人見知り伯爵の運命の番

紅林

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婚約編

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コンフィニシス伯爵領に3日かけて帰ってきたハルミトンは使用人の前ではいつも通りに平常心をなんとか保っていたが、自室に入った瞬間に銀色仮面シルバーマスクを外した。

「どどどどどーしよう!?まさかあんな事になるなんて思ってなかったよ!僕が大使!?そんなの絶対無理!獣王国ってすごく体の大きい獣人がいるんだよね?絶対無理だよぉ!」

これが本来のハルミトン・コンフィニシスだ
黒目黒髪にちょっと気弱そうに見える目、そしていつもネガティブな事しか言わない口は小さめで仮面を外すと十分に美男子なのだ
仮面を外せば王宮で見せたような冷静沈着な面影は一切なくなる。ただのコミュ障の伯爵だ

「しかも、2ヶ月後とかホントに無理だよぉ」

ハルミトンは半泣きになりながらその日は就寝した


◆◇◆


先日の会議でハルミトンがサーヴェッチ獣王国へ特命全権大使として行くことが決まった一週間後にバストロイド王国の使者が獣王国へと向かい外交官であるハルミトン・コンフィニシス伯爵が来ることを伝えた
サーヴェッチ獣王はこの事を了承した。2ヶ月後にバストロイド王国、サーヴェッチ獣王国の代表者が会談が開かれることが国内外に正式に発表された


そして一ヶ月後、ハルミトンは王都リファインドへと向かうためにコンフィニシス伯爵領を出発した。もちろん銀色仮面シルバーマスクをつけて

「コンフィニシス伯爵、頼んだぞ。必ずや両国にとっても良い条約を結んでくれ」

ローレンス・バストロイド国王直々に言われたハルミトンの緊張は最高潮に達していた。だが、仮面を付けているハルミトンはそんな様子を一切見せない

「お任せ下さい。このバストロイド王国の安寧のために、必ずや成功させてみせましょう」
「うむ、頼んだぞ。特命全権大使、ハルミトン・コンフィニシス伯爵」
「御意」

ハルミトンは国王、ローレンスから見送られ王家の紋章が入った豪華な馬車に乗りサーヴェッチ獣王国へと出発した


◆◇◆


バストロイド王国の王都リファインドからサーヴェッチ獣王国の王都ルーデまでは約二ヶ月の月日がかかる
その間、ハルミトンは何をしているかと言うと

「獣人って初めて会うけど怖い人とかじゃないよね?怖い人だったらどうしよう!?人間だからって何か言われたりしないよね?大丈夫だよね?」

仮面を外し、カーテンを閉め切った馬車の中で不安のあまり一人で延々と喋り続けていた
そんなこんなで二週間が経過してようやく、サーヴェッチ獣王国とバストロイド王国との国境に辿り着いた
すると既に獣王国の迎えが来ていた

「待っていたぞ。バストロイド王国の使者殿」

ハルミトンより頭二つは大きいであろう巨体の獣人の兵士が馬車を降りたハルミトンへそう言った

「お初にお目にかかる。バストロイド国王陛下より今回の会談の全権を一任されたハルミトン・コンフィニシスです。以後お見知りおきを」
「俺は獣王陛下よりお前たちの出迎えを任された騎士団所属の近衛騎士、オスニエルだ。それより、お前が付けている仮面はなんだ?バストロイドにはそのような不気味なファッションでも流行っているのか?」
「いえ、これはあくまで私の趣味です」
「気色の悪い趣味だな。」

オスニエルと名乗った獣人の騎士はそれだけ言うと踵を返して行った
しばらく呆然としていると

「何をしている!さっさと馬車に乗り込め!」

怒られてしまった

ここからはサーヴェッチ獣王国領であるためバストロイド王国兵は入れない。そのためハルミトンはここから一人で獣王国の首都まで行かなければならない
獣王国側が用意してくれた馬車に乗り込み獣王国の首都ルーデに向かった


1ヶ月以上が経ったある日、ようやくハルミトンたちの一行は獣王国の首都ルーデに到着した

「降りて貰おう。」

馬車の扉を開けてもらいハルミトンは馬車から降りる。サーヴェッチ獣王国の領内に入ってからは食事も窓から出されるだけで馬車の外に出ることは許して貰えなかった。久しぶりの外の空気にハルミトンは思わず伸びをしそうになったがなんとかこらえた

「こっちだ 」

オスニエルは王宮であろう建物に入り迷う様子もなくズカズカと進んでいく
しばらくするとオスニエルは扉の前で立ち止まりその扉をノックする

「団長、連れて来ました」

団長?どういうことだろうか?
ハルミトンはそう思ったが仮面をしているため表情は見えていない

「入れ」

そう短い返事の後オスニエルは両開きの扉を開けた
中にはオスニエルよりも巨体の熊(?)の獣人が椅子に座っていた

「そいつがバストロイドから来たっていう人間か?」
「そうです。仮面をつけているのは自分の趣味だそうですよ」
「へぇ、奇っ怪なもんを付けてんだな」

その団長と呼ばれた巨体の獣人はハルミトンをジロジロと品定めするかのように眺める

「オスニエル殿、これはどういうことですかな?私はこの国に会談をしに来たのであって貴方の上司に観察されるためではありませんよ?」
「…………」

オスニエルはハルミトンの言葉をガン無視する

「人間ってのはみんなこんなに小さのか? 」
「はい、この大使と国境まで来ていた護衛兵士たちもこの者と同じくらいの大きさでした」
「このくらいなら一捻りで殺せるじゃねえか。国王陛下は何を考えているんだろーな?」
「ま、ずる賢いだけの人間共を少し警戒しているのかもしれませんね」

さっきから何の話をしているのだろうか?
ハルミトンの頭の中には?がいっぱいだ

「まぁ、人間観察もできたことだし外務大臣も待ってるだろうからさっさと連れてってやれ」
「はっ!」

すると団長と言われた獣人はまた椅子に座り直して剣を磨き始めた

「行くぞ!早く歩け!」

ハルミトンはようやく外務大臣に会えるとホッとしながらオスニエルの後ろをついて行った
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