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九月

夜.2※

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「瑠璃。進めていい?」
「……ドウゾ」
 奏は勿体ぶって、ゆっくり瑠璃のTシャツを脱がせようとした。
 瑠璃が途中でまどろっこしくなって、雑に脱ぎ捨てて上裸になる。奏に手を伸ばして彼のシャツをぐいと引っ張った。
「お前も脱げ」
「ん。わかった」

 奏もTシャツを脱ぐと床に放る。
 細身だけれど程よく引き締まった奏の身体は同じ男のもののはずなのに、この先を連想すると、何となく気まずい。
 途端に背徳感を煽られて、思わず顔を両手で覆った。

「ヤッパフクキロ」
「はぁ? やだよ。もう脱いだし」

 奏は再び覆いかぶさると、瑠璃の身体を強く抱きしめて素肌をすり合わせる。
 裸で触れ合って初めてわかる人肌の温もりの生々しさに、瑠璃はごくりと、唾を呑んだ。
 しっとりと汗ばんできた肌が吸い付く。奏の香りに包まれて、酩酊するかのように瞳の奥がぐるぐると回りだす。
 奏の身体も熱くて、肌が重なった部分から体温が流れ込んできて、染められるかのように火照ってくる。
 それを逃がすように瑠璃は熱い吐息をこぼした。

「瑠璃の身体って白くて綺麗だよね。触れたところからすこーしずつ桃色に染まるの、好きだな」

 脇腹を指先でなぞられて瑠璃はぴくりと反応する。
 それを満足げに眺め、奏は瑠璃の身体をゆっくりと撫でながらキスを送る。
 喉ぼとけ。鎖骨。二の腕。腹。
 その心地よさに瑠璃が目がとろんとした瞬間、奏の指先が胸元の突起を掠めた。

「……んっ」
「良い反応」
 奏は形を確かめるように、指の腹で突起を潰して、こねくり回す。
「っあぁ……かな、で」

 摘ままれて、ピンと弾かれて弄ばれる。
 ぷくりと熟れて主張しはじめたそれに、唇を寄せるとちゅうと吸い付き、舌で転がされて、視界がぼやけてくる。

「ね、気持ちい?」
「は…ぁ……っ……しらねーよ」
「知らねぇ却下。教えてよ。瑠璃が何が好きで、何が気持ちよくて、何に興奮してるのか。全部」
 奏は舌先で先端をちろちろと舐めながら、子どもをあやすように言い聞かせる。

「僕は瑠璃の身体を触るの初めてなんだから」

 その言葉に瑠璃は目を細める。
 奏は人を抱いたことがあるんだろうかと、薄ら疑問に思った。

 ほら、と促されて、瑠璃は浅く呼吸しながら必死に感覚を研ぎ澄ませる。
「っ…ちょっとくすぐったいけど、たぶん……きもち、いい」と言えば、より熱を実感して、たちまちその頬に林檎のような朱が差した。
「……っ。ふ。そっか。……うれし」

 何かを堪えるような低いかすれ声に、ちらりと奏の顔を上目遣いで伺った。
 欲が満たされる歓喜を抑えきれぬように、仄暗い笑みを浮かべていた。瞳孔は開き、その奥に劣情がどろりと溢れている。
 まるで飢えた獣が餌を見つけた刹那のような表情を受け入れて、瑠璃はまな板の上の鯉よろしく目を閉じる。

「……変態」
「瑠璃。ここ勃てといて言うこと?」

 奏はジャージの上から、すでに張って窮屈そうにしている瑠璃の自身を、形に沿うように触れる。

「……はっ。お前のほうだって勃ってんじゃん」

 売り言葉に買い言葉。瑠璃も鼻で笑う。
 それを見抜いているだろう奏は、わざと瑠璃のものに押し当てると、熱のこもった吐息をこぼしながら腰を動かし、味わうように擦り付けて見せる。

「ぁ…ぅ…」
 もたらされた刺激に喘ぎ声が漏れた。
「そうだよ。女の子みたく胸があるわけでもなけりゃ、柔らかくもないのにね。瑠璃の身体ってだけで、そんなのふっとんで、お前に興奮してる。なんでだろうな」

 奏がジャージのウエストの紐をほどく。
 瑠璃は脱がしやすいように腰を浮かせた。
 あれよあれよと、スラックスとパンツは脱がされて、邪魔そうに放り投げられた。
 ゆるく勃ちあがっていた瑠璃のモノに、奏がつつ、と触れる。ぴくりと震えて、先走りが蜜のようにこぽりと溢れて、奏の指先を伝った。
 普段、ペンを持ったり書類を撫でたり、花に触れて、誰かに優しくする奏の指が汚れていく淫猥な景色に、瑠璃はたまらず視線を泳がす。

「ぁ……だめ、だ……ふぁ…っ…かなで」
「ふ……期待してる?」
 透明な液をまとわせて、握られると、そのまま上下に梳かれて、直接的な刺激に腰が跳ねた。
「ん……ぁ、はっ……ぁ……きもちぃ……」
「意外。声抑えるかと思った」

 瑠璃の甘ったるく、慎ましやかな嬌声に、奏は耳を近づけてくつくつと笑った。
 痛いところを突かれたように、瑠璃は舌打ちする。

「……ぅ……お前が言ったんだろがっ…ぁ、全部教えろってぇ、だからっ……」
「だから律儀に聞かせてくれるの? んふ。そういうとこ、瑠璃だよなって感じする」
「ばかに、してんのか?」
「いいや。褒めてる」
 綺麗な顔を歪めながら、奏は手の動きを早めた。ぐりぐりと押し込むようにして亀頭を刺激する。

「や、ぁ、まって、かなで……はあぁっ……これ、いくって」
「はっ……こっち向いて」
 むりやり顎を掴まれて、奏から視線を逸らせない。
「い、ぐぅ……おい、うあっ…イッ~~~~っ!」

 下腹部に痺れるような強い快感が走り、足腰をがくがくさせて瑠璃はのけぞった。
 喘ぎを飲み込むように、シーツを握りしめて、子犬のような声で鳴く。同時に、瑠璃の腹に白濁が飛び散った。

「いいこ。瑠璃」
「っはぁ…はぁ……この、やろ」

 肩で息をしながら、くたりとのぼせる瑠璃が天井を仰いでいると、奏の指先が内股を撫でてながら尻へと辿り、窄んだ蕾をとんとん、とノックする。

「瑠璃、ここ」
「―――さっきの」
「うん?」

 瑠璃は息も絶え絶えになりながらも、奏を手招きする。
 どこか痛いところでもあっただろうか、と心配になって奏が顔を寄せると、ちゅ、と可愛らしく、気の抜けるようなキスを唇にされて、奏はきょとんとした。

「さっきの話。……何されても嫌じゃないっての。一応言っとくけど。誰でもいいわけじゃねえから」
 奏は気の抜けたような顔になってから、ふっと寂しそうに笑った。
「わかってるよ。ありがとう」

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