いつか君に巡り逢える

原口源太郎

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第1章

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 日が暮れるのが早くなった。太陽はビルの陰に隠れて、鈍く空に光を投げかけている。部活の者は帰るのに早く、何もない奴らはすでに帰ってしまっていて、校門を出るときは辺りに誰もいなかった。
「颯太」
 名前を呼ばれて僕は振り返った。
 小走りに走ってきて僕の名前を呼んだのは優花だった。
「珍しいな、こんな時間に」
「颯太こそ」
「ちょっと野暮用で」
「私も」
 僕たちは当たり前のように並んで歩きだした。
「最近、日が沈むの早くなったね」
「うん。おまけに寒くなった」
 あまり会話が弾まない。一年前は話すことは沢山あったのに。
「そういえば好きな人ができたんだって?」
 優花が微笑みながら大きな瞳で僕を見る。
「ん? どうして? 誰から聞いたんだよ」
「誰って、それとなく。噂で。昔の彼氏ってことで、颯太の情報はすぐに入ってくるの」
「ふーん。ま、別に隠すほどの事でもないけど。一目惚れかな。その子とは話をしたことがないし、名前も知らないんだけど」
「さすが、颯太らしい」
 そんなことで納得されても困る。
「お前だって、好きな人がいるって聞いた」
「うん、まーね」
「誰?」
「そんなこと、言えるわけないじゃない」
 優花は照れたように笑う。
「まだ打ち明けてないの?」
「あったり前じゃない。そんな簡単にはできないわよ」
「お前なら大丈夫だ。打ち明けちゃえば、断る男なんていないぜ。俺なんか名前も知らない子に恋して、お先真っ暗だってのに」
 僕がそう言うと、優花は寂しそうに微笑んだ。その無理に笑みを浮かべた様子を見て、もしかしたら今でも僕のことが好きなんじゃないかと思った。

 一年の時、優花と付き合うようになって、僕たちのことは学校中の噂になった。優花がそれだけの存在だったからだ。周りのヤツらはたいして騒ぎたてもせず、僕たちも気にしなかった。
 僕はもちろんのこと、優花も異性と付き合うのは初めてだった。優花は僕に付き合ってくださいって言ったときが、今までの人生で一番緊張したと話してくれた。
 僕たちは週に一度くらいの割合で一緒に帰り、休み日に時々一緒に買い物に行ったりした。電話もよくした。話すことはいくらでもあった。
 学校でのこと、友達のこと、勉強のこと、今興味のあること、音楽のこと、ネットのこと、どこかへ遊びに行く約束。
 僕は照れくさくて、好きだとかそれに近い言葉は言えなかった。優花も同じだった。手くらいは握ったことがあるけれど、キスはしていない。それだけウブだった。
 先のことは考えたこともなかった。漠然と頭の中に自分の五年後、十年後の姿を描くと、隣にはいつも優花がいた。二人寄り添うようにしているのが当たり前に思えた。
 それが突然終わった。
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