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番外編
番外編:レオナルドという存在(5)
しおりを挟む事が事だけに、今回任務に関わっている人間は薬に耐性のある者だけだ。
だから油断していた。
今回の麻薬はタチが悪いのか、マリアンネ・ブラウンにつけていた監視はことごとく体調が悪くなった。
それほど彼女が摂取している麻薬の量が多いという事なのだろう。その隙をついてか、ただ偶然タイミングが悪かっただけなのか監視の隙をついて彼女はいつの間にかキャサリンに接触していた。
キャサリンには黙っていたが、ハーベルト侯爵令嬢とペンドリー伯爵令嬢、そしてアビントン公爵令嬢には彼女と必ず行動するよう“お願い”してある。だからキャサリンが一人になる事はないと思っていたのだが、三人同時に所用を言いつけられるとはね。
不審に思ったアビントン公爵令嬢の機転のおかげでいち早く駆けつける事ができたのだから人選に間違いはなかったのだろう。問題は学園内の協力者だ。
にしても……
あの時はまだマリアンネ・ブラウンの正体を知らなかったのだから仕方がないのかもしれないが、まさかキャサリンにマリアンネ・ブラウンとの仲を疑われるとは思わなかった。
キャサリンに愛を囁いても届いていないのは気づいていた。
彼女は警戒心が強い。私に関しては特に。
今までの所業がそうさせているのかと思えばそうではない。最初からだ。母上に引き合わされたその日から彼女は私に警戒をしていた。
初めは内密につけた監視に気づいているのかと疑ったが、アマンダの正体も気づいている様子はなかったし、何より彼女を信頼して“普通の令嬢になる”と相談していたのだから。こちらの思惑は何一つ気づいてはいないだろう。
けれど彼女が母上からお茶会への招待状を受け取って顔面蒼白にさせたと聞いた時から考えていたのは彼女は私に会いたくなかったのではないかという可能性だ。
一般的に王族の婚約者候補は貴族間のパワーバランスや私と年齢が近いなど様々な条件のもと選出される。もちろんその条件には知識レベルだって重要視されるわけで……
王妃からの召喚状に青褪める貴族は少なからずいるだろうが、それをまだ社交界も経験していない令嬢がそうなるのだろうか。
それも才女と謳われた少女が“普通になる”と宣言し、それを実現させた。
本来なら褒められるために頑張るという子どもが多い中、評価を可もなく不可もなくに抑える事をするだろうか。
彼女の行動の意味を考えるなら、やはり目立つ事を控えて自身の存在を隠すという目的しか浮かばない。それもその理由を予想するに王太子の婚約者候補に選出されたくない、ということぐらいしか想像できないのだ。
なぜそんなに逃げるのだろうか。
自惚れかもしれないが、容姿は嫌われていないはずだ。時々私の顔を見て頬を染めていることがあるから。……彼女は私がそれを見ている事には気づいていないけど。
だからたぶん王太子の婚約者という立場が彼女は嫌なのだ。
(だけど、ごめんね)
キャサリンが逃げたいと知っていても、私はキミに隣にいて欲しいんだ。
すべて私の我儘だという事はわかっている。
自分でも驚いたぐらいだ。彼女に対する執着心に。
常軌を逸している自覚はある。でもあの陽だまりのような温もりを私も味わいたい。独り占めしたいと思うようになってからは、もうダメだった。抜け出せないんだ。彼女の沼から。
きっと彼女によって手に入れた色彩は、彼女なしでは手に入らなかったんだと思う。
もともと心のない人間だったのだから。
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