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番外編
番外編:レオナルドという存在(1)
しおりを挟む僕は一歳頃から意識がはっきりとしていた。
自我があったのだ。嘘だと思うだろう? 僕もそう思うから。けれどそれは事実で覆すことはできない出来事だった。
僕は一切泣かなかったし、とても乳児とは思えないほど大人しかった。だからか周囲はそれを心配して医者へと連れまわすのだから手に負えない。
泣く必要もないのに泣かなければいけなかったのは今でも屈辱である。
幼少期では渇望された王子として恥じぬよう日々学んでいただけで周囲は驚いた。
やれ神童だ、次代の国王は素晴らしいなど持ち上げる言葉が多かったが、化け物なのではないかと気味悪がる人間も中にはいた。まあ確かに絵本を読んでもらうべき子供が一人で歴史書を読んでいるのだ。気味も悪いだろう。
そんな僕はこの国のあり方にずっと疑問を持っていた。どうしてこんなに非効率なやり方をしているのだろう、と。
貧富の差が激しく、国全土に手が行き届いているとは思えなかった。
教育係にそう疑問をぶつけても訝しむばかりで取り合ってもらえない。
この国は圧倒的に物の生産力が低いのだ。生産する工場や設備、道路や連絡手段が少ない。インフラストラクチャーが皆無に等しい。
そして人、富裕層には教育が行き届いているが、貧民層となると文字の読み書きすらあやしい。基礎教育すら受けられないなど考えられない。人材が育たなければ経済発展に結びつかず、国の発展など夢のまた夢だ。
それらを僕は国王へ進言してみた。子供の夢物語だと聞き流すか、少しでも聞き入れてもらえるのか。そこは賭けに等しかった。
国王は聡明で賢王たる名前にふさわしい方だ。数々の文明、文化を取り入れて国を発展させてきた。だが、僕はまだ子供だ。
僕の理想的な国のあり方を話すと、国王は馬鹿になどせず真剣に考えてくれた。
そして多少なりとも国の手が地方にも届くよう対策をしてくれたのだ。
新たな政策が僕の提案だと王宮内で噂になった時、周囲の反応はやはり二分化した。
僕をさらに崇拝するかのように神だ天使だと褒め称える人々と心を悪魔に売り知能を得た化け物と呼び疑う人々。
実にくだらない話だ。理解できない事を非現実的な神や悪魔の仕業などと言い自ら理解する事を放棄する。愚かな大人たちだ。
そして七歳になる頃には僕の感情は削げ落ち、やはり悪魔に心を売った人形なのだと言われるようになった。
誰もついてきていないとは言わない。だが誰も理解をしようとしない。学ばない。現状維持で甘んじるばかりで少しも進歩する兆しがない国に飽き飽きとした。
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