精霊の森に魅入られて

丸井竹

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7.男の目論見

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クスリの実とはロタ村の住人たちの間で呼ばれている名であり、本来の名前は氷雪の実だ。
冬にかかる病気はこの氷雪の実を食べれば大抵が治るといわれるほど体に良いとされている。

もちろんその成分を分析したわけではないが、宣誓液の材料であるマカの実と似た植物なのではないかとアルノは考えた。

クスリの実はやはり森の中でなければ取れない。
植えて増やすということはできないのだ。

アルノは、かごを一つ背負い、さらに腰にも一つぶら下げて、マカの実とクスリの実の収穫のため、一人で森に入っていた。

珍しく頭はすっきりとして、過去の恨みや、思い出せば悶えたくなるような恥ずかしい出来事も蘇ってこない。
それ以上に、昨夜の出来事の方がよっぽど強烈だった。

ついにゼインを契約師の専属世話人として雇い、偽りとはいえ恋人を手に入れたのだ。
完璧な美貌を間近に見て、その声が耳に届くたびに、これは夢じゃないかと考えた。

もっと早く買えばよかったと思ったが、念願の口づけに入る直前、アルノは尻込みし、今日はここまでにしようとゼインを押し返していた。
結局、ゼインは居間の暖炉前で寝て、アルノが寝室で寝ることになった。

次こそ、思いを遂げなければならないと思うが、やはりその壁はあまりにも高い。
初めての口づけがお金で買ったものでいいのか、そこにこだわってしまう。

しかし選んでいられる立場でもない。
結婚適齢期は過ぎているし、村は消滅、孤児で一人暮らし、しかも話し相手は聖職者しかいない。

生涯独身で死んでいった師匠を思い出し、老婆になってから口づけを買うよりはましではないだろうかと考える。

雪の下から、また透明なクスリの実が見つかった。
山を離れたら消えてしまうこの不思議な実は、卵型で、先が少しだけ丸く出っ張っている。

手袋を外し、身を屈めて一粒そっと持ち上げると、かごの中に入れる。
ふと目を上げると、近くの木の根元が光っている。
雪から飛び出した枝にびっしりついているのはマカの実だった。

宣誓液の材料であり、これも森の中で加工しなければならない。
加工場所は折れた古木の洞にある。

そこまではノーラ山を少し登る必要がある。
木立の密集する森から、険しい岩ばかりの道になるその途中に、折れた大木があり、その根元に洞窟のような大きな穴が開いている。

その中には歴代の師匠が使ってきたマカの実を宣誓液にするための道具が揃っている。
小さな石臼を使ってマカの実を潰し、その汁を瓶に移しとる。
不純物を最大限に抜くため、蒸留し、一滴ずつ貯めていく。

かごの中を確かめ、十分マカの実が集まったとみると、アルノはその洞がある方に向かって歩き出した。
途中で巨大な雪狼がふらりとやってきたが、アルノが首を撫でてやると、すぐにまたふいと姿を消した。

自分の息遣いばかりを聞きながら、黙々と進み、雪に半ば埋もれている洞に到着した。
雪を掘って、洞の中に滑り込む。

上部の折れている部分から、外の光がうっすらと差し込んでいる。
丸く抉れた固い地面に座り込み、壁際に並べられている道具を引き寄せ、アルノはさっそく加工の準備を始めた。

子供の頃からさせられてきた仕事であり、体がやり方を覚えている。
目隠しをされてもここでの作業が滞ることはない。

石に挟まれ潰された表皮がするりと地面に落ちる。
指が金色に染まり、種がこぼれる。

この洞にとって、マカの実を宣誓液に変えていく作業は、不変の光景に違いない。

五十年後も同じ作業をしているかもしれないと考え、アルノはちょっとだけぞっとして作業の手を止めた。

指先についた金色の汁が光りながら地面に滴っている。

契約師が王国に何人いるのかわからないが、こうしている今も、どこかで他の契約師が森や山にこもり、この作業を繰り返している。
宣誓液の質が悪ければ、それを使って作られる契約紙の質も当然悪くなる。

「審査会……」

突然、報酬が上がる可能性を秘めた審査会のことを思い出した。
欲がない契約師がそんなものに作品を出そうとするだろうか。
作業を進めながら、アルノは考えた。

無欲であれば良い契約師になれるらしいが、アルノが無欲だったことは一度もない。
精霊を信じ敬い、欲を捨て清らかな心を持てば一流になれると教わったが、現実にそんな人間がいるとはとても信じられない。

肺が凍り付きそうな冷たい空気を吸い込み、アルノは祈りの言葉を唱えだす。
これを始めたら途中で辞めることは出来ない。

吹雪の音さえも遠ざけ、アルノは作業に没頭した。




アルノの粗末な家を少しでも居心地良くしようと、家の手入れをしていたゼインは、ふと耳を澄ませた。
どこからか、不思議な音が聞こえてくる。
それは風の音のように聞こえたが、かすかな笛の音にも聞こえた。

普通の人の耳であればそうとしか聞き取れない音だった。
聖職者であるゼインには、それが何かわかった。

山のどこかで、契約師が精霊と契約するための、祈りの言葉を唱えだしたのだ。
精霊言語を学んだことのあるゼインも、その言葉を繰り返したことがあるが、本無しでその言葉を暗唱することは出来ない。

契約師は人生の全てを捧げ、膨大な量の言葉や文様を暗記するのだ。
その音も形も全てが正確でなければ、精霊たちはその祈りに応えてはくれない。

「これは……。なるほど、クシール様が慎重になるわけだ。この国で一番の契約師になれるかもしれない。彼女を育てることが出来れば……教会での私たちの地位も確実に上がるな」

その脳裏に地獄のような幼少時代が蘇る。
聖職者にするために連れてこられた孤児たちは、物として扱われる。
権力を持つ聖職者たちのために捧げられる少年たち、成績が悪いというだけで過酷な罰を与えられ、命を落とす子供達、争いの中で命を落とした仲間達。

貴族生まれの聖職者ではない限り、そうした血みどろの争いの中を生き抜かなければならない。
平穏に暮らす村の人々を横目に見ながら、過酷な契約師の修行を積まされてきたアルノもまた、理不尽な世界に怒りを抱いている。

クシールは幼稚なだけだと、簡単にアルノが伸びない要因を決めつけたが、大人になったからといって根深い恨みが消えるわけではない。
心を無にして仕事に没頭してくれるならば、アルノは確かに伸びるだろう。

巨大な雪狼を友人に持つ、精霊に愛されている娘だ。
ぱりんと音を立て、屋根から氷柱が落ちて砕けた。

地面に散らばったガラス片のような氷粒をブーツで踏むと、それは砂粒のように細かく砕ける。

この氷柱にも、精霊の力が宿っていたかもしれない。
森や山に人間を踏み込ませないための、これもまた精霊たちの策略かもしれない。

ロタ村は滅びたが、精霊が宿ると言われる空気や木々、山にある自然のものには力が蘇りつつある。
まるで羽毛のような雪がふわふわと降ってくる。
吸い込まれそうな空を見上げ、ゼインは両手を開いた。

屈辱に泣いた夜を思い出し、禿げあがった男の下品な顔を脳裏に見る。
いつかあの腹を剣で掻っ捌いてやろうと心に決めて生きてきた。

その道をきっとアルノが切り開いてくれるはずだ。

「ふっ……」

悪魔のように美しい微笑を浮かべ、ゼインは白い息を空に向かって吹き上げた。




――



薄暗い寝台の上で体を起こしたニルドは、傍らに寝ているイライザを見て、起こさないようにそっと床に下りた。
農夫出身でありながら、異例の出世を果たして騎士になったニルドは、心優しい婚約者を得たが、その関係に少し違和感を抱き始めていた。

美しいイライザとの出会いは、東モーレリア領にある国境要塞に赴いた時だった。
隣国ゴルドとの国境にある川は冬になると凍り付く。そこを渡って盗賊が入り込んでしまうため、冬になると警備を手厚くする必要があった。

イライザは領主の三番目の娘で、王都から遠征に来た騎士達に挨拶に来ていた。

貴族令嬢となれば、騎士団の上位階級の騎士達にしか関心はないだろうと思っていたのに、イライザはニルドを見て笑いかけた。
高貴な身分の女性に微笑みを向けられ、ニルドは完全に舞い上がった。

イライザ姫にもっと微笑んでもらうために、張り切って盗賊狩りに参加し、何度も手柄を立てた。

数か月の滞在の間、領主の城に招かれる機会もあり、目が合うようになり、言葉をかけてもらえるようになり、それからダンスを教わるまでの関係になった。

農夫出身であることも告白したが、イライザの態度は変わらなかった。
領主の娘と結婚したら、貴族になれるかもしれないと夢を見た。

それだけイライザはニルドに好意を持ってくれているように見えた。

三番目の娘であるイライザは、家族にあまり構われてこなかったため、甘えたがりで、ニルドといつも一緒に居たがった。
さらに婚前交渉にも積極的で、ニルドは半ば襲われるように体の関係まで持ってしまった。

さすがに処刑されるのではないかと震えあがったが、誰にも咎められることはなかった。
イライザは、ニルドとの関係を家族に反対されなかったことに少しショックを受けた様子だった。

そこで少しニルドは不安になった。
イライザ姫は家族を振り向かせるために、ニルドと付き合っているだけではないかと思ったのだ。

ところが、意地を張るかのようにイライザはニルドと婚約すると言い出した。

現実的な面を考え、ニルドは困惑し仕事に逃げた。
東モーレリア国境を離れる時、一応口約束の婚約はしたが、それが実現できるかどうか本当にわからなかったのだ。

しかしイライザ姫からは手紙が来るし、早く会いたいと書かれていれば、会いにいかないわけにはいかない。
純粋に自分に好意を持ってくれていることはうれしいし、貴族でなければ喜んで付き合いたい女性ではあった。

イライザは家族と離れて自分の屋敷に住んでおり、二人は誰に遠慮することもなく愛し合うことが出来た。
貴族の娘の肌は吸い付くようになめらかで、甘い良い香りがした。
さらに柔らかく、苦労知らずの手はいつまでも触れていたくなるほど触り心地が良かった。

最高に贅沢な気分にもなれるが、いざ今後のことを話し合おうとすると、必ず喧嘩になってしまう。

家族に構われたいイライザは、どうしても自慢できるような結婚がしたいのだ。
しかし身分的にニルドにその要望を叶えてあげることは出来ない。

結論が出ないまま、休暇を終え、ニルドは所属騎士団に戻ることになる。

結婚適齢期のイライザのことを考えれば、このままでいるわけにもいかない。
イライザが希望する豪華な式も、挙式後の住まいも、ニルドには用意できない。
当たり前にイライザが身に着けている装飾品も、一つだってニルドには買えない。

純粋で愛らしい姫だと思うが、ニルドはその全てを守っていけるか自信がない。
騎士になったのだから、屋敷はあるが、領主の城のような立派なものではないし、召使だって何十人も用意出来ない。

着替えや風呂に召使がいないと困ると言われ、ニルドが手伝わなければならないぐらいなのだ。

イライザとの結婚話は、何もかもが現実的ではない。

「ニルド?」

甘い声がニルドを呼んだ。
ニルドはズボンを履いて、寝台に近づいた。
イライザ姫の寝室は豪華で広い。

寝台一台だって、ニルドが王都で手に入れた屋敷のどの部屋にも入らない。

「イライザ姫……」

寝台に座ると、小さな白い手がニルドの股間に伸びてきて、やわらかく包み込む。

「姫……」

「不思議なかたち」

その手を取り上げ、ニルドはイライザの隣に入り込む。

一族に放っておかれている姫は、ひたすらにニルドにしがみつき、ここから連れ出してほしいと訴える。

もし結婚出来たとしても、屋敷に待たせたままにしておけば、寂しいと泣かれることになるだろうし、召使が足りないと文句を言われても、無い袖は振れない。

ふと、住人がいなくなった雪山で、一人で暮らしているアルノのことを思い出した。
誰に頼ることなく、教会からもらう仕事だけを頼りに、一人で生き抜いている。

貴族社会であれば、絶対に考えられないことだ。
女性は保護され、誰かに所有されていなければならない。

アルノであれば、仕事で何か月も家を空けたとしても、黙って待っていてくれるだろうと、ニルドは密かに考えた。


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