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第1章
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「確かに、俺は今付き合っているやつがいる。一年の沢口って子で、お前らも見たことがあると思う。付き合っているっていっても、向こうが電話してきて話したり、ラインのやり取りをしたり、休みの日に立ち話をするくらいだけど」
そこで言葉を切ると、大樹はサンドイッチを口に押し込んで、ぬるくなったコーヒーをぐいっと飲んだ。話してて照れくさいに違いない。もしかしたら、大樹は僕よりウブなんじゃないだろうか。
「俺は昨年、三人の女に直接にしろ間接的にしろ、好きだとか付き合ってくれって言われた。でも中学の時に嫌なことがあったから、女と付き合うつもりはなかった」
大樹はわざとそっけなく話す。
大樹の中学の時の噂は聞いたことがある。一カ月ほど女の子と付き合ったのち、大樹のでっかいプライドは粉々になった。つまり振られたらしい。
「今年も来年も、高校にいる間は女と付き合うつもりはなかった。俺はお前みたいに一瞬にして熱くなることもないし」
僕を見てから、大樹はさらに話を続ける。
「ところが、沢口が現れて、俺の考えも変わった」
そこで大樹はもったいぶったように話を切った。
勇介はじーっと大樹を見つめている。大樹もじーっと空になったコーヒーカップを見つめている。
「早く早く」
ちっとも話し始めない大樹を、勇介が催促した。
「三月三十一日に三人で映画を見に行っただろ? あの時、暗くなりだす頃に家に帰ったんだけど、俺んちの塀に一人の女が寄りかかっていた。変な奴がいるなと思いながら家に入ろうとすると、女が呼び止めて、いきなり付き合ってくれって言うじゃんか。なんだこいつと思って無視しようとしたんだけれど、あっけらかんとしてて今までの女と違うし、寒い中ずっと待っていたのかと思うと何だか可哀相になって、少し話を聞いてやることにした」
そこで言葉を切ると、大樹はサンドイッチを口に押し込んで、ぬるくなったコーヒーをぐいっと飲んだ。話してて照れくさいに違いない。もしかしたら、大樹は僕よりウブなんじゃないだろうか。
「俺は昨年、三人の女に直接にしろ間接的にしろ、好きだとか付き合ってくれって言われた。でも中学の時に嫌なことがあったから、女と付き合うつもりはなかった」
大樹はわざとそっけなく話す。
大樹の中学の時の噂は聞いたことがある。一カ月ほど女の子と付き合ったのち、大樹のでっかいプライドは粉々になった。つまり振られたらしい。
「今年も来年も、高校にいる間は女と付き合うつもりはなかった。俺はお前みたいに一瞬にして熱くなることもないし」
僕を見てから、大樹はさらに話を続ける。
「ところが、沢口が現れて、俺の考えも変わった」
そこで大樹はもったいぶったように話を切った。
勇介はじーっと大樹を見つめている。大樹もじーっと空になったコーヒーカップを見つめている。
「早く早く」
ちっとも話し始めない大樹を、勇介が催促した。
「三月三十一日に三人で映画を見に行っただろ? あの時、暗くなりだす頃に家に帰ったんだけど、俺んちの塀に一人の女が寄りかかっていた。変な奴がいるなと思いながら家に入ろうとすると、女が呼び止めて、いきなり付き合ってくれって言うじゃんか。なんだこいつと思って無視しようとしたんだけれど、あっけらかんとしてて今までの女と違うし、寒い中ずっと待っていたのかと思うと何だか可哀相になって、少し話を聞いてやることにした」
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