49 / 106
第二章 拡がりゆく世界
第46話 新しい伝令役
しおりを挟む
商会に帰ると、2人は仕事に戻った。
ペテロは東インド情勢を報告書でまとめ始め、ヨハネは商会の裏路地の整備を新しく来た奉公人たちと始めた。
商会裏の路地は、雨が降るとドブ川のようになってしまう上に奉公人たちが食い残しを捨てたり立小便をしたりするため、不潔極まりなかった。
ヨハネは過去に市参事会の仕事で覚えた大通りの整備の方法をここで使おうと考えていた。
まず新人たちと共に近くの河から砂利を運んできた。そして裏路地の水溜まりをすべて埋めてしまい、さらに路地の両脇に鍬で溝を掘った。その溝が崩れないように煉瓦でびっしりと固めた。次に路地の中央が高くなるように土を左右から寄せ集めて固め、その上から砂利を撒いた。
最後にヨハネは井戸から組んできた水を路地の上にぶちまけてみた。水は砂利の中に染み込むとしばらくして両脇の溝に砂利を通ってゆっくりと流れ込んだ。
ヨハネは小さな満足感を感じた。だが新人たちは退屈な作業にうんざりしていたようだった。
奉公人用の扉が開いて中からカピタンの秘書が顔を出した。
「奉公人頭。カピタンがお呼びです。それから新しい奉公人の中から1人、伝言役を選んで連れて来いとの事です」
「わかりまりました」
ヨハネは答えた。そして昨日やって来た早々に生意気な態度を取っていた新人を呼んだ。
「お前、名前は」
「パウロです」
「お前が伝令役だ。ついて来い」
ヨハネは井戸で手を洗いながら言うと商会の中へ入って行った。
奉公人用の入り口を通って、台所を抜けると、ヨハネは2階への階段を昇った。彼がこの商会に来た頃は、2階に上る事など決して許されなかった。
後ろを振り返ると、パウロは頬っぺたを赤くして興奮した様子だった。
「カピタンに決して失礼な口をきいてはいけない。とても厳しい方だ。気を付けろよ」
ヨハネは言った。
パウロは赤い頬っぺたを真っ青に変えて、唇をきつく結んだ。2人は3階に上がった。そこは商会の重役たちが働く特別な空間だった。廊下には絨毯が敷かれ、大通りに面した壁は幾つも窓が付けられていた。カピタンの部屋の近くまで2人が近づくと、その扉が開き、中から勘定係の男が現れた。そして、その後ろから1人の娘が現れた。
ペテロは東インド情勢を報告書でまとめ始め、ヨハネは商会の裏路地の整備を新しく来た奉公人たちと始めた。
商会裏の路地は、雨が降るとドブ川のようになってしまう上に奉公人たちが食い残しを捨てたり立小便をしたりするため、不潔極まりなかった。
ヨハネは過去に市参事会の仕事で覚えた大通りの整備の方法をここで使おうと考えていた。
まず新人たちと共に近くの河から砂利を運んできた。そして裏路地の水溜まりをすべて埋めてしまい、さらに路地の両脇に鍬で溝を掘った。その溝が崩れないように煉瓦でびっしりと固めた。次に路地の中央が高くなるように土を左右から寄せ集めて固め、その上から砂利を撒いた。
最後にヨハネは井戸から組んできた水を路地の上にぶちまけてみた。水は砂利の中に染み込むとしばらくして両脇の溝に砂利を通ってゆっくりと流れ込んだ。
ヨハネは小さな満足感を感じた。だが新人たちは退屈な作業にうんざりしていたようだった。
奉公人用の扉が開いて中からカピタンの秘書が顔を出した。
「奉公人頭。カピタンがお呼びです。それから新しい奉公人の中から1人、伝言役を選んで連れて来いとの事です」
「わかりまりました」
ヨハネは答えた。そして昨日やって来た早々に生意気な態度を取っていた新人を呼んだ。
「お前、名前は」
「パウロです」
「お前が伝令役だ。ついて来い」
ヨハネは井戸で手を洗いながら言うと商会の中へ入って行った。
奉公人用の入り口を通って、台所を抜けると、ヨハネは2階への階段を昇った。彼がこの商会に来た頃は、2階に上る事など決して許されなかった。
後ろを振り返ると、パウロは頬っぺたを赤くして興奮した様子だった。
「カピタンに決して失礼な口をきいてはいけない。とても厳しい方だ。気を付けろよ」
ヨハネは言った。
パウロは赤い頬っぺたを真っ青に変えて、唇をきつく結んだ。2人は3階に上がった。そこは商会の重役たちが働く特別な空間だった。廊下には絨毯が敷かれ、大通りに面した壁は幾つも窓が付けられていた。カピタンの部屋の近くまで2人が近づくと、その扉が開き、中から勘定係の男が現れた。そして、その後ろから1人の娘が現れた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。


帝国夜襲艦隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1921年。すべての始まりはこの会議だった。伏見宮博恭王軍事参議官が将来の日本海軍は夜襲を基本戦術とすべきであるという結論を出したのだ。ここを起点に日本海軍は徐々に変革していく…。
今回もいつものようにこんなことがあれば良いなぁと思いながら書いています。皆さまに楽しくお読みいただければ幸いです!
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる