久遠の海へ ー最期の戦線ー

koto

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最期の連合艦隊

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 旗艦響は純然たる駆逐艦だ。列強各国の駆逐艦建造に大きな影響を与えた吹雪型は、間違いなくこの海上挺身隊最大戦力であった。なぜなら、残り3隻は駆逐艦でさえないからだ。

 その3隻は“択捉”、“笠戸”、“福江”である。そう、択捉型海防艦である。艦隊戦を意識していない海防艦3隻が挺身隊の残りの戦力なのである。
 さらに、その3隻はほとんど無傷であり、かつ北海道付近に停泊していた、というだけで今回の作戦に選ばれたに過ぎない。艦隊行動などは初めて行われた、本当に寄せ集めでしかなかった。
 
「艦長!占守島から無線連絡!!」
 ソ連軍の占守島への上陸から既に3日が経過していた。占守島そのものは上陸可能な海岸が限られるため、戦力の集中による防衛力は決して小さくないと考えられている。しかし、それでも本土防衛のため戦力が減少しており、増援も見込まれない現状では、いつ壊滅してもおかしくはない。
 その占守島から連絡があるという事は、それだけまだ玉砕していないことの証明でもあった。

「読み上げろ」
 響艦長の宇久奈が発する。無線は暗号化されておらず、また敵味方を問わず送られていた。
「は!。“我ら、未だ健在。竹田浜にて遅滞戦闘中”。以上です!!」
「全艦艇に通達!艦隊目標変更なし、占守島はなおも戦闘継続中。」
 
 艦橋に配属される全乗組員が声を上げる。この連絡は宇久奈にとって、また海上挺身隊総員にとって、士気向上につながった。それは、同じ連絡を受け取った残存日本軍にも同じであった。
 もっとも、それがいつまでも続くわけではない。既に満州では戦線が大きく後退したと報告があった。物量で劣る日本に勝ち目がないのは明白だった。
「占守島へ連絡を。平文で構わない!“連合艦隊、現在北上中。弾薬満載”と」
 
 もちろん、宇久奈たちは海上挺身隊だ。世界に名をはせた連合艦隊はもういない。しかし、それでも日本国民にとって連合艦隊は誇りであった。それは、海軍とは犬猿の仲とも言える陸軍にとっても同じであった。
 この無線が届けば、少しばかりではあるかもしれないが戦意高揚に繋がるかもしれない。そんなかすかな期待がこの一文の正体であり、現在できる最大の支援だった。
 
 
 さて、その海上挺身隊が占守島にたどり着くのは予定通りとはいかなかった。
 日ソ両艦隊による艦隊戦の1つ、“パラムシル沖海戦”が生じたためだ。
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