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かつて悪(役)だった令息との結婚
158. その日まであと少し!
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楽しみにしてくださっている方々はお待たせいたしましたm(_ _)m
新しい章が始まる時はなんとなくキリのいい数字になるよう気を付けていたのですが、sideルチナから悪い人達の内緒話回までが想定以上に長くなってしまい(汗)
しかし話数のために主人公の結婚を遅らせるのもな……と、潔くここで新章を始めることにしました。
本日は1話投稿ですが、明日は2話投稿の予定です!
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俺は十七歳になった。
リシェルは十八歳。
嫁いだお姉様は十九歳。結婚して家を出た姉の年齢などいちいち数えない者は多いそうだが、俺は数える。
だって、あのアデリナお姉様が幸せに年を重ねているんだぜ? 数えないでどうするってんだ。
そして今は春が過ぎ、夏真っ盛りの七月後半。
七月後半である。
この意味するところは何か。
俺の誕生日の十一月一日まで――すなわちリシェルとの結婚の日まで、余裕で半年を切っているということだ……!
長かった。とても長かった。
虚空を見つめ、「その日まであと〇年か」と溜め息をつく日々がもうすぐ終わる。
だがここで油断して、邪魔者に隙などを与えてはならない。
もし意図的だろうが偶然だろうが妨害してくる者がいれば、草の根一本残さぬ勢いで滅ぼしてくれる。
「その勢いで世界を滅ぼすのだけはやめてくださいよ……」
そんな俺の肩にちょこりと乗っかり、ミッテちゃんが諦めの境地に至ったような顔でピヨヨと溜め息をついた。
もちろんだミッテちゃん、そうなったらリシェルを幸せにできないじゃないか。お姉様と母上様だって困るだろう。
そんな俺の熱いハートは、周りの者にもよく伝わっているようだ。俺の部下達だけでなく、我が家の使用人達もみな全力で警戒してくれていた。
もちろんヴェルクの義父上様やシュピラーレの小父様、エアハルト義兄様も、全力で俺達の周辺にアンテナを張ってくれている。
おかげでムスター家は何事もなく、日々平穏だ。
夏なので服の生地は薄く通気性のいいものになり、上着を脱いでシャツとベストだけの姿になることが多い。
湿度がそこまで上がらないおかげで、これだけで充分に夏を乗り切れる。
とはいえ暑いは暑いので、この季節になるとパーティーの数がグッと減った。友人との気楽な茶会ならまだしも、大人数のパーティーでは上着の着用が必須になるからだ。
避暑地の別荘に行っている者も多いし、真夏にやるメリットなんてほとんどない。
なので俺達としては、リシェルとの結婚準備に時間を割きやすい時期でもある。
だいたいのことは指示を出し終えているので、あと片付けないといけないことは二つだけだ。
まず、俺達の結婚祝いのパーティーをいつ行うかということ。
この国では、誕生日パーティーに他家の貴族を招いてはならない。家族の誕生日にかこつけて資金集めをし、王族以上の権勢を見せつけようとしたアホが過去にいたからだ。
だから「結婚祝いです」と主張しても、誕生日と同日だと引っかかるかもしれない。
そうでなくとも十一月一日という日付は、ちょい微妙なのである。
是非招きたい知人代表がバウアー男爵一家なんだが、バウアー男爵領が北方の山近くにあるもんで、その頃にはもう雪が降っている可能性が高い。
そういったもろもろも含め、これまでお世話になった人や親しい人を招きたければ、やはり誕生日当日は避けたほうがいいということになった。
一日や二日ずらす程度だとあまり意味がないから、一ヶ月ぐらいはずらしたほうが無難だ。
ならば早めの十月に前祝いとして行うか、それとも翌年の春にするか……そこが悩みどころなのである。
フォーマルな『式』ではないから、ギリギリまで悩めるところではあるけれど、そろそろいつにするか結論を出さねばならない。
その答えを出す決定打をくれたのは、意外にも音楽の先生だった。
俺もリシェルももう家庭教師を雇う年齢ではないのだが、音楽に関しては座学と違い、成人後も雇い続けるケースがあった。
だからとても迷ったんだけれど、俺のピアノの先生もリシェルのバイオリンの先生も、二人ともシュピラーレ公爵家へ紹介することにした。
カールの先生になってもらうためだ。
そしてちょくちょく授業のない日に先生達を招き、ごく気楽なお茶会を楽しんでいる。その時に、パーティーをいつにしようか迷っていると相談してみた。
そうしたらバイオリンの先生が、真剣な顔で十月をプッシュしてきたのである。
「九月でも十月でも結構ですが、前祝いとすべきです。そのほうがランハート様は冷静でいらっしゃるでしょう」
「冷静?」
「正気と言いましょうか。ランハート様はお姉様とお義兄様のご結婚後、半年以内にお会いしたことはおありで?」
――ある。
お姉様がお嫁に行ってしまって寂しかったけれど、結婚直後に遊びに行くのは迷惑かと我慢したのだ。
で、そろそろいいかと一ヶ月後に遊びに行ったんだよ。
その頃には落ち着いているだろうな、なんて思ってさ。
甘かったね。
甘々の激甘だったよ。義兄様が。
むかーしむかし、前レーツェル公爵に命じられて義兄様の監視をしていた目付け役の男が、今は側近になっていてさ。
彼からも話を聞いたんだけれど、エアハルト・フォン・レーツェルという人物が別人になったかのように奥さんを溺愛しまくっていて、レーツェル家の臣下一同、目が点になったんだってさ。
――うん、そうだな。俺もああなる自信がある。自信しかない。
ちなみについこの間お会いしたお姉様は、お腹がほんのちょ~っぴり? ふくらんでいた。
めでたい!
今は四ヶ月ぐらいだそうで、お姉様は元がスマートだからか、少しでもふっくらするとわかる。
そして義兄様のお姉様に対する過保護度が増していた件。
さすがの俺でさえ、いたたまれなくて早めに帰っちゃったよ。自分で言うのもなんだが、俺が遠慮するって相当だぞ……!
「先生の忠告に従ったほうがよさそうです」
「ええ、是非にそうなさいませ」
俺達がそんな会話をしている横で、リシェルが目元を染めてウロウロと視線を彷徨わせているのが既に可愛いんだが俺はどうすれば。
……後祝いで大丈夫なわけがなかったな。間違いなくコレが悪化している頃だ。
先生が帰ったあと、ノイマンにその旨を伝えたら、彼も納得して頷いていた。
「よくよく考えますと、アデリナお嬢様――いえ、レーツェル公爵夫人のご出産予定日は、順調にいけば一月から二月頃になるらしいと伺っております。お身体に障りのない外出時期を考えましても、九月か十月頃にお招きするのが最適でしたな」
「その頃にはお腹が結構大きくなっていそうだが、お出かけしても構わないのだろうか?」
「奥様はご出産の直前まで、お忙しくしておられましたので……。なお、ご出産の後はひと月もせぬうちに執務へ戻られたと記憶しております。ついあの御方を基準に考えてしまい、一般的な妊婦の外出に適した時期というものを失念しておりましたな、ははは……」
は、――母上様ぁぁぁぁッ!!
ノイマンは今、過去に乗り越えてきた大きな山々の記憶でも見つめているのだろうか。彼の澄んだ笑顔に俺は涙が出そうになる。
と、とりあえず、その頃はお姉様のお身体も安定しているから、お招きしても大丈夫とのことだ。
よほどの悪路ならもちろんダメだが、公爵家の人間の行き来する道は日頃から綺麗に整備しているし、安全面にも気を配っている。
これで問題というほどの問題でもない二つのうち、お祝いの日はだいたい決まったな。
もうひとつは、俺達の暮らす部屋の、お引越しの件だ。
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