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第二章
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殺されたのは雅彦の家の警備に当たっていた警官だった。その若い巡査も、首を絞められて殺された後で、のこぎりのようなもので首を切断されていた。
玄関先で首を斬り落とした犯人は、家の中に忍び込んで、ご丁寧にも首を冷蔵庫の中に仕舞っていった。不可解な行動だったが、狂った男の行動で、その理由を探すことなどできなかった。
犯人の手がかりはほとんど無かった。一連の事件はどれも周到に考えて十分な準備をした上で行われたもので、全く気の狂った男の犯行とは言えなかった。ただ、これだけのことをしたのだから正常な人間ともいえない。
酷い子供殺しに続く警官殺しということで捜査員は増やされたが、日を追っても事件の糸口は見つからなかった。
中村は雅彦を質問攻めにして激しい頭痛の中に追いやった後、妙子にも山のように質問を浴びせた。そして悲しそうな顔で雅彦に言った。
「奥さん、相当参っているな。一度病院に行ってきた方がいい」
それは雅彦にもわかっていた。ただ、今までそんな余裕もなかった。中村の言葉が雅彦を焦らせた。早く助けてやらなければ、妙子は壊れてしまう。
警官殺しから数日経って、雅彦たちは家に帰ってきた。それまでの数日はホテルに泊まり、その間に家のカギを頑丈なものに変えてもらっていた。その日の午後、藤森が雅彦の家を訪れた。中村の影のような存在の藤森が一人きりで雅彦の家に来るのは初めてだった。
「もう二、三、質問をして来いということなので」
藤森は居間のソファで、おずおずと遠慮がちに言った。中村といる時と随分感じが違う。これが本当の姿なのだろうと思った。
質問は他愛のないものだった。少なくとも雅彦の頭痛を増幅させるものではなかった。それが事件とどんな関係があるのかわからなかった。
最後に藤森がこう言った。
「あまり落ち込まないで、気をしっかり持って奥さんと子供を守ってください。犯人は必ず見つけ出しますし、今までのような事件は二度と起こさせません」
藤森の力強い言葉が有り難かった。本当はそれを言いたくてやって来たのだろう。
雅彦は本気で他人の事を心配する藤森に好意を持った。
頭痛は日に日にひどくなっていくように思えた。ひと時も休まるときがない。
雅彦の過去は徹底的に調べられ、三年前の自殺未遂の事も調べられたが、雅彦の記憶に無い部分でわかったことは何も無かった。その時の事も刑事に色々と訊かれたが、考えがその部分に近づくと、相変わらず頭は頭蓋骨が砕けそうに痛んだ。瞬間的に訪れる痛みは、もはや立ってはいられないほどだった。
冷蔵庫の中から首が見つかった日以来、妙子は台所の物に触ろうとしなくなった。台所中の物は警察によって調べられ、安全が確認された。しかし、妙子はそれを受け入れようとせず、雅彦が何か作ろうと台所に立とうとすると激しい拒絶反応を示して、雅彦にさえ食器に触らせようとしなかった。
妙子も有希も外出を極度に恐れたから、食べ物は全て出来合いの物を雅彦が外から買ってくるしかなかった。
黙りこくって弁当を食べる三人の食卓には、家族団らんという言葉の欠片さえも無かった。
玄関先で首を斬り落とした犯人は、家の中に忍び込んで、ご丁寧にも首を冷蔵庫の中に仕舞っていった。不可解な行動だったが、狂った男の行動で、その理由を探すことなどできなかった。
犯人の手がかりはほとんど無かった。一連の事件はどれも周到に考えて十分な準備をした上で行われたもので、全く気の狂った男の犯行とは言えなかった。ただ、これだけのことをしたのだから正常な人間ともいえない。
酷い子供殺しに続く警官殺しということで捜査員は増やされたが、日を追っても事件の糸口は見つからなかった。
中村は雅彦を質問攻めにして激しい頭痛の中に追いやった後、妙子にも山のように質問を浴びせた。そして悲しそうな顔で雅彦に言った。
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それは雅彦にもわかっていた。ただ、今までそんな余裕もなかった。中村の言葉が雅彦を焦らせた。早く助けてやらなければ、妙子は壊れてしまう。
警官殺しから数日経って、雅彦たちは家に帰ってきた。それまでの数日はホテルに泊まり、その間に家のカギを頑丈なものに変えてもらっていた。その日の午後、藤森が雅彦の家を訪れた。中村の影のような存在の藤森が一人きりで雅彦の家に来るのは初めてだった。
「もう二、三、質問をして来いということなので」
藤森は居間のソファで、おずおずと遠慮がちに言った。中村といる時と随分感じが違う。これが本当の姿なのだろうと思った。
質問は他愛のないものだった。少なくとも雅彦の頭痛を増幅させるものではなかった。それが事件とどんな関係があるのかわからなかった。
最後に藤森がこう言った。
「あまり落ち込まないで、気をしっかり持って奥さんと子供を守ってください。犯人は必ず見つけ出しますし、今までのような事件は二度と起こさせません」
藤森の力強い言葉が有り難かった。本当はそれを言いたくてやって来たのだろう。
雅彦は本気で他人の事を心配する藤森に好意を持った。
頭痛は日に日にひどくなっていくように思えた。ひと時も休まるときがない。
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妙子も有希も外出を極度に恐れたから、食べ物は全て出来合いの物を雅彦が外から買ってくるしかなかった。
黙りこくって弁当を食べる三人の食卓には、家族団らんという言葉の欠片さえも無かった。
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