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第四話
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俺は重い足取りで酒場の扉を開けて中へ入った
「待ってたよクリフ!」
「……おう」
満面の笑みでこっちに駆け寄ってくるイーデンを見て、俺は思わず顔を引きつらせた
「まずは座ってよ。ゆっくり話をしよう」
「分かった」
俺たちはカウンターに座り、店主にいつも通り酒を注文した
「まずは、謝らせて。酔って意識がはっきりしていない君を抱いてしまったのは本当にごめん。反省してるよ」
「……っ!それはもういい!」
俺は改めて「抱いた」言われることに羞恥心を覚えた
「でも、僕がクリフに抱いていた気持ちは本物さ。保健省に入省して君を人目見た時から好きだった。だから、順番は逆になったけど僕のことを恋愛対象として見てほしい」
イーデンのあまりの真剣な表情に俺は頭を抱えた。
だってこれまで仕事仲間としてしか見てこなかった同性からの告白だ。そんな簡単に受け入れられるはずがない
「……ごめん。すぐには受け入れられない」
「もちろんそれは分かってるよ。僕は君が失恋するの何年も待ってたんだ。これからもそれが続くだけだよ」
「何年も?」
「そうだよ。なのに君はずっと好きな人の為に必死に働いてた。だから僕はそんな君の恋路を邪魔するつもりはなかったんだ」
ということは、俺に好きな人がいると分かっていたからこれまではアプローチしてこなかったけど、失恋したっていうことが分かったから昨日からアプローチを始めたってことか?
「だからこんなチャンスを逃す訳にはいかなかった。だから昨日、君がよく行くこの酒場に来て失恋して落ち込んでいる君を慰めようと思ったんだ。でも君は僕の想像以上に酔っ払っていて二軒目では完全に潰れてた。それが可愛くて可愛くて仕方がなくて、僕は君を抱く為に宿に行ってしまったんだ」
真剣にイーデンは語っているが、俺は羞恥に悶えていた
こんな話を真横で真剣にされるとか恥ずかしすぎるだろ!
「これからは真正面から君にアタックすることにした。だから、逃げられると思わないでね、クリフ」
「……うん、分かった」
顔を近づけてそう言われて俺は思わず頷いてしまった
◆◇◆
その日からのイーデンの行動は凄まじかった
まず毎日俺の家まで迎えに来て花束を渡して愛の言葉を呟いてくる。「今日も綺麗だ」とか「大好きだよ」とかそんな有り触れた言葉なんだけど毎日耳元で言われるとなんだか俺も恥ずかしいので出来ればやめて欲しい
そう伝えるとイーデンは悪びれもなくこう言った
「どうして?照れてるクリフも可愛いよ?」
イーデンのアプローチはプライベートだけではなく職場でも続いた
保健長官も参加する大事な会議では絶対隣に座るし、俺に仕事が割り振られると絶対に手伝ってくれる。たまに残業で残っていると一緒に残って大量の事務作業を手伝ってくれたりもする
そんなイーデンに俺は心を開いていった
「イーデン、お前は優しい。だから俺以外の相手を探せ」
あれから二週間ほど経ったある日、俺はイーデンと酒場で飲みに来ている時にそういった
「え……?」
「俺はこのニ週間、お前から色々優しくされて嬉しかった。だけどそれは同性の俺じゃなくてちゃんとした異性に向けるべき感情だ」
「そんなことない」
「いや、多分お前にはもっといい相手がいるよ」
この二週間で俺はイーデンのことを意識し始めてしまった。同性をそういう目で見てしまったことがなんだか恥ずかしくて、俺は思ってもないことを言ってしまう
「クリフは、それでいいの?」
「あぁ、お前は友達だ。幸せになって欲しい。そのための手伝いなら何でもしてやる」
「……そっか、なら僕が幸せになるために今から行くところがあるよ」
少しトーンが低い声でイーデンはそう言って俺の腕を強く掴んだ。そして店から出ると前に来た宿屋に入った
「何でもしてくれるんでしょ?」
「あぁ、でもここは……」
「じゃあ僕の幸せはクリフと恋人になる事だからここで結ばれればいいんだね」
「え!ちょ!?」
「今日は酔ってないクリフを抱けるんだね!ちゃんと僕のカタチを覚えて気持ちよくなろうね!クリフが僕の体なしで生きられないようにしてあげる!」
狂気的な笑みを浮かべるイーデンに組み敷かれ、俺はまたコイツと一夜を共にしてしまったのだった
「待ってたよクリフ!」
「……おう」
満面の笑みでこっちに駆け寄ってくるイーデンを見て、俺は思わず顔を引きつらせた
「まずは座ってよ。ゆっくり話をしよう」
「分かった」
俺たちはカウンターに座り、店主にいつも通り酒を注文した
「まずは、謝らせて。酔って意識がはっきりしていない君を抱いてしまったのは本当にごめん。反省してるよ」
「……っ!それはもういい!」
俺は改めて「抱いた」言われることに羞恥心を覚えた
「でも、僕がクリフに抱いていた気持ちは本物さ。保健省に入省して君を人目見た時から好きだった。だから、順番は逆になったけど僕のことを恋愛対象として見てほしい」
イーデンのあまりの真剣な表情に俺は頭を抱えた。
だってこれまで仕事仲間としてしか見てこなかった同性からの告白だ。そんな簡単に受け入れられるはずがない
「……ごめん。すぐには受け入れられない」
「もちろんそれは分かってるよ。僕は君が失恋するの何年も待ってたんだ。これからもそれが続くだけだよ」
「何年も?」
「そうだよ。なのに君はずっと好きな人の為に必死に働いてた。だから僕はそんな君の恋路を邪魔するつもりはなかったんだ」
ということは、俺に好きな人がいると分かっていたからこれまではアプローチしてこなかったけど、失恋したっていうことが分かったから昨日からアプローチを始めたってことか?
「だからこんなチャンスを逃す訳にはいかなかった。だから昨日、君がよく行くこの酒場に来て失恋して落ち込んでいる君を慰めようと思ったんだ。でも君は僕の想像以上に酔っ払っていて二軒目では完全に潰れてた。それが可愛くて可愛くて仕方がなくて、僕は君を抱く為に宿に行ってしまったんだ」
真剣にイーデンは語っているが、俺は羞恥に悶えていた
こんな話を真横で真剣にされるとか恥ずかしすぎるだろ!
「これからは真正面から君にアタックすることにした。だから、逃げられると思わないでね、クリフ」
「……うん、分かった」
顔を近づけてそう言われて俺は思わず頷いてしまった
◆◇◆
その日からのイーデンの行動は凄まじかった
まず毎日俺の家まで迎えに来て花束を渡して愛の言葉を呟いてくる。「今日も綺麗だ」とか「大好きだよ」とかそんな有り触れた言葉なんだけど毎日耳元で言われるとなんだか俺も恥ずかしいので出来ればやめて欲しい
そう伝えるとイーデンは悪びれもなくこう言った
「どうして?照れてるクリフも可愛いよ?」
イーデンのアプローチはプライベートだけではなく職場でも続いた
保健長官も参加する大事な会議では絶対隣に座るし、俺に仕事が割り振られると絶対に手伝ってくれる。たまに残業で残っていると一緒に残って大量の事務作業を手伝ってくれたりもする
そんなイーデンに俺は心を開いていった
「イーデン、お前は優しい。だから俺以外の相手を探せ」
あれから二週間ほど経ったある日、俺はイーデンと酒場で飲みに来ている時にそういった
「え……?」
「俺はこのニ週間、お前から色々優しくされて嬉しかった。だけどそれは同性の俺じゃなくてちゃんとした異性に向けるべき感情だ」
「そんなことない」
「いや、多分お前にはもっといい相手がいるよ」
この二週間で俺はイーデンのことを意識し始めてしまった。同性をそういう目で見てしまったことがなんだか恥ずかしくて、俺は思ってもないことを言ってしまう
「クリフは、それでいいの?」
「あぁ、お前は友達だ。幸せになって欲しい。そのための手伝いなら何でもしてやる」
「……そっか、なら僕が幸せになるために今から行くところがあるよ」
少しトーンが低い声でイーデンはそう言って俺の腕を強く掴んだ。そして店から出ると前に来た宿屋に入った
「何でもしてくれるんでしょ?」
「あぁ、でもここは……」
「じゃあ僕の幸せはクリフと恋人になる事だからここで結ばれればいいんだね」
「え!ちょ!?」
「今日は酔ってないクリフを抱けるんだね!ちゃんと僕のカタチを覚えて気持ちよくなろうね!クリフが僕の体なしで生きられないようにしてあげる!」
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