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第二章
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雅彦は無駄だとわかっていながら、もう一度眠りの世界に入り込もうとした。血管の中で血液が暴れているように頭が痛かった。
雅彦は眠ることを諦めて新聞を読むためにベッドから出た。
階下に降りて頭痛薬を飲もうとした。目の玉を抉り出されるかのように目の裏側がじくじくと痛んだ。
薬の入った箱を取り上げて、ふと考え直した。今朝、男が家の中に忍び込んでいる。ただ遊びに来たわけではないだろう。家の中の物にはどんな細工がしてあるかわからない。雅彦は薬箱を元に戻した。
外はまだ薄暗いが、新聞はもう来ている時間だ。雅彦は玄関のドアを開けた。
そこでウッと息を飲んで体を硬直させた。何かが足元にある。
仰向けに人が倒れている。男のようだ。警察の制服を着ている。コンクリートの上におびただしい血。
頭のほうを雅彦に向けて倒れている。ただ、その男に頭は無かった。
雅彦はバタンとドアを閉めた。頭がガンガンと殴られたように痛む。強烈な吐き気がして、腹が捩じられているようだ。
警察に電話をしようとして振り返り、悲鳴を上げそうになった。
妙子が立っていた。
「どうしたの?」
少し眠たそうに妙子が尋ねた。
「いや、いいから上に行っていなさい」
その時、雅彦はハッとなった。有希は大丈夫だろうか。
妙子を家の中へと押し込むと、階段を駆け上り、有希の部屋のドアを開けようとした。
カギが掛かっている。
「有希! 有希!」
雅彦は叫んだ。
ドアが開き、有希が眠たそうな目で雅彦を睨んだ。
「大丈夫か? 無事ならいいんだ。何でもない」
ほっとして言った雅彦の前でバタンとドアが閉まった。
「いや! いやー!」
階下で悲鳴が上がった。妙子だ。
雅彦は階段を駆け下りた。台所で妙子がまだ叫んでいる。
台所へ走った。
妙子はテーブルの前で床にぺたんと座り込んでいた。口をわなわなと震わせて目は大きく見開かれている。
雅彦は妙子の視線を追った。冷蔵庫の下に、水たまりのように赤黒い液体が広がっている。
冷蔵庫のドアを開けた。
棚の真ん中に男の首があった。
電話を終え、雅彦はその場にへなへなと座り込んだ。妙子は台所で腰を抜かしたまま、何かぶつぶつと呟いている。
すぐに外が騒がしくなった。車が停まる音。バタン、バタンとドアの閉まる音。バタバタと人の足音。人の甲高い声。
すぐにチャイムの音がした。
雅彦はよろよろと立ち上がった。歩き出す前に、中村たち数人の男達がどかどかと上がり込んできた。
刑事たちは冷蔵庫の中身に気が付いて凍り付いた。
雅彦は眠ることを諦めて新聞を読むためにベッドから出た。
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薬の入った箱を取り上げて、ふと考え直した。今朝、男が家の中に忍び込んでいる。ただ遊びに来たわけではないだろう。家の中の物にはどんな細工がしてあるかわからない。雅彦は薬箱を元に戻した。
外はまだ薄暗いが、新聞はもう来ている時間だ。雅彦は玄関のドアを開けた。
そこでウッと息を飲んで体を硬直させた。何かが足元にある。
仰向けに人が倒れている。男のようだ。警察の制服を着ている。コンクリートの上におびただしい血。
頭のほうを雅彦に向けて倒れている。ただ、その男に頭は無かった。
雅彦はバタンとドアを閉めた。頭がガンガンと殴られたように痛む。強烈な吐き気がして、腹が捩じられているようだ。
警察に電話をしようとして振り返り、悲鳴を上げそうになった。
妙子が立っていた。
「どうしたの?」
少し眠たそうに妙子が尋ねた。
「いや、いいから上に行っていなさい」
その時、雅彦はハッとなった。有希は大丈夫だろうか。
妙子を家の中へと押し込むと、階段を駆け上り、有希の部屋のドアを開けようとした。
カギが掛かっている。
「有希! 有希!」
雅彦は叫んだ。
ドアが開き、有希が眠たそうな目で雅彦を睨んだ。
「大丈夫か? 無事ならいいんだ。何でもない」
ほっとして言った雅彦の前でバタンとドアが閉まった。
「いや! いやー!」
階下で悲鳴が上がった。妙子だ。
雅彦は階段を駆け下りた。台所で妙子がまだ叫んでいる。
台所へ走った。
妙子はテーブルの前で床にぺたんと座り込んでいた。口をわなわなと震わせて目は大きく見開かれている。
雅彦は妙子の視線を追った。冷蔵庫の下に、水たまりのように赤黒い液体が広がっている。
冷蔵庫のドアを開けた。
棚の真ん中に男の首があった。
電話を終え、雅彦はその場にへなへなと座り込んだ。妙子は台所で腰を抜かしたまま、何かぶつぶつと呟いている。
すぐに外が騒がしくなった。車が停まる音。バタン、バタンとドアの閉まる音。バタバタと人の足音。人の甲高い声。
すぐにチャイムの音がした。
雅彦はよろよろと立ち上がった。歩き出す前に、中村たち数人の男達がどかどかと上がり込んできた。
刑事たちは冷蔵庫の中身に気が付いて凍り付いた。
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