君がいる今

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君がいる今 15話

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―つとむー
とうとういおさんが新太に告白したらしい。
しかもその現場をアキラくんと南さんが目撃したらしく、新太はいろんな心配をしていた。
もしかしたら、南さんの気持ちわかってるんじゃないだろうか。
もしくは、自分の気持ちに。
その疑問を共有するために今から…

ピンポーン

アキラくんの家に訪れた。
少しして、足音が聞こえてきた。

ガチャ

「はーい。つ、つとむ!?何も言わずに来るなんて珍しいな。」
アキラくんはいつもと違って黒縁のメガネをかけていた。
まるで別人みたい。
こっちの方がモテそうな気がするな。
「で?今日は何のよう?」
「期末の勉強をしに来たんです!それにしてもメガネアキラくんいつもと雰囲気違いますね」
「まぁ、いつもはコンタクトだからな」
彼は、あまりメガネ姿を見られたくなかったようだ。
少し嫌そうなのが伝わってくる。
「魔界の人も目が悪いとかどうとかの問題ってあるんですね。」
「まぁな」
「やっぱりメガネってすごいですね~」
「何が?」
「普段チャラいアキラくんでもメガネがあるだけで真面目に見えますね明日から真面目になったらどうです?」
「じゃあ、まじめくんデビューしよっかな…なわけないだろっ!!」
アキラくんのいきなりのノリツッコミがすごくテンポよかった。
上手くリアクションができなかった僕に少しふてくされている。
なんだかアキラくんが子供っぽく見えた。
「入れよ、どうせ新太に聞いたんだろ?」
アキラくん、もう察してたんだ。
僕が勉強しに来たのではなく、あの告白事件の日のことを話しに来たんだと…

僕をリビングに連れて行ってすぐ、アキラくんはキッチンへと向かった。
前にも思ったけど、アキラくんの家のソファはとても座り心地がいい。
それに、高校生1人が、一軒家に一人暮らしなんて、1人で人間界に逃げてきたのに、お金はどうやって…
まだまだ謎が多すぎる。
「飲み物紅茶でいいか?」
「紅茶ですか!?」
アキラくんが、キッチンの方から、声をかけてきた。
こういう時は麦茶やジュースが一般的かと思ったから、必要以上に驚いてしまった。
「この家しばらく紅茶とおしゃれなクッキーしかないぞ」
「おしゃれなクッキーまで出るんですか!?」
「あぁ、近所のおばちゃんがおしゃれな人で、最近たくさん紅茶とクッキーをくれるんだ」
「いい方ですね」
「まぁね~俺がいい子だからかな~」
「どこがですか!!」
いつものようにツッコミを入れた。
僕たちは時々、まるでお笑い芸人のような会話をしている気がする。
もし、アキラくんがずっと生きれたらふたりでコンビを組んでみてもいいかもしれない。
…なんてね。

「はいよ、お待たせ」
「ありがとうございます」
テーブルにはおしゃれなクッキーがたくさん盛り付けられたお皿が置かれ、その隣には紅茶というアキラくんのいつものイメージには程遠いテーブルになった。
新太たちが見たら驚くだろうな。
「さて、どっちから話そうか?」
「と申しますと?」
「俺らが見たもの聞いたものから話すか、つとむが知っていることの話か」
アキラくんは僕をじっと見つめている。
その姿はまるで、事情聴取をしている警察みたいだ。
どっちかといわれてもどっちから話すのが正しいのか…
僕からのほうがいいのか、それとも…
「あーもういい!!そうやって考え込まなくていいって!つとむは話をするために来たんだろ!だから、つとむから話せ!」
「は、はい!!そうですね」
「あとさ、ずっと思ってたんだけど、敬語やめろよ!次敬語使ったらジュース奢りな!」
「そ、そんな…」
「とりあえず、話してくれよ、つとむ!」
「は…じゃなくてうん」


あの日廊下で新太と話しているときにちょうど南さんをお姫様抱っこをして急いでいるアキラくんを見かけて新太がすっごい考え込んでたんです。
「南さん何かあったのかな?」
って僕が言うと
「いおのせいかもしれない。いや、俺のせいかも」
って新太が言ったんです。
「いったい何が?」って聞いたらいおさんに告白された時のことを話してくれたんです。
いおさんが少し機嫌悪そうだったからと「いおが何か言うかも」なんてことを新太はずっと言ってたんです。
僕は「そんなに気にしなくても」って何度も言ったんです。
でも、ずっと何かを気にしていつもの新太らしくなくってて…

思い出しながらアキラくんにあの日のことを話した。
するとアキラくんは口に含んでいた紅茶を吹き出しながら大爆笑した。
「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫、大丈夫!ってかつとむジュース奢りな!ずっと敬語だったぞ!」
「あ…!」
癖でずっと敬語を使ってしまっていた。
後でたくさん奢らないと…ってそんな場合じゃない!
「つとむ、やっぱあらたって鈍感だな!それってもう南ちゃんのこと好きじゃん!好きだからいお先輩のことどーだとか言ってさ、好きな人に他の人から告白されたところ見られたっていう複雑な気もち隠してるように俺は思うけど?」
「た、確かに」
すごくアキラくんの考えに納得した。
多分、新太はアキラくんの言うとおり南さんのことを好きだと思う。
それは、高校に入っていろいろ話してる時から勘づいてはいた。
でも、今回のアキラくんのような考えは1回も思いつかなかった。
僕と違って恋愛の経験と知識が豊富なんだろうな。
いや、今回は、僕がただ…
「おーい!つとむ?」
「は、はい!」
考えていた僕は、アキラくんの声で我に返った。
「続き話していいか?」
「うん」
「この前新太とたまたま部室で2人になったんだけど、その時もさっきつとむが話した感じだった。で、南ちゃんのことなんだけど…」
「南さん?」
「南ちゃんあの日とっても不安そうだった。ただでさえ、いお先輩とあらたが仲良くしてるの見て、心やられてたのに…夜、満月だったから、空の旅に連れてって、少しは元気になってくれたみたい。だけど、まだちょっと元気なくて」
空の旅?僕の頭の中にはハテナだらけだった。
僕も行ってみたいな…なんて声に出したら、話中断して「今度一緒に行くか?」なんて言ってきそうだ。
なんて変なことを考えてる横でアキラくんはため息をついた。
「なぁ、つとむ?」
「はい?」
「もう俺には、南ちゃんの恋を実らせたり、俺が生きられる未来を創ることは無理なのかな」
「何言ってるんですか!!」
「つ、つとむ!?」
「そんなどうなるかわからない未来ばっかり心配してどうするんですか!アキラくん、君がいる今を大事にしてください!!この今を大事にポジティブに生きなきゃいい未来なんてやってきませんよ!!」
「お、おう…」
いつの間にか立ってアキラくんに語りかけていた。
誰かにここまで本音を言ったことは親にも新太にもなかった。
本音を伝えるってここまですっきりするものなのかと少し不思議に思った。
「そ、そうだな!これからはもっとポジティブにいろいろ考えるよ!」
「はい!その意気です!!」
「支えになってくれるのは嬉しいけど、ジュースたくさん奢りな!」
「あ…」
僕は結局敬語を使っていた。
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