1 / 5
ギヴァルシュ家の娘
しおりを挟む
大陸歴1730年11月3日、ダリアはメドウレ王国の貴族ギヴァルシュ家に生を受けた。彼女は美しく輝く銀色の髪にまるで宝石のような青い澄んだ瞳を持って生まれ将来は絶世の美女になるに違いないと言われて育った。
そして徐々に成長していった彼女は社交界にデビューし成人を迎えた。彼女の美しさは変わらずシミひとつないキメ細やかな肌にすらりとした腰周り、そして裕福なギヴァルシュ家という家柄、血筋。全てにおいて彼女は完璧だった
そんな彼女がよく友人に言いふらしていた言葉があるという
「ふふふ、わたくし最近思うのよ。貴族じゃない人達にどうして感情が必要なのかしらって」
友人が彼女に「なぜ思うの?」と聞き返した
「だって人間じゃないじゃない!あんな汚い物がわたくしたちと同じ人間だなんて貴女信じられる?」
ダリアはメドウレの社交界でも人気が高い令嬢ではあったがその異常なまでの思考から婚約者が中々見つからなかった。
それもそうだろう。両親や兄弟を含め彼女の異常差にみんな気づいていたのだから。王族や貴族と呼ばれる特権階級者や中産階級の人間たちは確かに農民や日雇労働者などの一般人を見下す傾向にあるがダリア程の思想を持つものはいなかったからだ。それに領地を管理し、国民から税金を回収する特権がある貴族にとって平民たちは金の成る木も同然だからだ
「納税?そんなもの当たり前じゃない。存在が罪なのだからそれくらいわたくしたちに払うべきだわ」
そんなある日、彼女にも縁談が舞い込んできた。相手は隣国ルマドロフ帝国の地方の有力貴族、ホールシュテイン伯グレブ・アマティウス・サルバドゥールイゴーヴァだった。彼は同じ言語や帝国と近い文化を持つメドウレ王国への関心を示し、その中でも淑女として名高いダリアを妻にと望んだのだ。
しかしダリアの父のヴァレールは娘のイカれた思想が伯爵に露見すれば離縁を突きつけられる可能性もあると考え、縁談を渋っていた
「お父様!どうしてそんなに反対するのです?サルバドゥールイゴーヴァ伯爵様はわたくしを望んでおられるのでしょう?」
彼女は父親を必死に説得してなんとか結婚を認めさせた。嫁入りのためにルマドロフ帝国に向かう馬車の中で何度も心配の言葉を口にするヴァレールにダリアは笑みを浮かべてこう言った
「そんなに心配しないでくださいまし。伯爵様から何度かお手紙を頂いておりますがすっごく素敵な方のようですわ。それに頂いた肖像画を見る限り伯爵様は相当なハンサムですわ」
ダリアの父であるグリムクラーク侯ヴァレール・エレメントルート・ギヴァルシュが隠居後に書き記した回想録にこのような記述がある
「私は懺悔する、娘を甘やかしたことを。私は自戒する、何故もっと厳しく娘の教育をしなかったのかを。私は悔恨する、娘を生かし、嫁がせてしまったことを」
そして徐々に成長していった彼女は社交界にデビューし成人を迎えた。彼女の美しさは変わらずシミひとつないキメ細やかな肌にすらりとした腰周り、そして裕福なギヴァルシュ家という家柄、血筋。全てにおいて彼女は完璧だった
そんな彼女がよく友人に言いふらしていた言葉があるという
「ふふふ、わたくし最近思うのよ。貴族じゃない人達にどうして感情が必要なのかしらって」
友人が彼女に「なぜ思うの?」と聞き返した
「だって人間じゃないじゃない!あんな汚い物がわたくしたちと同じ人間だなんて貴女信じられる?」
ダリアはメドウレの社交界でも人気が高い令嬢ではあったがその異常なまでの思考から婚約者が中々見つからなかった。
それもそうだろう。両親や兄弟を含め彼女の異常差にみんな気づいていたのだから。王族や貴族と呼ばれる特権階級者や中産階級の人間たちは確かに農民や日雇労働者などの一般人を見下す傾向にあるがダリア程の思想を持つものはいなかったからだ。それに領地を管理し、国民から税金を回収する特権がある貴族にとって平民たちは金の成る木も同然だからだ
「納税?そんなもの当たり前じゃない。存在が罪なのだからそれくらいわたくしたちに払うべきだわ」
そんなある日、彼女にも縁談が舞い込んできた。相手は隣国ルマドロフ帝国の地方の有力貴族、ホールシュテイン伯グレブ・アマティウス・サルバドゥールイゴーヴァだった。彼は同じ言語や帝国と近い文化を持つメドウレ王国への関心を示し、その中でも淑女として名高いダリアを妻にと望んだのだ。
しかしダリアの父のヴァレールは娘のイカれた思想が伯爵に露見すれば離縁を突きつけられる可能性もあると考え、縁談を渋っていた
「お父様!どうしてそんなに反対するのです?サルバドゥールイゴーヴァ伯爵様はわたくしを望んでおられるのでしょう?」
彼女は父親を必死に説得してなんとか結婚を認めさせた。嫁入りのためにルマドロフ帝国に向かう馬車の中で何度も心配の言葉を口にするヴァレールにダリアは笑みを浮かべてこう言った
「そんなに心配しないでくださいまし。伯爵様から何度かお手紙を頂いておりますがすっごく素敵な方のようですわ。それに頂いた肖像画を見る限り伯爵様は相当なハンサムですわ」
ダリアの父であるグリムクラーク侯ヴァレール・エレメントルート・ギヴァルシュが隠居後に書き記した回想録にこのような記述がある
「私は懺悔する、娘を甘やかしたことを。私は自戒する、何故もっと厳しく娘の教育をしなかったのかを。私は悔恨する、娘を生かし、嫁がせてしまったことを」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
『ダンジョンの守護者「オーガさんちのオーガニック料理だ!!」』
チョーカ-
ファンタジー
ある日、突然、なんの前触れもなく――――
主人公 神埼(かんざき) 亮(りょう)は異世界に転移した。
そこで美しい鬼 オーガに出会う。
彼女に命を救われた亮はダンジョンで生活する事になるのだが……
なぜだか、ダンジョを開拓(?)する事になった。
農業×狩猟×料理=異種間恋愛?
常時、ダンジョンに攻め込んでくる冒険者たち。
はたして、亮はダンジョン生活を守り抜くことができるだろうか?
【旧版】パーティーメンバーは『チワワ』です☆ミ
こげ丸
ファンタジー
===================
◆重要なお知らせ◆
本作はこげ丸の処女作なのですが、本作の主人公たちをベースに、全く新しい作品を連載開始しております。
設定は一部被っておりますが全く別の作品となりますので、ご注意下さい。
また、もし混同されてご迷惑をおかけするようなら、本作を取り下げる場合がございますので、何卒ご了承お願い致します。
===================
※第三章までで一旦作品としては完結となります。
【旧題:異世界おさんぽ放浪記 ~パーティーメンバーはチワワです~】
一人と一匹の友情と、笑いあり、涙あり、もう一回笑いあり、ちょこっと恋あり の異世界冒険譚です☆
過酷な異世界ではありますが、一人と一匹は逞しく楽しく過ごしているようですよ♪
そんなユウト(主人公)とパズ(チワワ)と一緒に『異世界レムリアス』を楽しんでみませんか?(*'▽')
今、一人と一匹のちょっと変わった冒険の旅が始まる!
※王道バトルファンタジーものです
※全体的に「ほのぼの」としているので楽しく読んで頂けるかと思っています
※でも、時々シリアスモードになりますのでご了承を…
=== こげ丸 ===
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
箱庭物語
晴羽照尊
ファンタジー
※本作は他の小説投稿サイト様でも公開しております。
※エンディングまでだいたいのストーリーは出来上がっておりますので、問題なく更新していけるはずです。予定では400話弱、150万文字程度で完結となります。(参考までに)
※この物語には実在の地名や人名、建造物などが登場しますが、一部現実にそぐわない場合がございます。それらは作者の創作であり、実在のそれらとは関わりありません。
※2020年3月21日、カクヨム様にて連載開始。
あらすじ
2020年。世界には776冊の『異本』と呼ばれる特別な本があった。それは、読む者に作用し、在る場所に異変をもたらし、世界を揺るがすほどのものさえ存在した。
その『異本』を全て集めることを目的とする男がいた。男はその蒐集の途中、一人の少女と出会う。少女が『異本』の一冊を持っていたからだ。
だが、突然の襲撃で少女の持つ『異本』は焼失してしまう。
男は集めるべき『異本』の消失に落胆するが、失われた『異本』は少女の中に遺っていると知る。
こうして男と少女は出会い、ともに旅をすることになった。
これは、世界中を旅して、『異本』を集め、誰かへ捧げる物語だ。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる