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グルドフ旅行記・1 ジング王国の少年
勇者を探せ
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翌日、グルドフたちが出発の用意をしている時に、王様からの使者が訪れた。
「もしお急ぎでないのなら、ぜひお城にお越しいただきたいと、王様が申しておられまず」
使者はグルドフに告げた。
グルドフは一日も早くマットアンに行き、武道家ターロウに会いたかったが、王様の言葉を無下に断るわけにはいかない。
グルドフは服装を整え、使者と共にジング国王の城へ向かった。
「勇者グルドフがこの町に来たと聞いてな。ぜひ話を聞いてほしくておぬしを呼んだのだ」
「実は私、もう勇者ではありません」
頭を下げたままグルドフは言った。
「おお、そうであった。失礼した。ところで、今回の旅は急ぎの旅かの?」
「いえ。勇者を引退し、今一度見聞を広めたいと物見遊山的な旅でして、急いではいません」
「それは丁度よかった。実はおぬしに頼みたいことがあるのだが」
「はい」
「少しばかり力を貸してはくれまいか」
「その、頼みごとの内容をお聞きしませんと、何とも返事のしようがありません」
「おお、そうであった。では、少し長くなるかもしれぬが、聞いてくれ」
「はい」
「三年ほど前に勇者が引退し、それ以来この国には勇者が不在だ。まあ、いなくてもそれほど困りはせぬと思っておったのだが。二カ月ほど前に国境付近の村に魔物が現れて暴れおった。その時は軍隊を派遣して魔物を追っ払ったのだが、どうも近くの山に魔物たちが棲みついてしまったらしいのだ。兵たちに棲家を探させて魔物を駆除しようとしたのだが、うまくいかなかった。そういったことは勇者たちのほうがうまくやれる。我が国は小さな国だが、やはり勇者は必要なのだ。そこでおぬしに頼みたいことは、この国の勇者を探してほしいのだ」
「は?」
「この国の勇者になれる資質を持った人物を探してほしい。高名な勇者であったおぬしなら、勇者に適した人物を見つけることができるだろう」
「いえ、それはどうだか」
グルドフは無理難題を押し付けられて困ってしまった。
「王様は、誰かそれらしい人物の当てはあるのですか?」
「当てがあればおぬしに頼んだりはせぬ。当てがないから頼んでおるのだ」
「はあ」
この国の王様が何の当てもないのなら、全くのよそ者の自分にはもっと何もないのにとグルドフは思った。
「どうだ? やってみてはくれぬか」
「はあ。ご期待に添えるような結果を出せるかは自信ありませんが、努力はしてみます」
「頼むぞ」
王様は期待に満ちた目でグルドフを見て言った。
グルドフは宿に戻ると、『困った、困った』と何度も口にしながら、王様から聞いた話をポポンに話して聞かせた。
「そいつは困りましたな」
話を聞き終えたポポンが言った。
グルドフは宿の主人にその日の旅立ちを取りやめ、しばらくこの町に留まることになったと告げると、王様に聞いた元勇者の住む家に向かった。
「もしお急ぎでないのなら、ぜひお城にお越しいただきたいと、王様が申しておられまず」
使者はグルドフに告げた。
グルドフは一日も早くマットアンに行き、武道家ターロウに会いたかったが、王様の言葉を無下に断るわけにはいかない。
グルドフは服装を整え、使者と共にジング国王の城へ向かった。
「勇者グルドフがこの町に来たと聞いてな。ぜひ話を聞いてほしくておぬしを呼んだのだ」
「実は私、もう勇者ではありません」
頭を下げたままグルドフは言った。
「おお、そうであった。失礼した。ところで、今回の旅は急ぎの旅かの?」
「いえ。勇者を引退し、今一度見聞を広めたいと物見遊山的な旅でして、急いではいません」
「それは丁度よかった。実はおぬしに頼みたいことがあるのだが」
「はい」
「少しばかり力を貸してはくれまいか」
「その、頼みごとの内容をお聞きしませんと、何とも返事のしようがありません」
「おお、そうであった。では、少し長くなるかもしれぬが、聞いてくれ」
「はい」
「三年ほど前に勇者が引退し、それ以来この国には勇者が不在だ。まあ、いなくてもそれほど困りはせぬと思っておったのだが。二カ月ほど前に国境付近の村に魔物が現れて暴れおった。その時は軍隊を派遣して魔物を追っ払ったのだが、どうも近くの山に魔物たちが棲みついてしまったらしいのだ。兵たちに棲家を探させて魔物を駆除しようとしたのだが、うまくいかなかった。そういったことは勇者たちのほうがうまくやれる。我が国は小さな国だが、やはり勇者は必要なのだ。そこでおぬしに頼みたいことは、この国の勇者を探してほしいのだ」
「は?」
「この国の勇者になれる資質を持った人物を探してほしい。高名な勇者であったおぬしなら、勇者に適した人物を見つけることができるだろう」
「いえ、それはどうだか」
グルドフは無理難題を押し付けられて困ってしまった。
「王様は、誰かそれらしい人物の当てはあるのですか?」
「当てがあればおぬしに頼んだりはせぬ。当てがないから頼んでおるのだ」
「はあ」
この国の王様が何の当てもないのなら、全くのよそ者の自分にはもっと何もないのにとグルドフは思った。
「どうだ? やってみてはくれぬか」
「はあ。ご期待に添えるような結果を出せるかは自信ありませんが、努力はしてみます」
「頼むぞ」
王様は期待に満ちた目でグルドフを見て言った。
グルドフは宿に戻ると、『困った、困った』と何度も口にしながら、王様から聞いた話をポポンに話して聞かせた。
「そいつは困りましたな」
話を聞き終えたポポンが言った。
グルドフは宿の主人にその日の旅立ちを取りやめ、しばらくこの町に留まることになったと告げると、王様に聞いた元勇者の住む家に向かった。
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