久遠の海へ ー最期の戦線ー

koto

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赤く染まる北の大地

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「今動けば間違いなくソ連と衝突します!ジャップがどれだけ死のうが良いじゃありませんか!?」
 9月4日はマッカーサーの副官にとって最悪の日だった。いくらトルーマンに大統領が変わり反共寄りになったとはいえ、先端を開くことは望んでいない。にもかかわらず、マッカーサーはその可能性を生じる行動を取ろうとしているのだ。
「そもそも、我々だって一発でも日本軍が引き金を引けば、即刻武力駐留に移行する方針だったじゃないですか!聞いた話では日本軍がソ連兵を攻撃したと報告があります!我々は汚いジャップに裏切られたのですよ!」
 副官はなおも説得しようと声を出し続けるが、それでもマッカーサーに行動の変化はなかった。
「日本本土は米英が中心になって占領すべきである。たとえソ連が味方だとしても、一切領土を分け与える必要はない!」
「だからって、独断で千歳へ派兵すると確実に軍法裁判行きです!今あなたを失うわけにはいかないのです。」
「ソ連と日本が国境を接するというだけで、日本の非軍事化が完了しなくなる。再び真珠湾を攻撃される可能性を無くすためには、何としても他国と国境を接するわけにはいかないのだ。私の身分を守るために、将来の祖国を危険にさらすことはあってはならない!」
 マッカーサーの発言は事実その通りだった。日本を非武装化させるためには完全に孤立した島国でなければならない。国境を接するとなれば地域軍を許可するか、連合軍が駐留を続ける必要が生じる。そのことは、将来的にアメリカの負債になる事は間違いない。
 だが、それを防ぐための行動が独断による北海道への派兵と、ソ連軍と対峙することを意味しているのだ。米ソ間で紛争が生じた際、祖国の国民はどうとらえるだろうか。戦争で息子を失った両親は、殺した日本人を恨んでいる。独断で動いたマッカーサーを、国民は“子を殺した犯罪者を守るために独断行為をした売国奴”と認識するのではないか。
 マッカーサーもまたそれは十分に認識している事だった。それでも、最終的に行動を起こすことを選んだのだ。
「厚木の輸送機に発進を命令しろ。千歳に到着後、軍使をソ連軍司令部にまわす。各部隊は現地に展開し、ソ連軍の占領地へ向かう。これは最終決定だ」
 こうして、マッカーサーは独断で占領軍の一部を動かすことになった。
 翌9月5日。米ソ両軍兵士が道内で対峙する中、ソ連は大祖国戦争の終結を全世界に宣言し、第2次世界大戦は終了した。
 留萌から釧路以北は実質的にソ連軍占領下として、日本は戦争から解放されたのだった。
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