう言ってオオカミ親分は下を見た。
(しまった! 勇者たちははるか先に行ってしまったぞ! あいつらの先回りをして準備をしなければだめだ)
 そこは足の速い魔物たちだから、山から山へと駆け抜けていき、人間たちの先回りをした。辺りの山は岩山ばかりなので、場所はいくらでもあった。
(よし、ここでできるだけ沢山の岩を集めろ)
 オオカミ親分が再び命令した。
 子分たちは必死になって岩を運んできた。
 小山ができるほど岩が集まったころ、子分たちはへとへとになってその場に座り込んだ。
(親分、来ましたぜ!)
 コウモリ似のドラ吉がやってきて告げた。
(よし! 俺が合図をしたら、みんなで一斉に岩を落とすんだ!)
 オオカミ親分はタイミングを計り、言った。
(よし! 今だ!)
 子分たちは一斉に山の上から大きな岩を落とし始めた。
(どんどん落とせ、休むな休むな)
 親分は子分たちを急き立てた。
 下の道を歩いていた勇者が音に気付いて上を見上げると、年配の男の荷物を奪うように取り上げ、走り出した。年配の方も岩を避けながら前へと走り出した。
(しまった、もっと前のほうへ転がせ!)
 オオカミ親分が命じたが、もう岩は残っていなかった。誰もいない場所を、沢山の岩がむなしく転がり落ちていった。
 その時、一本の矢が飛んできて、子分の足に刺さった。
(いて!)
 続いてもう一本の矢が親分のすぐ横を、ピュッと音を立てて飛び去った。見ると勇者が弓を構え、矢を放っている。
(逃げろ、逃げろ!)
 魔物たちは一斉にアジトに向かって駆け出した。

 親分は矢が刺さった子分の足の手当てをしてやっていた。
 もう日が暮れようとしている。
(まさか飛び道具まで持っているとはな)
 オオカミ親分はそう言って子分の魔物たちを見まわした。
(誰か勇者をやっつけるいい考えが浮かんだ奴はいねえのかよ!)
 親分は怒鳴り散らしたが、自分もいい考えは浮かんでこなかった。
 夜も更けるころ、勇者たちを見張っていたドラ吉がやって来た。
(あいつら、テントを張って、中でガーガー寝てますぜ)
(見張りも立てずに、二人とも寝込んでやがるというのか?)
(へい。これはまたとないチャンスじゃねぇかと)
(よし、みんなで寝込みを襲うぞ。今度は武器を持っていけ)
 オオカミ親分を先頭に、魔物たちは洞窟を飛び出して駆けていった。

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