聖なる衣

丸井竹

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22.女の闇

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「エリンは?それで、エリンは大丈夫なのですか?」

知らせを受けて飛んできた男は、息子の無事を確認すると、ロベルに問いかけた。
剣で切り付けられ、馬に踏みにじられた女は重傷で、面会はできなかった。
騒ぎに気づいた門番たちが駆け付け、暴走する馬を止めるまで、女は地面に放置されていた。

身分の高い子供が相手では、その後の始末も面倒だった。
レオの父親がやってきて、女が馬を驚かせたせいで、息子が死にかけたと言い出した。
口を封じるつもりで治療を受けさせるなと声高に命じてきたのだ。

そこに入ってきたのは女の作品の顧客である上位騎士のレイフ・リンゴードだった。
王の間での立ち位置としては、レイフ・リンゴードは王の隣に並ぶ権利を持つ騎士であり、レオの父親は広間にも入れないような立場だった。
ちょうど次の注文のために教会を訪れていたレイフは、走り込んできたロベルに事情を聞き激怒した。

「彼女に怪我を負わせるとは、とんでもないことをしてくれた。王女殿下は、彼女の作品を隣国への贈り物に選ばれている。作品を作れなくなったらどうするつもりだ!」

レイフのその言葉で、やっと本格的な治療が始まった。
西の要塞に集められていた一流の治癒師や薬師が呼ばれ、女のいる教会の奥の棟に詰めかけた。

即座にレイフは連れてきた部下達にレオと父親を拘束し、西要塞の牢獄に収容するよう命令した。
レイフは女の治療を見守るため、奥の棟に留まった。

「レイフ様の指示のもと、治療は始まっていますが、命が助かるかどうかはわかりません。
生きていたこと自体、奇跡だといわれました。
軍馬の足にしがみつき、ルカを追わせまいとしたようです。背中に傷を負っていたため、出血もひどく、とにかく……奇跡を祈るしかないと」

無傷だった息子は震えながら泣き出した。その体を抱きしめ、男は心の痛みに必死に耐えた。

「彼女は……母親だったのですね。だから……」

その言葉をロベルはぴしゃりと遮った。

「あなたより、彼女の方が先に親になった。それだけは忘れないでください。子供を手放したことがあるのはあなただ。彼女は一度だって、自分の子供を愛さなかったことはない」

息子の扱いに困り、寄宿学校に入れたことを男は思い出した。
確かにそれを判断したのは男だった。
突然出来た息子に戸惑い、愛情を注いで世話をしていないように見えた女から取り上げたが、老いた両親に任せきりで、ついに寮に入れた。

「心を入れ替え、あなたは良い父親になった。だけど、あなたは彼女の愛を知らない」

子供の前で話すことではなかったが、ロベルも感情的になっていた。
取り返しのつかないことになるところだった。
震える手をより合わせ、ロベルは沈痛な表情でルカを休ませていた教会の小部屋を出た。

そこに門番が走ってきた。

「ロベル様、あの、出入りを禁止したヴィーナが来ています。娘の容態を知りたいと……」

どこで情報を仕入れたのかと、ロベルは不審な顔をした。
しかしヴィーナはエリンの母親だ。
娘を本気で心配する気があるのか甚だ疑問だったが、本当に母親が子供を心配して駆け付けているのであれば、会わせないわけにはいかない。

「わかった。会おう。祈りの間に通しなさい。今、そこには誰もいないな?」

「はい。訪問客は全て帰らせました。無人です」

ロベルは頷き、憂鬱な溜息をついて廊下を歩きだした。


 教会の小部屋に残された息子は、父親にすがりついた。
息子は先ほどのロベルの言葉を聞いていた。

「父さんは……僕を手放したかったんだね。寂しかったことを覚えているよ……」

「償いが出来ていればいいが……俺の覚悟が足りなかった。彼女とは結婚もせずにお前が生まれ、俺は父親になるとは思ってもいなかった。
だけど、お前を見た時、俺は強い絆を感じたし守らなければならないと思った。
俺が思うような愛情を彼女が子供に注いでいないように見えて、俺はとにかくお前を守ろうとした。だけど、それは……俺の自己満足であり、お前の幸せや、彼女のことを考えてのことではなかったのだと思う……」

「最初は寂しかったけど、寮は楽しかったよ。家よりはね……。仲間もいたしね……」

穴の開いた靴を履いていたのは息子だけではなかった。

「俺が感情に任せて、お前と彼女を引き離さなければ、うまく家族として関係を深めていけたのではないかとずっと後悔していた」

息子がまた泣きじゃくりだした。

「どうしよう。あの人が死んじゃったら……僕のせいでしょう?」

その背中を抱きしめ、男は息子を慰めた。

「大丈夫だ。国で一番腕の良い治癒師や薬師の方々がみて下さっている。しかも王女様に仕える立派な騎士様が傍にいる。もし……駄目だったとしても、それは彼女の意思だ……」

「僕、祈りに行きたい……」

濡れた顔を上げた息子に、男は優しく微笑んだ。



 祈りの間には先客がいた。
エリンが死にかけていると知って駆け付けたヴィーナだった。

足を投げ出し、祭壇の前に置かれた椅子に座るヴィーナは、憮然とした表情だった。
ロベルが入って来て、祭壇の横に立った。

「エリンは瀕死の重傷で面会は出来ません」

「確認したいのだけど、死んだら娘の財産は親のものよね?」

ロベルは首を振って、ため息をついた。

「そういうことならお引き取り願おう。今、この場には彼女の無事を願う者しか必要ない」

「簡単に追い払わないでよ。私だって母親よ?本気で心配しているのよ。私だって、あの子が好きだったわ。
昔は可愛くて、素直で、とてもいい子だった。それなのに、急に色気づいて私の男を寝取ったのよ。まぁ、本当に寝取ったとは信じていないけど、嫌な言葉を覚えて、私から夫を引き離そうとした。いつまでも子供で、母親を独占したがったのよ。私にだって幸せになる権利があるっていうのに、別れて欲しいとばかり言い始めて。
追い出してやったら、私の男も出ていって、それっきりよ。二人で逃げたのなら殺してやろうと思ったけど、今度は墓の男に手を出したのね。墓に居ついて、本当に気持ち悪い子。
私の物を全部欲しがるのよ。女になってからどんどん私の欲しかった娘は壊れていく」

ぺらぺら話していたヴィーナは、不意に口を閉じた。
恐ろしい形相で、ロベルはヴィーナを睨んでいる。

「なぜ信じなかったのです?信じたから追い出したのでは?」

「何よ……」

「エリンの言葉を本当に信じなかったのですか?あなたはわかっているはずだ。確かにあの時、あなたが一緒に住んでいた男性はとても見た目が良かった。顔かたちだけが良い悪魔だった。まだ恋もしらない少女や、頭の軽い女性が好きになるにはぴったりの姿だった」

「悪魔じゃないわよ!あの子にだって父親は必要でしょう?墓に置いてきた娘をわざわざ引き取って父親になってもいいと言ってくれたの。とても優しくてお金持ちだったわ。
あの子だってちゃんとなついて、お行儀よく暮らしていた。それなのに、突然色気づいて、私の夫を奪おうとした。でも私は母親だから、一応気にかけているわ。ここにも来たし、財産も欲しいけど心配もしている」

「冗談じゃない!」

神官とは思えないような凄みのきいた大声でロベルは叫んだ。
込み上げる怒りに任せ、ロベルは心に封じてきた地獄の蓋を開けた。

「さっきから不愉快だ。あなたが母親?冗談じゃない。あなたは母親ではない。
母親であるのならば、あの悪魔が、エリンに何をしたのか知らなかったわけがない。
あの悪魔は、まだ子供の彼女を裸にし、仲間達で弄んで金をとっていた!あなたに愛されなくなる、あなたに捨てられる、そうやって脅され彼女はあなたの傍にいるために、あなたを悲しませないために耐え続けた。
母親であるあなたの愛欲しさに、彼女は脅されるままに子供の体を汚され、ついに子供を身ごもった!」

女になった娘が夫を寝取ったと本気で信じてきたヴィーナは絶句したが、すぐにそんなわけがないとその言葉を否定しようとした。

「う、嘘よ……まさか。そんなこと……。ばかな。だって、あれはまだ十歳……いやもう少し上だったけど、子供で……」

「気づいていたはずだ。彼女が耐えきれなくなってあなたに相談した。あなたは気持ち悪いと彼女の相談を跳ねのけ、自分の男を奪う気かと追い出した。何年も、耐え続けたことをなぜ耐えられなくなったかわかりますか?彼女は母親に愛されることを諦めた。
なぜなら、彼女は母親になったからです。お腹の子供が殺されるかもしれないと夜中に教会に飛び込んできた。
すぐにラバータが駆け付けた。まだ子供で、まさか妊娠しているなんて思いもしなかった。
やっと女性の体になったばかりの幼い彼女が、出産するのは無理だった。
医学的に無理だと治癒師がそう告げた。彼女は産むと泣いて、泣いて……。命を諦めた。いまだに、死んだ子供を愛し続けている。
この教会の敷地内には多くの棺桶が埋められている。どれもこれも美しく心が温かくなるような彫刻が施されている。
彼女の子供が冷たい地面の下にいる。だから、彼女は死んだ人のために美しい絵を棺に描く。死の世界で待つ彼女の子供がその景色をみられるように。それから、一人ぼっちの子供が優しい人と出会えるように」

激情の迸るまま、ロベルは声を絞り出し、ヴィーナになぜわからないのかと訴えた。

「彼女は苦しんでいる。母親であるために心の底から苦しみ抜いている。あなたに、それだけの覚悟があって母親だと言っているのか?彼女がルカを生んだ時、私はこれでやっと新しく生き直せると期待した。死の世界に寄り添い、いつまでも死んだ子供を愛し続ける彼女が、幸せになれるように願った。それなのに、彼女の苦しみはさらに深まった。
弟は母に抱かれ、乳をもらい、世話をやかれその腕に抱きしめてもらえるのに、土の下にいる最初の子供は、それを寂しく見ているだけなのだと考え始めた。
二人目の娘が生まれた時、彼女は死んだあの子に悪いから、愛してくれる夫婦にあげて欲しいと私に頼んだ。あの子がやきもちを焼くかもしれないと言って、彼女は娘を手放した。
息子には愛を注いでくれる父親がいる。娘は裕福な家庭にもらわれていった。
だから、彼女は愛をもらえなかった死んだ子供に寄り添っている。一生そうやって生きるのだと決めている。
あなたが、エリンの母親として命がけで彼女の幸せを考えてくれたなら、こんな悲劇は防げた。自分の幸せを優先し、エリンから目を背けた!
そんな、自分の幸せのために子供を犠牲にする女性をエリンと同じ母親とは呼びたくない!」

青ざめ、言葉を失ったヴィーナはそれでもまだ、自分を正当化する言葉を探した。

「で、でも私は本当に知らなかった……」

「そうでしょうか?あの悪魔は子供が流れたのなら、エリンをまた返してくれとのこのこ現れた。母親の愛を餌にすれば、簡単に自分の言いなりになると信じ切っていた。そして、あなたもまた、自分の言いなりに子供を貸してくれると言っていた。
男に遊びに連れていって上げると言われ、エリンを何度貸し出しました?そのたびに、エリンは心を殺され、体を汚された。それでもあなたが楽しかった?とにこにこ聞けば、泣きそうな顔で頷いたはずだ。あなたを喜ばせるために頑張ったはずだ。
あの男に酷いことをされていると言えば、あなたが悲しむとわかっていた。
それに、あなたに嫌われることを恐れていた。エリンが耐え続けたから、あなたは知らないふりをし続けることができた」

怒りに駆られ、叫び続けたロベルは椅子を引き、崩れるように座り込んだ。

「あなただけを糾弾することは出来ない。私も罪を犯した……。彼女に子供をおろすように説得を続けたのは私だ。悪魔のような男達の子供を産むために、エリンが命を落とすなんて耐えられなかった。私が耐えられなかった。
彼女はそれでもたった一人の家族だから、どうしても産みたいと訴えていた。
誰の子であっても、愛し抜けると言い続けた。私は、まだ若い母親が一人では育てられないから、ラバータの協力なしには無理だと言った。
ラバータは正式にエリンを養女にする気だった。だけど、悪魔の子供は育てられないと考えていた。それで……エリンに知られないように薬を食事に混ぜた……。
出血が始まり、彼女は苦しんで、地面で転げまわり、血まみれになって助けて欲しいと訴えた。助けるふりをして、子供を見殺しにした」

ロベルは祭壇に目をやった。
金糸の刺繍糸が編み込まれた藍色の布に覆われた祭壇の上には、大小さまざまなろうそくが並び、中には何年も炎を灯していないものもあった。

「彼女は、まさか自分の子供が殺されたとは思わず、若さ故に産んであげられなかったのだと納得した。そして、子供のために捧げようと、ここにこの蝋燭を持ってやってきた。そして、ラバータが……堕胎薬を入れてエリンの子供を殺したと告白しているところを聞いてしまった。蝋燭を床に落とし、彼女は出ていった。
誰にも望まれず殺されてしまった自分の子供が、哀れで仕方がなかったのだ。
ラバータとも師匠と弟子の関係のままだった。口をきかなくなり、笑顔もなくなり、ただ死んだように生きるばかりになった。生涯を通して、私は過ちを償っていかなければならない。
ヴィーナ、あなたは、目をつぶってしまった罪から逃れることは出来ない。
だから、償うしかない。この話をもし外で言いふらし、彼女の名誉を貶めるというならば、私はあなたを許さない。私はただただ、彼女の心を救いたい。神がいるのかと私は、初めて疑問に感じた」

静まり返った祈りの間の入り口は布のカーテンで仕切られている。
その少し後ろに扉があり、そこは祈りの間に入る前に気持ちを落ち着かせる場所になっていた。
そこにエリンのために祈りに来た男と息子が立っていた。
カーテン越しにロベルの声は全て聞こえてしまっていた。
あまりにも衝撃的な内容に、男は息子の耳を塞ぐことも忘れていた。

男はポケットから馬の彫刻を取り出し、蹄の裏に刻まれた名前らしき文字を確かめた。

『リース』

不意に、これまで女から聞いた数少ない言葉の数々が蘇った。

『あの日、雨の中であなたは新しいお墓の前にいた。あなたの恋人のために、私は白い花の絵を棺桶に刻んだ。暗い地面の下には花が咲き、故人が愛した時間や景色がある。
棺桶が穴に下ろされていくたびに、私は地面の下にそんな景色を思い描く』

『棺桶も必要よ。世界で一番美しい物を作りたいといつも思っている』

『うれしいの。たくさんの人がこの作品を目にしてくれることが。大切にしてもらえたら、ずっと残るでしょう?』

全て、亡くなった子供のための言葉だったのだ。
身なりを整え出したのも、子供の名前を刻んだ作品を多くの人に愛してもらうために、作者もその作品に相応しい装いをするべきだとロベルが説得したのだ。

「そんなの知らないわよ」

沈黙の中、不意に震えるようなヴィーナの声がカーテン越しに聞こえてきた。



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