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29.不思議な夢と夫と愛人
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「シーリア!」
叫びながら飛び込んできたのはヴェイルスだった。ぐったりとしたシーリアの体を床の上に見つけると、手を突きだし、のしかかっていた男の体を吹き飛ばした。
ヴェイルスは光に溢れる部屋を見回した。
リーアンは上半身を寝台の縁に押し付け、尻を上げたまま寝台につっぷしている。
後ろでリーアンの尻を掘っていたと思われる男が下半身を露出したまま顔を腕で隠し、必死に起き上がろうとしている。
ひっくりかえった巨大な女がぶよぶよの足を投げ出し、股間を晒したまま自分を助けろと必死に誰かに命じている。
周りの男達は視力を失い手探りでうろうろと歩き回っている。
ヴェイルスは床に落ちて燃えている羊皮紙を発見した。近づくと、それは魔法契約書であり、リーアンを隷属の魔法で縛っていたものだった。
魔法の効力があり、炎に投げ入れても燃えるようなものではなかったのに、それは炎に飲まれ、あっという間に塵となった。
契約主が死んだのかと思ったが、ベテーネはやっと集まってきた手下の男達に支えられ体を起こしたところだった。契約者のベテーネが生存しており、解除していないのであれば、その効力を破ったのはシーリアしかいない。
ヴェイルスはそう確信し、シーリアを見おろした。その手に金のペンが握られているのを見つけ、ヴェイルスは取り上げようとした。
しかし、ヴェイルスがペンに触れようとした瞬間、それはあっという間に消え去った。
階下から大勢の足音が迫ってきた。いつの間にか部屋に溢れていたまばゆい光は消えていた。
ヴェイルスは戸口の前を開けた。
入ってきたのは王国の騎士達だった。先頭で飛び込んできた第三騎士団ユリウスがリーアンの体をベテーネの手から奪い取った。
「リーアン、もう大丈夫だ」
その声を聞いた途端、リーアンは後ろを振り返りシーリアの姿を探した。
「シーリア様は?シーリア様は!」
「ここにいる」
答えたのはヴェイルスだった。シーリアはヴェイルスの腕の中で意識を失ったようにぐったりとしていた。リーアンは、その姿を目にすると、ほっとしたように崩れ落ちた。
「申し訳ありません。わ、私のせいで……シーリア様を危険な目に……」
悔しそうに肩を落としたリーアンの体にユリウスがマントをかけた。
その部屋にいたベテーネを始め、手下の男達は騎士達の手により捕縛されていた。国王の騎士達に引っ立てられていきながらベテーネは叫んだ。
「奴隷は奴隷だ!私のものだ!リーアン!命を断て!いますぐ死ぬのだ!」
隷属の契約が生きていれば、その命令は有効だった。
ベテーネの命令は当然リーアンの耳に入ったが、リーアンは動かなかった。リーアンは先ほどまで自分の意思に関係なく動いていた手足が全く動かないことに驚き、両手を見おろした。
自分の首を絞めようともしなければ、短剣を探し、体を引き裂こうともしなかった。
「隷属の契約は未遂だった。危ないところだったな」
ヴェイルスだった。驚いたようなリーアンに視線を合わせ、黙っていろというように睨みつける。リーアンは口元を引き締め、かすかに頷いた。
悪党が全員連れていかれ、ユリウスがリーアンを支えながら外に連れ出すと、部屋にはヴェイルスとその腕に抱かれたシーリアが残った。
ヴェイルスはその場で起こった不可解な力の痕跡を慎重に消しながら、他に変わったものはないかと床の上に目を走らせた。
王都に向かう街道を遠く外れた廃墟となった教会から迸った光は、騎士達も目にしたはずだった。
騎士団よりはやく駆け付けられたことは良かったが、不可解なことが多すぎる。隷属の契約書を無効化したことが国に知らたら大変なことになるだろう。ヴェイルスは今起きた現象をどこまでごまかせるだろうかと考えながら部屋を出た。
外では騎士団が待機しており、罪人の護送のため半数が既に出立していた。
馬車の前に立ってヴェイルスとシーリアが出てくるのを待っていたリーアンはもう全裸ではなかった。
ユリウスに与えられたシャツを着て、下半身にはマントを巻いていた。
恐ろしい恥辱の中にあったというのに、リーアンは恥じる様子もなく真っすぐに立っていた。
その目はヴェイルスの腕に抱かれる意識を失ったままのシーリアに向けられている。
ヴェイルスは馬車に乗り込むと、リーアンに同乗を許した。
既に真夜中であり、かなり前方を行く騎士達が掲げる灯りが地上の星のように窓の外に見えていた。
馬車はゆっくりロンダの町を目指して進み始めた。
シーリアはまた奇妙な夢の中にいた。
言止めの最高峰と呼ばれる永伝師のラフィーニアが必死に分厚い本に何かを書いていた。インク壺にも浸していないペン先は紙の上に金色の文字を刻み、それはすぐに黒い文字に変わった。
何か焦っているのか、指先が震え、ペン先が飛ぶようにページの上を走っている。
数ページをあっという間に文字で埋めると、ペンを置いたタイミングで扉が開く音がした。
ラフィーニアは急いで分厚い本を抱えて部屋の奥に逃げると棚の裏に押し込めるようにそれを隠した。
それからその上に他の書物を重ね、寝室に逃げた。
「ラフィーニア」
入ってきたのは恰幅の良い男で、この国の王だった。
「陛下……」
まるで今さっき、目が覚めたというようにラフィーニアが寝室の扉を開けた。
「次回の永伝師の試験でもその席に相応しいものが見つからなければ、魔力の高い男を連れてくる。名簿は確認したか?」
新しい男を連れてくると言いながら、王はラフィーニアの腰を抱き寄せていた。
「霊薬師のヴェイルス様をお願いします」
顔を王から背けたまま、ラフィーニアは静かに告げた。
その瞬間、シーリアは飛び起きた。辺りは真っ暗で景色は一変していた。
「何をしている?」
暗がりからヴェイルスの声がして、シーリアは手探りでヴェイルスの体を探した。
「何をする!」
寝台横のランプに灯りがはいると、シーリアは眩しそうに手をかざした。
そこはヴェイルスの部屋の寝台の上だった。
シーリアはヴェイルスの隣で眠っていたのだ。
「ヴェイルス様、大変です。呼ばれますよ。ラフィーニア様がヴェイルス様を指名しました。その、たぶん、会えます」
「何を言っている」
「夢を見ました。ラフィーニア様の部屋の夢、棚の一番奥に分厚いノートが隠されていて、中身はわかりませんが、ラフィーニア様はヴェイルス様を連れて来て欲しいと王様に言っていました」
「支離滅裂でわけがわからない。とにかくノートに書け。言止めだろう?」
ヴェイルスはテーブルの引き出しから紙を一枚引っ張り出すと、インク壺を出してペン先をその中に浸した。
そのペンを受け取り、シーリアは紙にペン先を置いた。
シーリアが夢で見た物を書こうと思うだけで、そのペン先が自然に動き出した。金色の光を放ち、刻まれた文字が黒に変わる。
夢中で書き綴り、シーリアはヴェイルスに差し出した。
前開きの夜着を肩にかけたヴェイルスは相変わらず煽情的ななまめかしさだった。
しかしシーリアはヴェイルスの魅力的な裸に見惚れたりしなかった。
落ち着かない様子で辺りを見回し、何かを忘れているような気がするというように両手を組んでよじり合わせた。
ヴェイルスは険しい表情でシーリアが書いたものを頭の中で映像として見た。
「シーリア、永伝師の試験があるのは知っていたのか?」
「まさか、知りませんよ。いつですか?試験の後にと言っていましたよ。
私、最近おかしいと思っていて、すごく自分の気持ちがわからなくなる時があるのです。記憶もすごく曖昧になるし……あっ、そういえばリーアンはどうなりました?あれ?!私、いつからここにいます?どこからが夢ですか?」
ようやくさらわれていたことを思いだしたように、騒ぎ出したシーリアを眺め、ヴェイルスは腕をつかんで引き寄せた。
シーリアはどうにもじっとしていられない様子で体を小刻みに震わせている。
「お前が娼館に留まったと聞き、俺が探しに出た。
まさかこんな強引なやり方でリーアンを取り戻しにくるとは思わなかったが、すぐにレーテ商会のベテーネの仕業だとわかったからな。
王都に連絡を取り、騎士団を要請し、お前を追いかけた。ちょうど彼らも調査中の案件で、こちらに向かっているところだったらしい。真夜中になったところで何の灯りもない場所から突然稲妻のような強い光が見えた。
俺が最初に廃墟の教会に入り、あとからその光を見つけた騎士団が入ってきた。
リーアンは救出され、お前をさらったレーテ商会の人間たちは皆捕まった。
彼らは表の商売を隠れ蓑にして裏でいろいろあくどいことをしていたようだ。
騎士団が彼らを連れていき、リーアンも保護された。
あの部屋で気を失っていたのはお前だけだ。何があったか説明できるか?あの光を放ったのはお前か?言止めの力だろう?ペンはどこにやった?」
思い出したように、シーリアは表情を変え、ヴェイルスに視線を向けた。
「そうです。ペンです。金色のペンが私の手の中に現れたのです。実はそれが現れるのは二度目で……。たぶんですけど、何かを書いたと思うのですが、意識がないのです。まるで私ではないような……ヴェイルス様、私、リーアンが好きなのかもしれません」
「そうだろうな」
あれだけリーアンを助けることに固執しておきながら、それに気づいていなかったのだろうかと、ヴェイルスはその鈍さに感心したようにシーリアを見返した。
シーリアは眉間にしわを寄せ、難しい顔をしたまま、首をひねった。
「でも、ヴェイルス様も好きです。なんでしょう。もう、私の心はどうなっているのかさっぱりわからないのです」
「だから言っただろう?俺とは遊びだ。結婚はまた別だ。俺と遊びたがらない女はいないからな。その程度の容姿で俺に相手をしてもらえることを感謝した方がいいな」
ヴェイルスはシーリアを抱き寄せ、寝台に押し倒した。
「夫のいる身だな?どうする?俺に抱かれたいか?」
シーリアは顔を輝かせた。どうしてもヴェイルスが欲しいのだ。
「本当ですか?抱いてください!ヴェイルス様から言って下さるなんてめったにありませんから」
灯りが消え、寝室は再び闇に包まれた。
叫びながら飛び込んできたのはヴェイルスだった。ぐったりとしたシーリアの体を床の上に見つけると、手を突きだし、のしかかっていた男の体を吹き飛ばした。
ヴェイルスは光に溢れる部屋を見回した。
リーアンは上半身を寝台の縁に押し付け、尻を上げたまま寝台につっぷしている。
後ろでリーアンの尻を掘っていたと思われる男が下半身を露出したまま顔を腕で隠し、必死に起き上がろうとしている。
ひっくりかえった巨大な女がぶよぶよの足を投げ出し、股間を晒したまま自分を助けろと必死に誰かに命じている。
周りの男達は視力を失い手探りでうろうろと歩き回っている。
ヴェイルスは床に落ちて燃えている羊皮紙を発見した。近づくと、それは魔法契約書であり、リーアンを隷属の魔法で縛っていたものだった。
魔法の効力があり、炎に投げ入れても燃えるようなものではなかったのに、それは炎に飲まれ、あっという間に塵となった。
契約主が死んだのかと思ったが、ベテーネはやっと集まってきた手下の男達に支えられ体を起こしたところだった。契約者のベテーネが生存しており、解除していないのであれば、その効力を破ったのはシーリアしかいない。
ヴェイルスはそう確信し、シーリアを見おろした。その手に金のペンが握られているのを見つけ、ヴェイルスは取り上げようとした。
しかし、ヴェイルスがペンに触れようとした瞬間、それはあっという間に消え去った。
階下から大勢の足音が迫ってきた。いつの間にか部屋に溢れていたまばゆい光は消えていた。
ヴェイルスは戸口の前を開けた。
入ってきたのは王国の騎士達だった。先頭で飛び込んできた第三騎士団ユリウスがリーアンの体をベテーネの手から奪い取った。
「リーアン、もう大丈夫だ」
その声を聞いた途端、リーアンは後ろを振り返りシーリアの姿を探した。
「シーリア様は?シーリア様は!」
「ここにいる」
答えたのはヴェイルスだった。シーリアはヴェイルスの腕の中で意識を失ったようにぐったりとしていた。リーアンは、その姿を目にすると、ほっとしたように崩れ落ちた。
「申し訳ありません。わ、私のせいで……シーリア様を危険な目に……」
悔しそうに肩を落としたリーアンの体にユリウスがマントをかけた。
その部屋にいたベテーネを始め、手下の男達は騎士達の手により捕縛されていた。国王の騎士達に引っ立てられていきながらベテーネは叫んだ。
「奴隷は奴隷だ!私のものだ!リーアン!命を断て!いますぐ死ぬのだ!」
隷属の契約が生きていれば、その命令は有効だった。
ベテーネの命令は当然リーアンの耳に入ったが、リーアンは動かなかった。リーアンは先ほどまで自分の意思に関係なく動いていた手足が全く動かないことに驚き、両手を見おろした。
自分の首を絞めようともしなければ、短剣を探し、体を引き裂こうともしなかった。
「隷属の契約は未遂だった。危ないところだったな」
ヴェイルスだった。驚いたようなリーアンに視線を合わせ、黙っていろというように睨みつける。リーアンは口元を引き締め、かすかに頷いた。
悪党が全員連れていかれ、ユリウスがリーアンを支えながら外に連れ出すと、部屋にはヴェイルスとその腕に抱かれたシーリアが残った。
ヴェイルスはその場で起こった不可解な力の痕跡を慎重に消しながら、他に変わったものはないかと床の上に目を走らせた。
王都に向かう街道を遠く外れた廃墟となった教会から迸った光は、騎士達も目にしたはずだった。
騎士団よりはやく駆け付けられたことは良かったが、不可解なことが多すぎる。隷属の契約書を無効化したことが国に知らたら大変なことになるだろう。ヴェイルスは今起きた現象をどこまでごまかせるだろうかと考えながら部屋を出た。
外では騎士団が待機しており、罪人の護送のため半数が既に出立していた。
馬車の前に立ってヴェイルスとシーリアが出てくるのを待っていたリーアンはもう全裸ではなかった。
ユリウスに与えられたシャツを着て、下半身にはマントを巻いていた。
恐ろしい恥辱の中にあったというのに、リーアンは恥じる様子もなく真っすぐに立っていた。
その目はヴェイルスの腕に抱かれる意識を失ったままのシーリアに向けられている。
ヴェイルスは馬車に乗り込むと、リーアンに同乗を許した。
既に真夜中であり、かなり前方を行く騎士達が掲げる灯りが地上の星のように窓の外に見えていた。
馬車はゆっくりロンダの町を目指して進み始めた。
シーリアはまた奇妙な夢の中にいた。
言止めの最高峰と呼ばれる永伝師のラフィーニアが必死に分厚い本に何かを書いていた。インク壺にも浸していないペン先は紙の上に金色の文字を刻み、それはすぐに黒い文字に変わった。
何か焦っているのか、指先が震え、ペン先が飛ぶようにページの上を走っている。
数ページをあっという間に文字で埋めると、ペンを置いたタイミングで扉が開く音がした。
ラフィーニアは急いで分厚い本を抱えて部屋の奥に逃げると棚の裏に押し込めるようにそれを隠した。
それからその上に他の書物を重ね、寝室に逃げた。
「ラフィーニア」
入ってきたのは恰幅の良い男で、この国の王だった。
「陛下……」
まるで今さっき、目が覚めたというようにラフィーニアが寝室の扉を開けた。
「次回の永伝師の試験でもその席に相応しいものが見つからなければ、魔力の高い男を連れてくる。名簿は確認したか?」
新しい男を連れてくると言いながら、王はラフィーニアの腰を抱き寄せていた。
「霊薬師のヴェイルス様をお願いします」
顔を王から背けたまま、ラフィーニアは静かに告げた。
その瞬間、シーリアは飛び起きた。辺りは真っ暗で景色は一変していた。
「何をしている?」
暗がりからヴェイルスの声がして、シーリアは手探りでヴェイルスの体を探した。
「何をする!」
寝台横のランプに灯りがはいると、シーリアは眩しそうに手をかざした。
そこはヴェイルスの部屋の寝台の上だった。
シーリアはヴェイルスの隣で眠っていたのだ。
「ヴェイルス様、大変です。呼ばれますよ。ラフィーニア様がヴェイルス様を指名しました。その、たぶん、会えます」
「何を言っている」
「夢を見ました。ラフィーニア様の部屋の夢、棚の一番奥に分厚いノートが隠されていて、中身はわかりませんが、ラフィーニア様はヴェイルス様を連れて来て欲しいと王様に言っていました」
「支離滅裂でわけがわからない。とにかくノートに書け。言止めだろう?」
ヴェイルスはテーブルの引き出しから紙を一枚引っ張り出すと、インク壺を出してペン先をその中に浸した。
そのペンを受け取り、シーリアは紙にペン先を置いた。
シーリアが夢で見た物を書こうと思うだけで、そのペン先が自然に動き出した。金色の光を放ち、刻まれた文字が黒に変わる。
夢中で書き綴り、シーリアはヴェイルスに差し出した。
前開きの夜着を肩にかけたヴェイルスは相変わらず煽情的ななまめかしさだった。
しかしシーリアはヴェイルスの魅力的な裸に見惚れたりしなかった。
落ち着かない様子で辺りを見回し、何かを忘れているような気がするというように両手を組んでよじり合わせた。
ヴェイルスは険しい表情でシーリアが書いたものを頭の中で映像として見た。
「シーリア、永伝師の試験があるのは知っていたのか?」
「まさか、知りませんよ。いつですか?試験の後にと言っていましたよ。
私、最近おかしいと思っていて、すごく自分の気持ちがわからなくなる時があるのです。記憶もすごく曖昧になるし……あっ、そういえばリーアンはどうなりました?あれ?!私、いつからここにいます?どこからが夢ですか?」
ようやくさらわれていたことを思いだしたように、騒ぎ出したシーリアを眺め、ヴェイルスは腕をつかんで引き寄せた。
シーリアはどうにもじっとしていられない様子で体を小刻みに震わせている。
「お前が娼館に留まったと聞き、俺が探しに出た。
まさかこんな強引なやり方でリーアンを取り戻しにくるとは思わなかったが、すぐにレーテ商会のベテーネの仕業だとわかったからな。
王都に連絡を取り、騎士団を要請し、お前を追いかけた。ちょうど彼らも調査中の案件で、こちらに向かっているところだったらしい。真夜中になったところで何の灯りもない場所から突然稲妻のような強い光が見えた。
俺が最初に廃墟の教会に入り、あとからその光を見つけた騎士団が入ってきた。
リーアンは救出され、お前をさらったレーテ商会の人間たちは皆捕まった。
彼らは表の商売を隠れ蓑にして裏でいろいろあくどいことをしていたようだ。
騎士団が彼らを連れていき、リーアンも保護された。
あの部屋で気を失っていたのはお前だけだ。何があったか説明できるか?あの光を放ったのはお前か?言止めの力だろう?ペンはどこにやった?」
思い出したように、シーリアは表情を変え、ヴェイルスに視線を向けた。
「そうです。ペンです。金色のペンが私の手の中に現れたのです。実はそれが現れるのは二度目で……。たぶんですけど、何かを書いたと思うのですが、意識がないのです。まるで私ではないような……ヴェイルス様、私、リーアンが好きなのかもしれません」
「そうだろうな」
あれだけリーアンを助けることに固執しておきながら、それに気づいていなかったのだろうかと、ヴェイルスはその鈍さに感心したようにシーリアを見返した。
シーリアは眉間にしわを寄せ、難しい顔をしたまま、首をひねった。
「でも、ヴェイルス様も好きです。なんでしょう。もう、私の心はどうなっているのかさっぱりわからないのです」
「だから言っただろう?俺とは遊びだ。結婚はまた別だ。俺と遊びたがらない女はいないからな。その程度の容姿で俺に相手をしてもらえることを感謝した方がいいな」
ヴェイルスはシーリアを抱き寄せ、寝台に押し倒した。
「夫のいる身だな?どうする?俺に抱かれたいか?」
シーリアは顔を輝かせた。どうしてもヴェイルスが欲しいのだ。
「本当ですか?抱いてください!ヴェイルス様から言って下さるなんてめったにありませんから」
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