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第二章
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「何か?」
王様が言った。
「旅の者たちが王様にお話しがあるので、お会いしたいとのことです」
大臣が頭を下げて言った。
「旅の者たち?」
王様の言葉に、真人はきょろきょろと辺りを見まわした。トレーシーの姿がない。だが今は先にすることがある。
「友達を捜しています。王様なら何か知っているのではないかと思ってここに来ました」
「済まぬな。わしは見聞の狭い王で、この城の外のことは何も知らぬ。旅の者の力にはなってやれぬのじゃ」
「そうですか」
真人は気落ちして言った。
「そうだ。この城の近くに女神像が立っておったのには気が付いたかの?」
「はい」
ニューヨークにある女神像と全く同じものが砂漠の中に立っているのを、この城に着く少し前に見かけていた。
「あの女神像が意外と噂話が好きでな。一度訊いてみたらいいと思う」
「はい。ありがとうございます」
真人は頭を下げた。
「もう日が沈む。今日はここに泊まっていきなさい」
「でも」
「大臣。用意をしてやってくれ」
「はい。承知しました」
大臣は王様に深々と頭を下げてから、真人に付いてくるようにと合図をした。
真人も大臣のように王様に頭を下げて、大臣の後を追った。
ドアの外に鎧のナイトがいた。
「客人が泊まっていく。部屋に案内してやってくれ。それからお連れの女の子が辺りの見学に行っているらしい。兵士達に捜させてくれ」
「はい」
大臣はナイトに言うと、真人に笑いかけてから行ってしまった。
「こっちだ」
横柄な態度でナイトはガチャガチャ音を立てながらずんずんと歩いていく。
「ここだ」
ナイトがドアを開けて入れと合図をした。
「連れの娘は見つけ次第、連れてくる」
バタンとドアを閉め、ガチャリとカギを掛けてから、ナイトはガチャガチャと音を立てて行ってしまった。
真人は大きくて硬いベッドに横になった。
一日のうちにあまりにも色々な事が起こり、疲れていたらしい。すぐにうとうとし始めた。
「真人、真人!」
夢の中で夢美が叫んでいる。真人はなぜだかそれが夢のことだとわかっていた。どこにいるのかもわからない夢美に向かって懸命に手を伸ばした。そして、もしその手を掴むことができたら、ずっと胸に抱いていた想いを・・・・
「マヒト、マヒト、起きて」
真人は現実の世界に戻された。気が付くとトレーシーが真人の名前を呼んでいた。
「よう、トレーシー。どこに行っていたんだ」
「起きて。とっても早く!」
真人はベッドから降りてトレーシーに従った。
「こっちに来て。こっち」
部屋から二人が外に出ると、トレーシーはドアにカギを掛けた。
「どうしたんだ、そのカギ」
「お姫様から借りたのよ。いいから早く」
トレーシーが小走りに、しかし注意深く廊下を進んでいく。
「どこへ行くんだ」
「シー。静かに」
曲がり角では立ち止まって、誰いないか確認し、兵士が来れば物陰に隠れてやり過ごしながら二人は進んだ。
王様が言った。
「旅の者たちが王様にお話しがあるので、お会いしたいとのことです」
大臣が頭を下げて言った。
「旅の者たち?」
王様の言葉に、真人はきょろきょろと辺りを見まわした。トレーシーの姿がない。だが今は先にすることがある。
「友達を捜しています。王様なら何か知っているのではないかと思ってここに来ました」
「済まぬな。わしは見聞の狭い王で、この城の外のことは何も知らぬ。旅の者の力にはなってやれぬのじゃ」
「そうですか」
真人は気落ちして言った。
「そうだ。この城の近くに女神像が立っておったのには気が付いたかの?」
「はい」
ニューヨークにある女神像と全く同じものが砂漠の中に立っているのを、この城に着く少し前に見かけていた。
「あの女神像が意外と噂話が好きでな。一度訊いてみたらいいと思う」
「はい。ありがとうございます」
真人は頭を下げた。
「もう日が沈む。今日はここに泊まっていきなさい」
「でも」
「大臣。用意をしてやってくれ」
「はい。承知しました」
大臣は王様に深々と頭を下げてから、真人に付いてくるようにと合図をした。
真人も大臣のように王様に頭を下げて、大臣の後を追った。
ドアの外に鎧のナイトがいた。
「客人が泊まっていく。部屋に案内してやってくれ。それからお連れの女の子が辺りの見学に行っているらしい。兵士達に捜させてくれ」
「はい」
大臣はナイトに言うと、真人に笑いかけてから行ってしまった。
「こっちだ」
横柄な態度でナイトはガチャガチャ音を立てながらずんずんと歩いていく。
「ここだ」
ナイトがドアを開けて入れと合図をした。
「連れの娘は見つけ次第、連れてくる」
バタンとドアを閉め、ガチャリとカギを掛けてから、ナイトはガチャガチャと音を立てて行ってしまった。
真人は大きくて硬いベッドに横になった。
一日のうちにあまりにも色々な事が起こり、疲れていたらしい。すぐにうとうとし始めた。
「真人、真人!」
夢の中で夢美が叫んでいる。真人はなぜだかそれが夢のことだとわかっていた。どこにいるのかもわからない夢美に向かって懸命に手を伸ばした。そして、もしその手を掴むことができたら、ずっと胸に抱いていた想いを・・・・
「マヒト、マヒト、起きて」
真人は現実の世界に戻された。気が付くとトレーシーが真人の名前を呼んでいた。
「よう、トレーシー。どこに行っていたんだ」
「起きて。とっても早く!」
真人はベッドから降りてトレーシーに従った。
「こっちに来て。こっち」
部屋から二人が外に出ると、トレーシーはドアにカギを掛けた。
「どうしたんだ、そのカギ」
「お姫様から借りたのよ。いいから早く」
トレーシーが小走りに、しかし注意深く廊下を進んでいく。
「どこへ行くんだ」
「シー。静かに」
曲がり角では立ち止まって、誰いないか確認し、兵士が来れば物陰に隠れてやり過ごしながら二人は進んだ。
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