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23.女は抱くが、子種はやらない
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知識の塔最上階は永伝師の住まいだった。
まるで巨大な金色の鳥籠のような部屋の中央に目が痛くなるような黄金色の机が置かれている。
壁際は全て本棚になっており、分厚い書物が溢れていた。
さらに机の上にも大量の紙や分厚いファイルが山積みだった。
寝室に繋がる通路の手前にも本棚が並び、その間をすり抜けると、壁をくりぬいて作られた棚があった。
そこには古代文字で書かれた古い書物が積み上げられている。
ラフィーニアはその奥の一冊を取り除くと、その後ろから古ぼけた本を抜きだした。
ページを開くと、並んでいたのは古代文字だった。今では失われた太古の文字を指で読み進め、白紙のページまでくると、空中からペンを取り出し続きをかきだした。
刻まれる文字は金色に光り、まるで最初からそこに存在していたかのように完璧な綴りで文章を刻み続ける。
ページの上に影が過った。ラフィーニアは頭上を見上げた。
鉄格子の嵌められた天窓から旋回する鳥影が見えた。
ペンを置き、ラフィーニアは鳥を捕まえたいというように真っすぐに手を天上にむかって伸ばした。
当然その手を引っ張り上げてくれる者もいなければ、その手はそこにある本棚の最上段すら届かないのだ。
悲しそうに目は伏せられ、ラフィーニアは再び手元のペンをとった。
分厚い紙の上に刻まれていく文字の中だけが、ラフィーニアが自由に飛べる世界だった。
――
「シーリア、シーリア」
名前を呼ばれ、シーリアはようやく夢の世界から目を覚ました。
ヴェイルスが再び散らかり始めた研究室の惨状に苛立ちながら目の前に立っている。
シーリアは目を擦って周りを見た。
箱の中に大量の瓶が並び、魔力浄化装置からぽたりぽたり雫が落ち、小瓶から溢れだしている。
広げていたノートには大きな涎の染みが出来ていた。
大きな欠伸をしたシーリアを見おろし、ヴェイルスは注文書を確認した。
「勃起薬の発注はこれで終わりだ。悪意を持って使用する者が増えたため、今後は審査後の注文になる。自己回復薬については審議が長引いている。どうした?」
シーリアはまだ夢うつつで頭をこっくりと傾けた。
リーアンに薬を届けてからはまた変わらない霊薬造りの日々だった。
注文書が相変わらず山積みだった。
「ヴェイルス様の最愛の方の夢を見ていました。ほら、ラフィーニアさん。なんだか、とても悲しい夢だったような……」
「最愛だと?勝手に決めつけるな。その名前を二度と出すな!」
怒りを秘めた鋭いヴェイルスの声に、シーリアは今度こそはっきりと目を覚ました。
「あ、す、すみません。そうですよね。報われない片思いの相手のことなんて言われたくないですよね。しかも私のような愛人にもなれないような容姿の女には」
さらに険しくなったヴェイルスの目から顔を背け、シーリアは涎の染みが出来たノートをぱたぱたと振って箱に並べた霊薬の瓶を数え始めた。
「ご用件はそれだけですか?」
「新たな依頼書だ。魔法鍛錬用に魔力の上限を少し増やす霊薬を作れ。あとスターシャがここを出る」
「え?!」
「王都に行った時についでに決めてきた。教えただろう?若く子供が産めるうちに夫を見つけてやると。お前には難しいが、希望があれば俺に言え。あるいは、リーアンでもいいぞ?」
シーリアは呆れたような顔をしてヴェイルスを睨んだ。
「私の処女を三度も奪ったくせになにをいうのですか。だいたい私がいなくなったら懐具合が大変なことになりますよ」
ヴェイルスは悪い笑みをひらめかせた。
「金など困らない程度にあればいい。いきおくれる前に考えることだ。一応お前も若い女なのだからな」
ヴェイルスが部屋を出る直前、シーリアはその背中にふと沸いた疑問を投げかけた。
「ヴェイルス様はお子様を持たれないのですか?」
愛人が二十人以上もいれば子供もそれ以上もてるはずだ。ヴェイルスは面倒そうに肩をすくめて振り返りもしなかった。
「そんなものが欲しいのなら俺に求めても無駄だ。俺が吐き捨てているのは子種じゃない。ただの欲の塊だ」
扉が閉まると、シーリアは軽く首を傾けた。
スターシャが研究棟を去る前日、女たちは食堂でスターシャのためのお別れ会を開いた。
シーリアもケーキ作りを手伝い、厨房のナリアは腕によりをかけてご馳走を作った。
酒を注がれたグラスがいきわたると豪華な食事を前に女たちのおしゃべりが始まった。
ヴェイルスの研究棟に来る美女たちはだいたい五年ほどで去っていくのだと聞くとシーリアは驚いた。
スターシャはまだ二十代前半だったのだ。しかもここ最近のヴェイルスのお気に入りだったはずだ。シーリアはスターシャが本当は出ていきたくないのではないかと勘繰ったが、そんな話は少しも出なかった。
夫になる男性はどんな人かとフェリアに聞かれると、スターシャは得意げにその男性の言止め記録を取り出した。
「お相手は王都の第一警備兵団の騎士の方なの。いろいろお話は持ってきてもらったのだけど、今回で決めてしまったわ」
女達が記録を読み取り、頭の中にその男性の姿を見ると歓声を上げた。
「素敵じゃない!」
フェリアは心底うらやましそうだった。
「ヴェイルス様の方が素敵だわ」
シーリアはぼそりと呟いた。
「ヴェイルス様は素敵だけど、一番美しい時を遊んだだけ。私の若さと美貌に相応しい美しい愛人だったのよ」
スターシャは一番年若いシーリアに大人びた笑みを向けた。スターシャはそれでもまだ十分若く美しかった。もう少しここにいてもいいのではないかと言いたそうなシーリアにフェリアが言った。
「ヴェイルス様の研究所に入りたい霊薬師は多いのよ。研究はそこそこでいいし、きれいに装っているだけで、最高の縁談を用意してもらえるし、楽しませてくれるし、なにより大切にしてくださるわ。
霊薬師として国の機関で働いた実績を残せるのも利点だわ。第五霊薬研究所はシーリアのおかげで名が売れたし、お嫁に行くときは鼻が高いわ」
シーリアはさらに不満そうな顔になった。
「ヴェイルス様といたら他の人と結婚したい気持ちになんてならないわ」
女達が春風に揺れる花のように笑った。
「ヴェイルス様と結婚したら大変よ?常時愛人が二十人もいるし、子供も持てないわ」
シーリアはお腹に手をあてた。
「なぜ持てないの?避妊はしてないでしょ?」
「ヴェイルス様は何人も愛人を抱えて、毎日いろんな女性たちと寝ているけど一度も子供が出来たことがない。でも、ヴェイルス様のところを離れて結婚した女性は皆身ごもるの。有名な話しよ」
「私、面白い話を知っているわ」
町から雇われてきているミリアだった。
「昔、ここの研究員が妊娠したことがあるの。ヴェイルス様は自分の子供ではないと断言されて、その研究員は生まれたら検証してもらうとまで言ったのだけど、見事に浮気相手の子供だったの。
町に出たついでに遊んでいたみたいなのだけど、遊んだ町男にも捨てられて逃げて王都のご実家に帰ったのよ。町では有名な話よ」
「避妊の霊薬なんてあったかしら?」
話を聞いたシーリアは不思議そうに言った。他の女達も首を傾けた。
「女性側の薬は有名だけど、男性側は聞いたことがないわよね」
厨房の女達や厩のコリーナもやってきた。基本的に研究棟にいるのは女だけだった。
門番や警備の男はいるが、外の離れの棟に住んでいる。
自分好みの美女がこれだけ集まっているというのに、その席にヴェイルスの姿はなかった。
シーリアが食堂の戸口に何度か視線を向けたが、お別れ会が終わるまでヴェイルスは姿を現さなかった。
スターシャがヴェイルスとの最後の夜に備えて早めに抜けると、フェリアが不満そうなシーリアに教えた。
「ヴェイルス様はお優しいけど、私達と本気で向き合う気はないのよ。だから、くだらない女同士のおしゃべりも好きじゃないわ。ベッドの中の美女がお好きなのよ」
花のように微笑む美女達を眺め、シーリアは次に自分の番が回ってくるのはまた遅くなりそうだと考えた。
翌日、王都からの馬車が到着した。護衛についてきたのはまたもやユリウスの率いる第三騎士団だった。
ユリウスは美女たちの一番後ろからスターシャを見送るシーリアを見つけ、その容姿が際立って平凡であることに改めて気が付いた。
ヴェイルスが手をとってスターシャを馬車に誘導すると、美女たちが花を投げた。
シーリアも花を投げ、馬車の戸口に出された足場の上に落ちた。
反射的に、ユリウスはそれを拾い上げて馬車に乗り込むスターシャの手に渡した。
ヴェイルスが馬車の扉を閉めると、騎士達が配置についた。それから、ユリウスが先頭に立ち首を巡らせシーリアに視線を向けた。
シーリアはユリウスの視線に気づき、笑顔で手を振った。王都への旅ですでに顔なじみだったのだ。
ユリウスが軽く笑んで頷くと出立を告げた。
隊列が動き出すと、馬車が門を出ていくまで全員が見送った。
シーリアは空を見上げ、流れていく雲の先が青く澄み渡っていることを確かめた。
ヴェイルスは馬車が門を出て行くと身を翻して階段を上がり研究棟に戻っていった。
「すぐに新しい霊薬師の人がくるわ」
フェリアがシーリアに教え、女達も研究棟に戻っていく。
馬車はまだ小さな点となってかろうじて見えていた。
馬車に乗っているスターシャはきっともう後にした田舎の研究所のことなど考えてもいないだろう。
シーリアは馬車が見えなくなってもしばらくそこに立っていた。
まるで巨大な金色の鳥籠のような部屋の中央に目が痛くなるような黄金色の机が置かれている。
壁際は全て本棚になっており、分厚い書物が溢れていた。
さらに机の上にも大量の紙や分厚いファイルが山積みだった。
寝室に繋がる通路の手前にも本棚が並び、その間をすり抜けると、壁をくりぬいて作られた棚があった。
そこには古代文字で書かれた古い書物が積み上げられている。
ラフィーニアはその奥の一冊を取り除くと、その後ろから古ぼけた本を抜きだした。
ページを開くと、並んでいたのは古代文字だった。今では失われた太古の文字を指で読み進め、白紙のページまでくると、空中からペンを取り出し続きをかきだした。
刻まれる文字は金色に光り、まるで最初からそこに存在していたかのように完璧な綴りで文章を刻み続ける。
ページの上に影が過った。ラフィーニアは頭上を見上げた。
鉄格子の嵌められた天窓から旋回する鳥影が見えた。
ペンを置き、ラフィーニアは鳥を捕まえたいというように真っすぐに手を天上にむかって伸ばした。
当然その手を引っ張り上げてくれる者もいなければ、その手はそこにある本棚の最上段すら届かないのだ。
悲しそうに目は伏せられ、ラフィーニアは再び手元のペンをとった。
分厚い紙の上に刻まれていく文字の中だけが、ラフィーニアが自由に飛べる世界だった。
――
「シーリア、シーリア」
名前を呼ばれ、シーリアはようやく夢の世界から目を覚ました。
ヴェイルスが再び散らかり始めた研究室の惨状に苛立ちながら目の前に立っている。
シーリアは目を擦って周りを見た。
箱の中に大量の瓶が並び、魔力浄化装置からぽたりぽたり雫が落ち、小瓶から溢れだしている。
広げていたノートには大きな涎の染みが出来ていた。
大きな欠伸をしたシーリアを見おろし、ヴェイルスは注文書を確認した。
「勃起薬の発注はこれで終わりだ。悪意を持って使用する者が増えたため、今後は審査後の注文になる。自己回復薬については審議が長引いている。どうした?」
シーリアはまだ夢うつつで頭をこっくりと傾けた。
リーアンに薬を届けてからはまた変わらない霊薬造りの日々だった。
注文書が相変わらず山積みだった。
「ヴェイルス様の最愛の方の夢を見ていました。ほら、ラフィーニアさん。なんだか、とても悲しい夢だったような……」
「最愛だと?勝手に決めつけるな。その名前を二度と出すな!」
怒りを秘めた鋭いヴェイルスの声に、シーリアは今度こそはっきりと目を覚ました。
「あ、す、すみません。そうですよね。報われない片思いの相手のことなんて言われたくないですよね。しかも私のような愛人にもなれないような容姿の女には」
さらに険しくなったヴェイルスの目から顔を背け、シーリアは涎の染みが出来たノートをぱたぱたと振って箱に並べた霊薬の瓶を数え始めた。
「ご用件はそれだけですか?」
「新たな依頼書だ。魔法鍛錬用に魔力の上限を少し増やす霊薬を作れ。あとスターシャがここを出る」
「え?!」
「王都に行った時についでに決めてきた。教えただろう?若く子供が産めるうちに夫を見つけてやると。お前には難しいが、希望があれば俺に言え。あるいは、リーアンでもいいぞ?」
シーリアは呆れたような顔をしてヴェイルスを睨んだ。
「私の処女を三度も奪ったくせになにをいうのですか。だいたい私がいなくなったら懐具合が大変なことになりますよ」
ヴェイルスは悪い笑みをひらめかせた。
「金など困らない程度にあればいい。いきおくれる前に考えることだ。一応お前も若い女なのだからな」
ヴェイルスが部屋を出る直前、シーリアはその背中にふと沸いた疑問を投げかけた。
「ヴェイルス様はお子様を持たれないのですか?」
愛人が二十人以上もいれば子供もそれ以上もてるはずだ。ヴェイルスは面倒そうに肩をすくめて振り返りもしなかった。
「そんなものが欲しいのなら俺に求めても無駄だ。俺が吐き捨てているのは子種じゃない。ただの欲の塊だ」
扉が閉まると、シーリアは軽く首を傾けた。
スターシャが研究棟を去る前日、女たちは食堂でスターシャのためのお別れ会を開いた。
シーリアもケーキ作りを手伝い、厨房のナリアは腕によりをかけてご馳走を作った。
酒を注がれたグラスがいきわたると豪華な食事を前に女たちのおしゃべりが始まった。
ヴェイルスの研究棟に来る美女たちはだいたい五年ほどで去っていくのだと聞くとシーリアは驚いた。
スターシャはまだ二十代前半だったのだ。しかもここ最近のヴェイルスのお気に入りだったはずだ。シーリアはスターシャが本当は出ていきたくないのではないかと勘繰ったが、そんな話は少しも出なかった。
夫になる男性はどんな人かとフェリアに聞かれると、スターシャは得意げにその男性の言止め記録を取り出した。
「お相手は王都の第一警備兵団の騎士の方なの。いろいろお話は持ってきてもらったのだけど、今回で決めてしまったわ」
女達が記録を読み取り、頭の中にその男性の姿を見ると歓声を上げた。
「素敵じゃない!」
フェリアは心底うらやましそうだった。
「ヴェイルス様の方が素敵だわ」
シーリアはぼそりと呟いた。
「ヴェイルス様は素敵だけど、一番美しい時を遊んだだけ。私の若さと美貌に相応しい美しい愛人だったのよ」
スターシャは一番年若いシーリアに大人びた笑みを向けた。スターシャはそれでもまだ十分若く美しかった。もう少しここにいてもいいのではないかと言いたそうなシーリアにフェリアが言った。
「ヴェイルス様の研究所に入りたい霊薬師は多いのよ。研究はそこそこでいいし、きれいに装っているだけで、最高の縁談を用意してもらえるし、楽しませてくれるし、なにより大切にしてくださるわ。
霊薬師として国の機関で働いた実績を残せるのも利点だわ。第五霊薬研究所はシーリアのおかげで名が売れたし、お嫁に行くときは鼻が高いわ」
シーリアはさらに不満そうな顔になった。
「ヴェイルス様といたら他の人と結婚したい気持ちになんてならないわ」
女達が春風に揺れる花のように笑った。
「ヴェイルス様と結婚したら大変よ?常時愛人が二十人もいるし、子供も持てないわ」
シーリアはお腹に手をあてた。
「なぜ持てないの?避妊はしてないでしょ?」
「ヴェイルス様は何人も愛人を抱えて、毎日いろんな女性たちと寝ているけど一度も子供が出来たことがない。でも、ヴェイルス様のところを離れて結婚した女性は皆身ごもるの。有名な話しよ」
「私、面白い話を知っているわ」
町から雇われてきているミリアだった。
「昔、ここの研究員が妊娠したことがあるの。ヴェイルス様は自分の子供ではないと断言されて、その研究員は生まれたら検証してもらうとまで言ったのだけど、見事に浮気相手の子供だったの。
町に出たついでに遊んでいたみたいなのだけど、遊んだ町男にも捨てられて逃げて王都のご実家に帰ったのよ。町では有名な話よ」
「避妊の霊薬なんてあったかしら?」
話を聞いたシーリアは不思議そうに言った。他の女達も首を傾けた。
「女性側の薬は有名だけど、男性側は聞いたことがないわよね」
厨房の女達や厩のコリーナもやってきた。基本的に研究棟にいるのは女だけだった。
門番や警備の男はいるが、外の離れの棟に住んでいる。
自分好みの美女がこれだけ集まっているというのに、その席にヴェイルスの姿はなかった。
シーリアが食堂の戸口に何度か視線を向けたが、お別れ会が終わるまでヴェイルスは姿を現さなかった。
スターシャがヴェイルスとの最後の夜に備えて早めに抜けると、フェリアが不満そうなシーリアに教えた。
「ヴェイルス様はお優しいけど、私達と本気で向き合う気はないのよ。だから、くだらない女同士のおしゃべりも好きじゃないわ。ベッドの中の美女がお好きなのよ」
花のように微笑む美女達を眺め、シーリアは次に自分の番が回ってくるのはまた遅くなりそうだと考えた。
翌日、王都からの馬車が到着した。護衛についてきたのはまたもやユリウスの率いる第三騎士団だった。
ユリウスは美女たちの一番後ろからスターシャを見送るシーリアを見つけ、その容姿が際立って平凡であることに改めて気が付いた。
ヴェイルスが手をとってスターシャを馬車に誘導すると、美女たちが花を投げた。
シーリアも花を投げ、馬車の戸口に出された足場の上に落ちた。
反射的に、ユリウスはそれを拾い上げて馬車に乗り込むスターシャの手に渡した。
ヴェイルスが馬車の扉を閉めると、騎士達が配置についた。それから、ユリウスが先頭に立ち首を巡らせシーリアに視線を向けた。
シーリアはユリウスの視線に気づき、笑顔で手を振った。王都への旅ですでに顔なじみだったのだ。
ユリウスが軽く笑んで頷くと出立を告げた。
隊列が動き出すと、馬車が門を出ていくまで全員が見送った。
シーリアは空を見上げ、流れていく雲の先が青く澄み渡っていることを確かめた。
ヴェイルスは馬車が門を出て行くと身を翻して階段を上がり研究棟に戻っていった。
「すぐに新しい霊薬師の人がくるわ」
フェリアがシーリアに教え、女達も研究棟に戻っていく。
馬車はまだ小さな点となってかろうじて見えていた。
馬車に乗っているスターシャはきっともう後にした田舎の研究所のことなど考えてもいないだろう。
シーリアは馬車が見えなくなってもしばらくそこに立っていた。
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