グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・1 ジング王国の少年

冒険へ・2

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 相変わらずパフラットはあちこちにある色々な物に気をひかれて立ち止まっていたが、もうババロンやシェフからの距離を置くことはなくなった。
 ババロンもいちいちパフラットに注意するのをやめた。
 一行はその後何度か魔物と遭遇し、そのたびにグルドフは弓に矢をつがえたが、一度もその矢が放たれることはなかった。
 魔物のほとんどをパフラットが倒し、残りの少しをシェフが斬った。ババロンは無暗に剣を振り回しているだけだった。
「怖いから目をつぶっちゃうのも分からんでもないけど、それじゃ魔物はやっつけられないよ」
 たまりかねてパフラットがババロンに言った。
「まあ、そのうち俺が剣術を教えてやるよ」
「うん」
 ババロンは嬉しそうに返事をした。

 まだ日が高いうちにリョウテの村に着いた。
 ジング王国は小さな国なので、国境の村に行くといっても、二日もあれば足りた。その日はリョウテの小さな宿に泊まり、翌日には目指すソラテの村に着けるはずだった。
 宿に荷物を預けると、パフラットとババロンは表に出て、剣術の稽古をした。
「絶対に目をつぶるなよ。目をつぶったら魔物に殺されるからな」
 パフラットは珍しく真剣な表情になってババロンに剣の使い方を教えた。
 グルドフは二人に見つからないようにこそこそと宿に入り、逃げるように泊まる部屋に入った。

 ソラテへの道はより細く険しくなった。
 三人は用心しながらソラテの村へと急いだ。
 魔物が現れた。
 今度は今までよりも大きく強そうで、しかも三体もいた。
 パフラットはババロンの前に出て剣を振ったが、簡単に倒せる相手ではなかった。
 パフラットが一体を相手にしている間に、ババロンとシェフにも別の魔物が襲いかかった。
 ババロンは魔物を見て、狙いを定めて剣を振ったが、何度か空振りに終わり、魔物の凶悪な顔を見ているうちに怖くなってまた目をつぶり、剣を無茶苦茶に振り回した。
 すると剣に重い手ごたえがあり、目を開けると魔物が倒れるところだった。
 ババロンがパフラットを見ると、パフラットも魔物を斬って捨てるところだった。
「やった、やった、僕やっつけた」
 ババロンは喜んでパフラットのところに行った。
 シェフは自分の前とババロンの前に倒れている魔物のところに行き、突き刺さった矢を抜くと、そっと投げ捨てた。
 それからソラテの村まで強い魔物は現れなかった。パフラットは魔物の強さがある程度分かるようになってきたので、弱い魔物が襲って来た時はババロンに戦わせるようにして、様子を見て手助けした。
 ババロンもようやく魔物と戦うことに慣れてきた。
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