上 下
28 / 43
九月

夜.2※

しおりを挟む
「瑠璃。進めていい?」
「……ドウゾ」
 奏は勿体ぶって、ゆっくり瑠璃のTシャツを脱がせようとした。
 瑠璃が途中でまどろっこしくなって、雑に脱ぎ捨てて上裸になる。奏に手を伸ばして彼のシャツをぐいと引っ張った。
「お前も脱げ」
「ん。わかった」

 奏もTシャツを脱ぐと床に放る。
 細身だけれど程よく引き締まった奏の身体は同じ男のもののはずなのに、この先を連想すると、何となく気まずい。
 途端に背徳感を煽られて、思わず顔を両手で覆った。

「ヤッパフクキロ」
「はぁ? やだよ。もう脱いだし」

 奏は再び覆いかぶさると、瑠璃の身体を強く抱きしめて素肌をすり合わせる。
 裸で触れ合って初めてわかる人肌の温もりの生々しさに、瑠璃はごくりと、唾を呑んだ。
 しっとりと汗ばんできた肌が吸い付く。奏の香りに包まれて、酩酊するかのように瞳の奥がぐるぐると回りだす。
 奏の身体も熱くて、肌が重なった部分から体温が流れ込んできて、染められるかのように火照ってくる。
 それを逃がすように瑠璃は熱い吐息をこぼした。

「瑠璃の身体って白くて綺麗だよね。触れたところからすこーしずつ桃色に染まるの、好きだな」

 脇腹を指先でなぞられて瑠璃はぴくりと反応する。
 それを満足げに眺め、奏は瑠璃の身体をゆっくりと撫でながらキスを送る。
 喉ぼとけ。鎖骨。二の腕。腹。
 その心地よさに瑠璃が目がとろんとした瞬間、奏の指先が胸元の突起を掠めた。

「……んっ」
「良い反応」
 奏は形を確かめるように、指の腹で突起を潰して、こねくり回す。
「っあぁ……かな、で」

 摘ままれて、ピンと弾かれて弄ばれる。
 ぷくりと熟れて主張しはじめたそれに、唇を寄せるとちゅうと吸い付き、舌で転がされて、視界がぼやけてくる。

「ね、気持ちい?」
「は…ぁ……っ……しらねーよ」
「知らねぇ却下。教えてよ。瑠璃が何が好きで、何が気持ちよくて、何に興奮してるのか。全部」
 奏は舌先で先端をちろちろと舐めながら、子どもをあやすように言い聞かせる。

「僕は瑠璃の身体を触るの初めてなんだから」

 その言葉に瑠璃は目を細める。
 奏は人を抱いたことがあるんだろうかと、薄ら疑問に思った。

 ほら、と促されて、瑠璃は浅く呼吸しながら必死に感覚を研ぎ澄ませる。
「っ…ちょっとくすぐったいけど、たぶん……きもち、いい」と言えば、より熱を実感して、たちまちその頬に林檎のような朱が差した。
「……っ。ふ。そっか。……うれし」

 何かを堪えるような低いかすれ声に、ちらりと奏の顔を上目遣いで伺った。
 欲が満たされる歓喜を抑えきれぬように、仄暗い笑みを浮かべていた。瞳孔は開き、その奥に劣情がどろりと溢れている。
 まるで飢えた獣が餌を見つけた刹那のような表情を受け入れて、瑠璃はまな板の上の鯉よろしく目を閉じる。

「……変態」
「瑠璃。ここ勃てといて言うこと?」

 奏はジャージの上から、すでに張って窮屈そうにしている瑠璃の自身を、形に沿うように触れる。

「……はっ。お前のほうだって勃ってんじゃん」

 売り言葉に買い言葉。瑠璃も鼻で笑う。
 それを見抜いているだろう奏は、わざと瑠璃のものに押し当てると、熱のこもった吐息をこぼしながら腰を動かし、味わうように擦り付けて見せる。

「ぁ…ぅ…」
 もたらされた刺激に喘ぎ声が漏れた。
「そうだよ。女の子みたく胸があるわけでもなけりゃ、柔らかくもないのにね。瑠璃の身体ってだけで、そんなのふっとんで、お前に興奮してる。なんでだろうな」

 奏がジャージのウエストの紐をほどく。
 瑠璃は脱がしやすいように腰を浮かせた。
 あれよあれよと、スラックスとパンツは脱がされて、邪魔そうに放り投げられた。
 ゆるく勃ちあがっていた瑠璃のモノに、奏がつつ、と触れる。ぴくりと震えて、先走りが蜜のようにこぽりと溢れて、奏の指先を伝った。
 普段、ペンを持ったり書類を撫でたり、花に触れて、誰かに優しくする奏の指が汚れていく淫猥な景色に、瑠璃はたまらず視線を泳がす。

「ぁ……だめ、だ……ふぁ…っ…かなで」
「ふ……期待してる?」
 透明な液をまとわせて、握られると、そのまま上下に梳かれて、直接的な刺激に腰が跳ねた。
「ん……ぁ、はっ……ぁ……きもちぃ……」
「意外。声抑えるかと思った」

 瑠璃の甘ったるく、慎ましやかな嬌声に、奏は耳を近づけてくつくつと笑った。
 痛いところを突かれたように、瑠璃は舌打ちする。

「……ぅ……お前が言ったんだろがっ…ぁ、全部教えろってぇ、だからっ……」
「だから律儀に聞かせてくれるの? んふ。そういうとこ、瑠璃だよなって感じする」
「ばかに、してんのか?」
「いいや。褒めてる」
 綺麗な顔を歪めながら、奏は手の動きを早めた。ぐりぐりと押し込むようにして亀頭を刺激する。

「や、ぁ、まって、かなで……はあぁっ……これ、いくって」
「はっ……こっち向いて」
 むりやり顎を掴まれて、奏から視線を逸らせない。
「い、ぐぅ……おい、うあっ…イッ~~~~っ!」

 下腹部に痺れるような強い快感が走り、足腰をがくがくさせて瑠璃はのけぞった。
 喘ぎを飲み込むように、シーツを握りしめて、子犬のような声で鳴く。同時に、瑠璃の腹に白濁が飛び散った。

「いいこ。瑠璃」
「っはぁ…はぁ……この、やろ」

 肩で息をしながら、くたりとのぼせる瑠璃が天井を仰いでいると、奏の指先が内股を撫でてながら尻へと辿り、窄んだ蕾をとんとん、とノックする。

「瑠璃、ここ」
「―――さっきの」
「うん?」

 瑠璃は息も絶え絶えになりながらも、奏を手招きする。
 どこか痛いところでもあっただろうか、と心配になって奏が顔を寄せると、ちゅ、と可愛らしく、気の抜けるようなキスを唇にされて、奏はきょとんとした。

「さっきの話。……何されても嫌じゃないっての。一応言っとくけど。誰でもいいわけじゃねえから」
 奏は気の抜けたような顔になってから、ふっと寂しそうに笑った。
「わかってるよ。ありがとう」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

発情期がはじまったらαの兄に子作りセッされた話

よしゆき
BL
αの兄と二人で生活を送っているΩの弟。密かに兄に恋心を抱く弟が兄の留守中に発情期を迎え、一人で乗り切ろうとしていたら兄が帰ってきてめちゃくちゃにされる話。

媚薬使ってオナってたら絶倫彼氏に見つかって初めてなのに抱き潰される話♡

🍑ハンバーグ・ウワテナゲ🍑
BL
西村つばさ 21歳(攻め) めちゃくちゃモテる。が、高校時代から千尋に片思いしていたため過去に恋人を作ったことがない。 千尋を大切にしすぎて手を出すタイミングを見失った。 175cm 大原千尋 21歳(受け) 筋トレマニア。 童顔で白くてもちもちしてる。 絵に描いたかのようなツンデレ。 つばさが大好きだけど恥ずかしくて言えない。 160cm 何故かめちゃくちゃ長くなりました。 最初、千尋くんしか出てきません…🍑

「陛下を誑かしたのはこの身体か!」って言われてエッチなポーズを沢山とらされました。もうお婿にいけないから責任を取って下さい!

うずみどり
BL
突発的に異世界転移をした男子高校生がバスローブ姿で縛られて近衛隊長にあちこち弄られていいようにされちゃう話です。 ほぼ全編エロで言葉責め。 無理矢理だけど痛くはないです。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

娘の競泳コーチを相手にメス堕ちしたイクメンパパ

藤咲レン
BL
【毎日朝7:00に更新します】 既婚ゲイの佐藤ダイゴは娘をスイミングスクールに通わせた。そこにいたインストラクターの山田ケンタに心を奪われ、妻との結婚で封印していたゲイとしての感覚を徐々に思い出し・・・。 キャラ設定 ・佐藤ダイゴ。28歳。既婚ゲイ。妻と娘の3人暮らしで愛妻家のイクメンパパ。過去はドMのウケだった。 ・山田ケンタ。24歳。体育大学出身で水泳教室インストラクター。子供たちの前では可愛さを出しているが、本当は体育会系キャラでドS。

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

モブだけど貴重なオメガなので一軍アルファ達にレイプされました。

天災
BL
 オメガが減少した世界で、僕はクラスの一軍アルファに襲われることになる。

好きな人が「ふつーに可愛い子がタイプ」と言っていたので、女装して迫ったら思いのほか愛されてしまった

碓氷唯
BL
白月陽葵(しろつきひなた)は、オタクとからかわれ中学高校といじめられていたが、高校の頃に具合が悪かった自分を介抱してくれた壱城悠星(いちしろゆうせい)に片想いしていた。 壱城は高校では一番の不良で白月にとっては一番近づきがたかったタイプだが、今まで関わってきた人間の中で一番優しく綺麗な心を持っていることがわかり、恋をしてからは壱城のことばかり考えてしまう。 白月はそんな壱城の好きなタイプを高校の卒業前に盗み聞きする。 壱城の好きなタイプは「ふつーに可愛い子」で、白月は「ふつーに可愛い子」になるために、自分の小柄で女顔な容姿を生かして、女装し壱城をナンパする。 男の白月には怒ってばかりだった壱城だが、女性としての白月には優しく対応してくれることに、喜びを感じ始める。 だが、女という『偽物』の自分を愛してくる壱城に、だんだん白月は辛くなっていき……。 ノンケ(?)攻め×女装健気受け。 三万文字程度で終わる短編です。

処理中です...