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第四章
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「下らない事を言って、うるさいな。僕はお前が昔から大嫌いだったんだ。殺してやりたいくらいに」
雅彦は笑いをかみ殺して言った。実際雅彦はこの惨めな男を目の前にして、愉快でたまらなかった。
中島は全身をわなわなと震わせ、頭もガクガクと無様に揺らした。そして地面に落ちていた刀を拾い上げる。
「殺してやる。悪魔め」
中島は刀を振り上げ、雅彦の元へ走った。
雅彦はサッと身構えた。恐れも緊張も無かった。
中島は渾身の力を込めて日本刀を振り下ろした。
雅彦はすっと横に避けて刀をかわした。体が軽い。このうすのろの大馬鹿者に自分を傷つけることなどできるわけがない。そう考えるとますます楽しくなった。
中島の逞しい体は伊達ではなかった。重い真剣を軽々と振り回してくる。
油断していた雅彦は肩にガツンとした衝撃を受け、鈍い痛みが走った。
服の中に、生暖かくてぬるぬるしたものが広がった。
体の中に急激に怒りが膨れ上がる。自分を傷つけた中島を許せない。
中島の振り回す刀を避けて身を屈めると、ひざを狙って思いっきり足を蹴り上げた。
グキっと鈍い音がして、中島の右足は無残に折れ曲がり、どさりと体を地面に打ち付けて倒れた。
雅彦は立ち上がると、中島の脇腹を蹴った。何度も何度も。
中島がごつごつした岩の裂け目のような口から血を吹き出した。
弱々しく体をくねらす中島を見て、雅彦は脇に転がる日本刀を拾い上げた。そして切っ先を地面に付け、中島の首のすぐ横に立てる。
ゆっくりと刀を持つ手を下げていく。
中島の首に刀が触れた。中島は恐怖の目で雅彦を見て、ガクガクと痙攣したように顔を震わせる。
中島は声にならない不気味な悲鳴を上げた。
舞い上がった血しぶきが、凍てつく空気の中にふわっと広がって四散する。
がきっと鈍い音がして、刀は地面を打ち付けた。
ゴロンと中島の頭が血の池の中に転がった。ビクン、ビクンと頭の無い体が痙攣する。
全身血まみれの雅彦が中島の死体から離れ、その首を見下ろした。
心からの安らかな笑みを浮かべると、雅彦は通りの暗がりの中にゆっくりと消えていった。
中島の体から流れ出るべき血はほとんど出尽くした。凍てつく空気に柔らかな湯気を立てていた血液も、急速に冷えていく。
突然、動く物の無かった暗がりで何かが動いた。小さな影が光の中に飛び出した。
美夏は首のない父親の胸に覆いかぶさると、激しく肩を震わせて顔をこすりつけた。ひゅうひゅうと深呼吸を繰り返すように泣く。
深く濃い闇の中、ぼんやりとした街灯に浮かび上がる少女だけがこの世に存在しているもののようだった。
小一時間ほども少女は泣き続けた。
泣き疲れた少女は、ゆっくりと顔を上げた。そして雅彦の消えた暗がりを睨む。
真剣な表情で睨んでいた少女の口元がふっと緩んだ。
そして少女はにやりと笑う。
恐ろしい微笑を浮かべたまま、少女は空気の抜けるような濁声で呟いた。
「殺してやる」
やがて少女は立ち上がると、溶け込むように闇に姿を消した。
雅彦は笑いをかみ殺して言った。実際雅彦はこの惨めな男を目の前にして、愉快でたまらなかった。
中島は全身をわなわなと震わせ、頭もガクガクと無様に揺らした。そして地面に落ちていた刀を拾い上げる。
「殺してやる。悪魔め」
中島は刀を振り上げ、雅彦の元へ走った。
雅彦はサッと身構えた。恐れも緊張も無かった。
中島は渾身の力を込めて日本刀を振り下ろした。
雅彦はすっと横に避けて刀をかわした。体が軽い。このうすのろの大馬鹿者に自分を傷つけることなどできるわけがない。そう考えるとますます楽しくなった。
中島の逞しい体は伊達ではなかった。重い真剣を軽々と振り回してくる。
油断していた雅彦は肩にガツンとした衝撃を受け、鈍い痛みが走った。
服の中に、生暖かくてぬるぬるしたものが広がった。
体の中に急激に怒りが膨れ上がる。自分を傷つけた中島を許せない。
中島の振り回す刀を避けて身を屈めると、ひざを狙って思いっきり足を蹴り上げた。
グキっと鈍い音がして、中島の右足は無残に折れ曲がり、どさりと体を地面に打ち付けて倒れた。
雅彦は立ち上がると、中島の脇腹を蹴った。何度も何度も。
中島がごつごつした岩の裂け目のような口から血を吹き出した。
弱々しく体をくねらす中島を見て、雅彦は脇に転がる日本刀を拾い上げた。そして切っ先を地面に付け、中島の首のすぐ横に立てる。
ゆっくりと刀を持つ手を下げていく。
中島の首に刀が触れた。中島は恐怖の目で雅彦を見て、ガクガクと痙攣したように顔を震わせる。
中島は声にならない不気味な悲鳴を上げた。
舞い上がった血しぶきが、凍てつく空気の中にふわっと広がって四散する。
がきっと鈍い音がして、刀は地面を打ち付けた。
ゴロンと中島の頭が血の池の中に転がった。ビクン、ビクンと頭の無い体が痙攣する。
全身血まみれの雅彦が中島の死体から離れ、その首を見下ろした。
心からの安らかな笑みを浮かべると、雅彦は通りの暗がりの中にゆっくりと消えていった。
中島の体から流れ出るべき血はほとんど出尽くした。凍てつく空気に柔らかな湯気を立てていた血液も、急速に冷えていく。
突然、動く物の無かった暗がりで何かが動いた。小さな影が光の中に飛び出した。
美夏は首のない父親の胸に覆いかぶさると、激しく肩を震わせて顔をこすりつけた。ひゅうひゅうと深呼吸を繰り返すように泣く。
深く濃い闇の中、ぼんやりとした街灯に浮かび上がる少女だけがこの世に存在しているもののようだった。
小一時間ほども少女は泣き続けた。
泣き疲れた少女は、ゆっくりと顔を上げた。そして雅彦の消えた暗がりを睨む。
真剣な表情で睨んでいた少女の口元がふっと緩んだ。
そして少女はにやりと笑う。
恐ろしい微笑を浮かべたまま、少女は空気の抜けるような濁声で呟いた。
「殺してやる」
やがて少女は立ち上がると、溶け込むように闇に姿を消した。
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