精霊の森に魅入られて

丸井竹

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66.精霊大国

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アーダン国の聖なる山の中腹に建てられた宮殿に、クシールの姿があった。

真っ白な円柱に囲まれた風通しの良い部屋に通されたクシールは、窓辺の長椅子に腰かけ、神秘的な美貌の持ち主であるユアンジールと対峙していた。

トレイア国とアーダン国の間では、精霊師と契約師に関する情報交換が定期的に行われている。
同時に、契約師が精霊師と交流する機会も作られ、契約師が精霊の山に招かれることも、精霊師がトレイア国で精霊師になるための講義を行うこともあった。

両国間で行われるそうした交流や交渉事の全てを担当しているのは精霊言語師であり、大神官でもあるクシールだったが、今回の訪問は、クシールの個人的な用件による部分が大きく、ユアンジールもそれを歓迎しクシールを受け入れていた。

精霊師と精霊言語師である二人の間には、友情めいたものが芽生えつつあったが、互いに背負うものが大きく、それもまた簡単にいく話でもなかった。

扉が鳴り、いかにも書庫管理人と思われるやせ型の青白い男が入ってきて、ユアンジールの前に抱えてきた書物を置いた。
不思議な模様で飾られた皮表紙の分厚い書物には、精霊言語が記されている。
アーダン国は精霊王の伝説が色濃く残された国であり、古い精霊書も多く所持している。
今回はその書物を借りるための訪問だった。

さすがに貴重なものであるため、ユアンジールはクシールが直接来て借りていくことを条件としたのだ。
そのやりとりには契約紙が使われることになっており、その手続きは既に終わっていた。

「精霊言語の発祥の地と呼ばれているが、その起源を正確に辿ることはわが国でも不可能だ」

書物を持ってきた男が部屋を出ていくと、ユアンジールは積み上げられた書物の一番上に手を伸ばし、それを取り上げクシールに差し出した。
有難く受け取り、書物を膝に乗せてページをめくる。

クシールの手が止まった。
見たこともない文様がぎっしりと描き込まれている。

「これは我が国の精霊書にはありません」

「存在していないということは、誰にも描けないということか?」

契約師が描く文様は、精霊の力が宿る宣誓液が決めている。
しかしその文様は契約師が覚えていなければならないのだ。

「そういうことになります。似た文様があれば、描くことが出来ますが、文様が定まるまで時間がかかります。しかしこれは……見たことがありません」

まるで竜の翼のような文様がいくつにも連なり、中央に目のような形が出来ている。

「文様は契約師には必要なものかもしれないが、精霊師には必要ない。精霊言語で事足りてしまうからだ。
なぜそうした文様が伝えられてきたのか、私にも理由がわからなかった。
それがこの国に残されているということは、この国にも契約師がいたということになるのだろうな」

「マカの実が発見されたことは?」

「記録の上ではある」

それは興味深い話だった。

「ご覧になったことはないのですね?」

クシールの質問に、ユアンジールは首を横に振った。

「見たことはある。アルノがマカの実を宣誓液にするところを見た。祈りの言葉は見事な精霊言語だった。
我が国の精霊師でも、あれだけ正確に精霊言語を暗唱できる者は少ない。妻にするなら、アルノしかいないと思ったが、実に残念だ」

白々しいユアンジールの言葉に、クシールはふてぶてしい微笑みで返した。
アルノにこだわるユアンジールに、トレイア国はアルノの娘を妻にする案を提示していた。
このことはアルノだけが知らない。

その話を持ち込んだのはクシールであり、ユアンジールはあっさりそれを断った。
もうアルノを返すことは出来ないと伝えてきてはいるが、ユアンジールはことあるごとにアルノを欲しがるのだ。

「非常に残念です。二人は愛し合っていますから」

それはさすがに無理があった。
ユアンジールは噴き出し、お茶のカップを取り上げて喉の調子を整えた。

「愛か。自然界における愛の定義と人の世界における愛の定義には大きな開きがある。アルノはそんなものにもう心を惑わせたりはしないだろう」

「どうでしょう?幼少時代の教育が良かったので、まだこだわりは捨てきれていないようです」

半分真実であり、半分が嘘だった。
アルノは人を信じていないし、面倒なことからはすぐに逃げてしまう。
相変わらず人としては成長しきれない子供の部分が多く、目が離せないところがある。
しかし子供が出来てからは、少しずつ他人の心に注意を払うようになってきている。

心の機微に関しては未熟な面もあるが、ニルドほど鈍くもない。

契約師であるのだから完璧である必要はない。
良い契約紙を作ってさえくれたら、あとはゼインや周りが補えばいいのだ。

「私は、彼女が聖なる山で生涯暮らしたいと言っても、構わないと思っていた。いつでも会いに行けるし、彼女の気に入った場所に宮殿を建てても良かった。もちろん、それほど豪華ではないものだが」

「何もかも与えられる環境には、慣れていなかったのかもしれません」

話しながら、クシールは膝に置いた書物を、さらにめくった。
今度はびっしりと文字が書かれているページで手を止める。

「この文字は……読めません」

「それは古代の精霊言語だ。今現在使われているものより少し複雑だ。覚える必要はない。言い回しも力の発動具合も回りくどく、現代では使えない」

「陛下は……精霊を見たことがおありですか?」

クシールが顔をあげる。
ユアンジールは美しい微笑みを讃え、お茶のカップをテーブルに戻した。

「見るのではない。そこにいるのだ。クシール、それこそが力なのだ」

その意味をクシールは正確に理解した。
信仰こそが教会の力であり、その源に精霊が存在している。

ユアンジールは扉の外に声をかけ、控えていた召使を呼び寄せると、テーブルに積み上げられている書物をクシールの部屋に運ばせた。
それは退室の合図でもある。

腰を上げたクシールが、思い出したように王から託された書簡を差し出した。
精霊の雫を求める内容に、ユアンジールは頷いた。

「なるほど、今年の受け入れは三人か。全員が精霊の雫を入手できるとは限らないが、歓迎すると伝えておいてくれ」

精霊の雫は精霊に選ばれた者にしか収穫出来ない。それ故、トレイア国から契約師が派遣され、聖なる山に登ることになっていたが、一応客人であるから精霊師の手伝いがつく。
それは精霊師と契約師を交流させ、子孫繁栄につながることを願ってのことでもあった。
なにせ、精霊師も契約師も優れた技術を持つ者であればあるほど、他人との交流を嫌うのだ。

「私のところにはアルノを来させるように」

諦めの悪いユアンジールの言葉に、半ば辟易しながらも、クシールは表情を変えず頭を垂れた。

「我が国には優秀な専属世話人がおります。簡単には奪えないとお考え下さい」

容赦のない忠告に、ユアンジールも苦笑する。
精霊王の血を継ぐ王族は長寿であり、ユアンジールは頑なな性格だった。

その日、クシールは目的の書物を手に入れ、ユアンジールはクシールと久々のおしゃべりを楽しんだ。
退室の礼をしたクシールに、ユアンジールがさらに念を押した。

「アルノが一カ月以上戻らなければ、また私に連絡をするように」

それはクシールが求めたことではなく、ユアンジールが言い出したことだった。
望みはないと言われながらも、虎視眈々と機会を狙っているのだ。
全く困ったものだとクシールは思ったが、表情には出さず、礼儀正しく微笑んだ。

「もちろんでございます」

ユアンジールの望みを叶えれば、トレイア国にも利益がある。
クシールは改めて頭を下げ、アーダン国の宮殿を後にした。


――

ノーラ山で一仕事を終えたアルノは、窓辺の机から食卓に移動し、眠そうな顔で食事を待っていた。
二日前に森から出てきて、先ほど二枚も契約紙を仕上げたばかりだった。

「今日はもう眠たい……」

「少しでも食べるべきだ」

テーブルに食事を並べ、ゼインは気が乗らない様子のアルノの手にスプーンを押し付けた。
その時、扉を叩く音がした。

「ゼイン様!大変です!ニルドが」

「ニルド?」

巨漢の戦士が誰に助けを求める必要があるのかと、ゼインの顔がひきつった。
アルノは椅子に座ったまま扉を振り返る。

ゼインが表の扉を開けた。

そこにはギライが立っていた。

「ニルドが、その」

ちらりとゼインの後ろにいるアルノを見て、ギライは少しだけ躊躇った。
それから、大きく息を吸い込みゼインに言った。

「アランがマカの実を見つけました。なかなか家に帰らたがらず、どうしても行きたい場所があるとニルドと一緒に散歩を続けていたら、突然発見したそうです。その、マカの実を発見したら森を出られないと聞いたのでご報告に……」

アランとはアルノの産んだ子供で、ゼインの息子だった。
嫌なことを聞いたとばかりに、アルノは顔をしかめてテーブルの方を向いてしまう。

マカの実を見つけたということは、契約師になる道が決まったということだ。
国に知られる前であれば、マカの実を見つけたことを隠しておけたかもしれないが、国の騎士や聖騎士のゼインにまで知られたら、もう契約師になるしかない。

幼少時代の竹鞭でぶたれた記憶が蘇り、アルノは拳を握りしめた。
口を閉ざしているアルノを振り返り、ゼインが壁にかかっているランタンを取り上げた。

「アルノ、様子を見てくる。食べたら先に休んでいてくれ」

後ろを向いたまま、アルノは頷いたが、安眠は出来なかった。
息子の発見したマカの実で宣誓液を作る必要が出来たからだ。

マカの実ばかりを収穫する人も確かに存在している。精霊書の全てを覚えるのは大変だ。
しかしマカの実を見つけたからには、その先を試す必要がある。

ゼインを待つことなく、アルノは食事を終えると、外套を身に着け外に出た。


その日から、アルノは人が変わったように静かになった。
宣誓液を完成させ、戻ったその日に竹鞭を炎に投げ捨て、それから部屋に引きこもってしまったのだ。
何か月もゼインの誘いにも乗らず、考え込むように黙り込み、淡々と仕事ばかりをして過ごした。

その間、アルノがまた森から戻らなくなり、一度ユアンジールが呼ばれる事態にもなった。

ゼインは焦ったがニルドは能天気に、そのうち機嫌が直ると言い切った。
そして冬になり、雪がたっぷりと降ったその日、ニルドがゼインを誘いに来た。

「ゼイン様、アルノは洞で宣誓液を作っています。ゼイン様も来ませんか?」

ごつい体に分厚い防寒具を着こんだニルドの言葉に、ゼインはなぜ男に誘われて外に出ないといけないのかと、嫌な顔をしたが、ニルドは既にシャベルを二本携帯していた。

「アルノを喜ばせましょう」

そう言われては断ることも出来なかった。
ニルドと共に森に出たゼインは、例の森の空き地に連れて行かれ、シャベルを一本渡された。

「滑り台を作りましょう。アルノは宣誓液を作り終わったらここに来ます。きっと喜びますよ」

その言葉に、不機嫌な顔をしていたゼインは、がぜんやる気になった。

ニルドと共に生まれて初めて雪の滑り台を作ったのだ。
大人用の滑り台であるから、子供時代に作った時のような小さいものではなかった。

大人がふたりがかりで作り始めた滑り台は、ちょうど月が出るころに完成した。
そこに、雪を踏みしめながらアルノが顔を出した。

雪まみれの男二人を見て、不思議そうに首を傾け、大きな滑り台を見て歓声をあげた。

「すごい!こんなに大きな滑り台初めて!」

少し高い場所にある空き地そのものを滑り台にして、その終着点は斜面の下の洞の前まで続いていた。

「アルノ……」

手を貸そうとしたゼインの前に、ニルドが飛び出した。

「アルノ、滑ろう!」

まさかの一番乗りで、階段をあがっていく。
それを見て、アルノが怒っておいかけた。

「ちょっと!私のために作ってくれたんじゃないの?一番は私にさせてよ!」

仕方なく、ゼインは終着点の洞の前に回った。
最初に下りて来るのがアルノであることを願い、じっと待つ。

月明りを浴び、真っ白な雪がきらきらと銀色に光っている。
固められ磨かれた雪の滑り台の表面も、つるつるして月明りを反射させている。

そこに、最近元気がなかったとは思えないほど興奮したアルノの姿が現れた。

「きゃあああ」

悲鳴を上げ、一番上から滑り降りてくる。
全く子供のようじゃないかとゼインは呆れたが、勢いよく飛んできたアルノの体を無事に抱き留めた。

「アルノ、大丈夫か?」

雪の中で転がったゼインの胸の上で、アルノは顔をあげ、にっこりと笑った。

「私、良いことを思いついたかも」

やっと見せたアルノの笑顔にほっとして、ゼインは力を抜いた。
と、背後にニルドの巨体が見えた。
作ったばかりの滑り台をへこませながら、転がり落ちてくる。

さすがにニルドの体重は支えきれない。

「うわあああっ!どいてくれ!」

ゼインはアルノを抱いて横に転がった。
そのまま洞の中にすとんと落ちる。

大きな音がして、ニルドが洞の入り口に頭をぶつけ、落ちてきた雪に埋もれて大きな雪玉のようになった。

雪の彫刻のようになって起き上がったニルドを見て、アルノは洞の中から指をさし、また明るい笑い声を立てた。
そんなアルノをしっかりと腕に抱きしめ、ゼインは心から安堵のため息をついた。


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