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第2章
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校門の前でしゃべくりあっていた優菜たちの一団が、いつの間にか後ろを歩いている。もしかしたら僕たちの後を付けているのかなと思った。
優菜とは、春休みに公園に行ったきり、会っていない。校内で遠くから見かけるのが関の山だった。もちろん会って顔を見たかったけれど、慌てることはないと思っていた。でも近くにいる優菜の姿を見て、二人で話をしたいと思った。
僕は優菜の気持ちを知るために、大樹たちを本屋に誘った。
後ろの賑やかな集団から、優菜が手を振りながら別れて、本屋に入ってくる。これで優菜の気持ちはわかった。
僕は棚に並ぶ文庫本に目を通しながら、大樹と勇介から離れるにはどうしたらいいだろうかと考えた。さっき、優菜を見たのは初めてだと言ったばかりだ。今、優菜と親しげにしているのを見られるのはまずい。こんなことなら正直に話しておけばよかったと後悔した。
大樹と勇介は参考書と問題集の並ぶ本棚の前で品定めをしている。優菜は本を眺めながら、ぶらぶらと.店の中を歩き回っている。優菜も、学校では僕と特別親しいような振る舞いはしなかった。
優菜が何気ない様子で僕の近くに来る。
「すぐに戻るから、待ってて」
僕は遠くの棚の前にいる大樹と勇介を見ながら言った。
「うん」
丸い瞳で僕を見て、ちょっぴり微笑みを浮かべながら頷く優菜を見て、僕の心臓はまたもや忙しくなった。
僕は大樹たちのところに行った。
「何か買ってく?」
「いや」
慌てたように大樹は参考書を閉じて棚に戻す。その様子と、あやふやな返事から、大樹は欲しい参考書を見つけたんだと思った。でも、僕らの前じゃ、決して参考書なんか買わない。大樹はそういうヤツだ。
勇介はたいして興味がなさそうに参考書を棚に戻し、僕たちは店を出た。優菜が本屋に入ってきたことに二人は気が付いていないようだ。
しばらく歩いて僕は立ち止まった。
「あ、忘れた」
自転車を押して歩いていた大樹と勇介も立ち止まる。
「頼まれていた本を買ってくるのを忘れてた」
またもや嘘をついてしまった。単純な手だけど、他に方法が思いつかなかった。
「先に帰るぜ」
「うん。バイバイ」
もう一度本屋までのこのこ付き合ってくれるヤツらじゃない。
「バイバーイ」
愛想よく言い、二人は自転車をこいで行ってしまった。
僕はちょっとした罪悪感を持て余しながら、本屋へ戻る。
優菜は雑誌をぱらぱらとめくっていた。
「よう、どうしたの?」
僕は回りに同じ高校の生徒がいないか確認してから声をかけた。
優菜は笑顔で僕を見る。
「せっかく同じ高校に来ているんだもん。一緒に帰るの、憧れていたんだ」
優菜も優花と同じく、中学生の時は特別親しくしていた男友達はいないと電話で話してくれた。優花や優菜ほど可愛い子になると、男は声をかけにくくなるのかもしれない。でも、好きだと言われたことはあるらしい。もちろん好きな人もいた。片想いで、あまり話をしたこともなかったということも話してくれた。
だから学校の帰りに、男の人と二人で歩くのは優菜にとって初めての経験になる。
僕は店の外を見た。通りを歩く高校生は他校の制服を着たヤツしかいない。
「じゃ、行こう」
「うん」
無邪気な返事を聞いて、僕は優菜と店を出た。
優菜とは、春休みに公園に行ったきり、会っていない。校内で遠くから見かけるのが関の山だった。もちろん会って顔を見たかったけれど、慌てることはないと思っていた。でも近くにいる優菜の姿を見て、二人で話をしたいと思った。
僕は優菜の気持ちを知るために、大樹たちを本屋に誘った。
後ろの賑やかな集団から、優菜が手を振りながら別れて、本屋に入ってくる。これで優菜の気持ちはわかった。
僕は棚に並ぶ文庫本に目を通しながら、大樹と勇介から離れるにはどうしたらいいだろうかと考えた。さっき、優菜を見たのは初めてだと言ったばかりだ。今、優菜と親しげにしているのを見られるのはまずい。こんなことなら正直に話しておけばよかったと後悔した。
大樹と勇介は参考書と問題集の並ぶ本棚の前で品定めをしている。優菜は本を眺めながら、ぶらぶらと.店の中を歩き回っている。優菜も、学校では僕と特別親しいような振る舞いはしなかった。
優菜が何気ない様子で僕の近くに来る。
「すぐに戻るから、待ってて」
僕は遠くの棚の前にいる大樹と勇介を見ながら言った。
「うん」
丸い瞳で僕を見て、ちょっぴり微笑みを浮かべながら頷く優菜を見て、僕の心臓はまたもや忙しくなった。
僕は大樹たちのところに行った。
「何か買ってく?」
「いや」
慌てたように大樹は参考書を閉じて棚に戻す。その様子と、あやふやな返事から、大樹は欲しい参考書を見つけたんだと思った。でも、僕らの前じゃ、決して参考書なんか買わない。大樹はそういうヤツだ。
勇介はたいして興味がなさそうに参考書を棚に戻し、僕たちは店を出た。優菜が本屋に入ってきたことに二人は気が付いていないようだ。
しばらく歩いて僕は立ち止まった。
「あ、忘れた」
自転車を押して歩いていた大樹と勇介も立ち止まる。
「頼まれていた本を買ってくるのを忘れてた」
またもや嘘をついてしまった。単純な手だけど、他に方法が思いつかなかった。
「先に帰るぜ」
「うん。バイバイ」
もう一度本屋までのこのこ付き合ってくれるヤツらじゃない。
「バイバーイ」
愛想よく言い、二人は自転車をこいで行ってしまった。
僕はちょっとした罪悪感を持て余しながら、本屋へ戻る。
優菜は雑誌をぱらぱらとめくっていた。
「よう、どうしたの?」
僕は回りに同じ高校の生徒がいないか確認してから声をかけた。
優菜は笑顔で僕を見る。
「せっかく同じ高校に来ているんだもん。一緒に帰るの、憧れていたんだ」
優菜も優花と同じく、中学生の時は特別親しくしていた男友達はいないと電話で話してくれた。優花や優菜ほど可愛い子になると、男は声をかけにくくなるのかもしれない。でも、好きだと言われたことはあるらしい。もちろん好きな人もいた。片想いで、あまり話をしたこともなかったということも話してくれた。
だから学校の帰りに、男の人と二人で歩くのは優菜にとって初めての経験になる。
僕は店の外を見た。通りを歩く高校生は他校の制服を着たヤツしかいない。
「じゃ、行こう」
「うん」
無邪気な返事を聞いて、僕は優菜と店を出た。
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