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グルドフ旅行記・2 お宝を盗んだ犯人は
盗まれたお宝・2
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「旅のお方にぜひお願いしたいことがございます」
「何でしょう?」
元勇者の悲しい性。お願いされると、ついついそっちのほうへ寄っていってしまう。
「私どもは魔物が潜む村の郊外へ出るということは、なかなかできません。しかしあなたたちは平気でしょう。まことに申し訳ありませんが、村の宝捜しに協力してはもらえませんか?」
「はい。先日はただ酒をたらふくご馳走になった縁もあります。できればお手伝いをしてさしあげたいと思うのですが、何しろ盗った者も盗られた物も分からないとあっては、何をどうやって捜したらいいものやら」
「絶対にお宝を取り返してきてくれとは申しません。村の大事なお宝を盗られておいて何もせずに済ましたとなれば末代までの恥。八方手を尽くして捜し回ったのに見つからなかったとなれば、仕方がないということになります」
「つまり?」
「二、三日村の周りを捜していただければ」
「はあ。分かりました。それでは取りあえずそのお宝のいわれみたいなものがありましたら、お聞かせ願いますか?」
「はい。約百五十年前にこの村にドラゴンが現れて村の家々を破壊し、畑を荒らし回りました。王様はすぐに勇者様たちを派遣して下さり、激しい戦いの末、ドラゴンを打ち倒したのです。この村を離れるにあたり、勇者様はドラゴンから得た戦利品を当時の村長に渡し、これを村の守り神とせよとおっしゃって帰っていったそうです」
「それがここに祀られていた?」
「百五十年前に勇者様から授かったものです」
「最近この祠の周りで何か気になるようなことは?」
グルドフもだんだんやる気になってきた。
「そうですな。お供え物がよくなくなるようになりました」
「お供え物とは?」
「月に一度、野菜や果物、水などを祠の前の祭壇に進ぜておりました。昔からそれがなくなることはあったのですが、最近はなくなることが頻繁におきるようになりました。ただ、お供え物は近くの畑でとれる野菜か果物ですので、それほど問題にはしていなかったのです」
「祭壇やその周り、広場は調べたのでしょう? 何か手掛かりはありましたか?」
「何もありません」
「ふむ。お宝の大きさはどれくらいですか?」
「お宝を入れていた箱は高さ、幅、奥行き、どれも二十センチくらいでしょうか」
「それは子供でも持てるくらいの重さですか?」
「重くはなかったようです」
「うーむ」
グルドフは考え込んだ。
「野菜など食料を盗っていくということは、動物や魔物の仕業ということも考えられます。盗られたと気が付いたのはいつで、どのような状況でありましたか?」
「村人は農業に従事しておる者が多いので、日が出るころにはほとんどの者が畑に出ております。昼前に帰ってきた村人の一人が祭壇にあるお供え物がなくなっているのに気付き、よく見たところ、祠の中のお宝もなくなっているのに気が付いたのです」
「では、お供え物とお宝がなくなったのは今日の午前中ということですか?」
「お供え物は今日進ぜたので、今日なくなったのは確かです。お宝がその時すでになくなっていれば、進ぜた者が気付いただろうということで、お宝も多分なくなったのは今日だと思われます」
「箱が村人の普段、行かないような場所で見つかったということは、村人が犯人とは考えにくいわけですな」
「村人が村の外に行くこともありますが、何人も一緒になって行きます。一人や二人だと魔物に襲われた時にどうにもなりませんから」
「そうですな」
グルドフはもう今の時点でこれ以上聞くことはないと思った。後で尋ねたいことができたらまた村長に訊きに来ればいい。
「他に何か」
村長が逆に尋ねた。
「そうですな。まず、明日は皆、今日と同じように行動していただきたい」
「今日と同じように?」
「いつものように朝起きて、いつものように畑に出かけて仕事をしていただければよろしい」
「はい」
「それから今日、したのと同じように明日の朝、お供え物を進ぜてください。もう一つ、お宝の箱も。壊れる前と同じ大きさのものを用意し、祠においてください。箱は新しくてもかまいません。中には・・・・小さな石ころでも入れておけばいいでしょう」
「わかりました。急いで作らせましょう。他には?」
「そんなところですかな。それでもお宝を取り戻すのは難しいでしょうが、なんとなく可能性が出てきた気がします」
「私もそんな気がしてきました。あなたが何をしようとしているのかは全くわかりませんが、取りあえずお任せします。何だか私にはあなたが只者ではないように思えてきました」
「いえ、只の者です」
「何でしょう?」
元勇者の悲しい性。お願いされると、ついついそっちのほうへ寄っていってしまう。
「私どもは魔物が潜む村の郊外へ出るということは、なかなかできません。しかしあなたたちは平気でしょう。まことに申し訳ありませんが、村の宝捜しに協力してはもらえませんか?」
「はい。先日はただ酒をたらふくご馳走になった縁もあります。できればお手伝いをしてさしあげたいと思うのですが、何しろ盗った者も盗られた物も分からないとあっては、何をどうやって捜したらいいものやら」
「絶対にお宝を取り返してきてくれとは申しません。村の大事なお宝を盗られておいて何もせずに済ましたとなれば末代までの恥。八方手を尽くして捜し回ったのに見つからなかったとなれば、仕方がないということになります」
「つまり?」
「二、三日村の周りを捜していただければ」
「はあ。分かりました。それでは取りあえずそのお宝のいわれみたいなものがありましたら、お聞かせ願いますか?」
「はい。約百五十年前にこの村にドラゴンが現れて村の家々を破壊し、畑を荒らし回りました。王様はすぐに勇者様たちを派遣して下さり、激しい戦いの末、ドラゴンを打ち倒したのです。この村を離れるにあたり、勇者様はドラゴンから得た戦利品を当時の村長に渡し、これを村の守り神とせよとおっしゃって帰っていったそうです」
「それがここに祀られていた?」
「百五十年前に勇者様から授かったものです」
「最近この祠の周りで何か気になるようなことは?」
グルドフもだんだんやる気になってきた。
「そうですな。お供え物がよくなくなるようになりました」
「お供え物とは?」
「月に一度、野菜や果物、水などを祠の前の祭壇に進ぜておりました。昔からそれがなくなることはあったのですが、最近はなくなることが頻繁におきるようになりました。ただ、お供え物は近くの畑でとれる野菜か果物ですので、それほど問題にはしていなかったのです」
「祭壇やその周り、広場は調べたのでしょう? 何か手掛かりはありましたか?」
「何もありません」
「ふむ。お宝の大きさはどれくらいですか?」
「お宝を入れていた箱は高さ、幅、奥行き、どれも二十センチくらいでしょうか」
「それは子供でも持てるくらいの重さですか?」
「重くはなかったようです」
「うーむ」
グルドフは考え込んだ。
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「村人は農業に従事しておる者が多いので、日が出るころにはほとんどの者が畑に出ております。昼前に帰ってきた村人の一人が祭壇にあるお供え物がなくなっているのに気付き、よく見たところ、祠の中のお宝もなくなっているのに気が付いたのです」
「では、お供え物とお宝がなくなったのは今日の午前中ということですか?」
「お供え物は今日進ぜたので、今日なくなったのは確かです。お宝がその時すでになくなっていれば、進ぜた者が気付いただろうということで、お宝も多分なくなったのは今日だと思われます」
「箱が村人の普段、行かないような場所で見つかったということは、村人が犯人とは考えにくいわけですな」
「村人が村の外に行くこともありますが、何人も一緒になって行きます。一人や二人だと魔物に襲われた時にどうにもなりませんから」
「そうですな」
グルドフはもう今の時点でこれ以上聞くことはないと思った。後で尋ねたいことができたらまた村長に訊きに来ればいい。
「他に何か」
村長が逆に尋ねた。
「そうですな。まず、明日は皆、今日と同じように行動していただきたい」
「今日と同じように?」
「いつものように朝起きて、いつものように畑に出かけて仕事をしていただければよろしい」
「はい」
「それから今日、したのと同じように明日の朝、お供え物を進ぜてください。もう一つ、お宝の箱も。壊れる前と同じ大きさのものを用意し、祠においてください。箱は新しくてもかまいません。中には・・・・小さな石ころでも入れておけばいいでしょう」
「わかりました。急いで作らせましょう。他には?」
「そんなところですかな。それでもお宝を取り戻すのは難しいでしょうが、なんとなく可能性が出てきた気がします」
「私もそんな気がしてきました。あなたが何をしようとしているのかは全くわかりませんが、取りあえずお任せします。何だか私にはあなたが只者ではないように思えてきました」
「いえ、只の者です」
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