放課後の秘密の共犯者が俺にだけ執着する理由

茶々

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十月

ここではないどこか別の居場所.3

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 修学旅行はルートが予め決まっていたのもあって、あっという間に時間は過ぎていく。
 清水寺は着くまでに長い坂が幾本かあって、土産物屋や飲食店が立ち並んでいて賑やかだった。いちいち寄るのも楽しくて、時間がかかってしまった。
 京都は晴天。燦々と煌めく太陽の光が傾斜を照らしていて、下から見上げると眩しい。
 坂を上りきる頃には、息も絶え絶えだった。けれど清水寺の舞台に出た瑠璃は、思わず息苦しさを忘れて、感嘆のため息を漏らした。

「ぅおお。久しぶりに来たけど、やっぱ眺めいいなぁ」
 クラスメイトたちが柵に寄りかかる。
「てか意外と高いな。あれ、京都タワーじゃね? 写真撮っとくか」
 舞台の上は、外国人の観光客から瑠璃らと同じ修学旅行でいっぱいで、皆スマホや一眼レフカメラで遠くに見える京都の町を写真に収めている。
「瑠璃は京都に来るの、初めてだったっけ?」
「いや。小学生の時の修学旅行で来たことある。もうあんまり覚えてないけど、京都って来てみると、やっぱり京都って感じするな。独特な空気がある」

 深呼吸をすれば、白檀の混じったような古都の清廉な香りが鼻をつく。
 ぼんやりと水平線に浮かぶ山まで遮るものがなく雲一つない青空が続いている。解放感がどんと構えていて、清々しい。
 心の中に渦巻く全部が空に吸い込まれてしまいそうだった。
 できるものなら、ぜひともそうしてほしいものだと瑠璃は上を軽く睨んだ。

 京都の街並みは、たとえば神社や寺院が民家と民家の間に当たり前に存在していて、しかも街並みによく馴染んでいた。
 細い路地裏は影が差して、日中でさえ怪しげな雰囲気を放ち、観光客で賑わう中心地へ行けば、あちこちで異なる言語が聞こえてくる。
 少し歩くだけで、同じ日本だというのにまるで異世界に来てしまったみたいな気分になれる。

「……随分と、遠くまで来たもんだ」
 もう、奏とだらだら過ごしていた日常が懐かしい。

 自分の知らない香りがここにはある。
 自分の知らない景色がここにはある。
 むしろ、瑠璃が知っているものの方が少ないのだと思い知らされる。

 奏は自分が身を置く世界から遠く離れたこの地の景色を目にして何を思うのだろうか。
 あの夜、何処からか逃げてきたような、頼りなげな表情をしていた奏の顔を思い出して、瑠璃はそんなことが気になった。

 もしも、いま隣に奏がいたのならば、どんな顔をしてくれるのだろうか。

 それだけが、瑠璃は少し、見たくなったのだ。

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