上 下
140 / 159
そして始まりへ

137. まざり合い、伝え合う -sideアレッシオ*

しおりを挟む

 いつも読みに来てくださる方、初めて来られる方もありがとうございますm(_ _m)
 遅くなりましてすみません、本日2話更新です。
 すみません糖度が……とても……。

--------------------------------------------



 父は俺が永遠に勝てそうにないと感じる第二位の人間だ。
 第一位は言わずもがな、俺の恋人。

 一方的に奉仕されるのをよしとせず、今夜は自分が俺を気持ちよくしてやるのだと意気込みが伝わってくる。俺はこの人に随分と情けない弱音を吐露して縋ってしまったから、慰め、元気付けてやろうと思ってくれているのだ。
 領主として働いている時は常に凛然としているのに、気を許した俺達の前ではこんな風に感情豊かな面を見せてくれる。自分はおまえ達に心を開いているんだぞと、そう伝えてもらうたびに俺達がどれほどの歓びを感じているのか、この人にはきっと理解できないだろう。

 そして俺は決してお上品な性質ではない。慰めてくれるというのなら、ありがたく慰めてもらおう。そんな期待をしている俺の内心などお見通しだった父には、揶揄からかいまじりの釘を刺された。
 遊ばれて腹立たしい。しかし俺の理性がこの人に関してだけは全くあてにならないのは事実なので、甘んじて忠告を受け止めるしかない。
 失いかけたこの人の存在を余すところなく味わい、全身で感じたかった。
 きっとこの人の中には、女々しい顔で弱々しく膝に縋った俺の印象が強く刻まれている。それさえも躊躇ためらわず利用し、襲いかかりたい凶暴な衝動を笑顔の下に隠す俺は、つくづくろくな男ではない。



 寝台で向かい合い、自分で入れてくれるかと尋ねれば、「よし任せろ!」という表情になった。恥じらうさまも可愛らしいが、これはこれで可愛らしくていい。今夜は俺を気持ちよくしてやろうという決意を実行してくれる気満々なのだ。
 おずおずと俺のものに触れ、それの感触や反応にいちいち驚いている。この程度で無様に暴発しないよう耐えるのが大変だった。おっかなびっくりの様子が可愛らしくてじっと見ていたのだが、一番太い部分を一気に埋め込んでしまったのには焦った。

 しっかりほぐしてはいるが、一番固い箇所は入り口の部分だ。もしや傷付いていないかと確認したが、傷も痛みもなく、先の部分をひと息に入れてしまった衝撃に震えているだけだったとわかった。
 ホッとしつつ、ふるふる震えて恥ずかしそうな顔もいいと思ってしまう。
 時間をかけてゆっくり腰を落としてもらい、やっとすべてが収められた。包まれる感触、温かさは気が遠くなりそうなほど心地いい。

 目の前で汗ばむ胸、チラチラと美味しそうに揺れる果実に口付けた。丹念にねぶってやると、口の中でぷっくりとふくらむ。この人が悦ぶ場所のひとつだが、俺も舌の上で健気に弾かれる果実を味わうのが好きだ。
 喘ぎながら俺の頭を掻き抱き、中がひくひくと締め付けてくる。
 絞る動きを繰り返し、何度か震えた後、腹の辺りが濡れた。達したのだ。

「オルフェ……気持ち、いいですか?」
「……うん……うん……」

 恍惚とした表情で応えてくれた。中でじっくり俺を味わいながら、ゆるやかに達するのがこの人はとても好きだ。正直俺にとっては耐えるのが大変な時間だが、それ以上に俺で気持ち良くなってくれている充足感のほうが強い。
 腕の中に恋人がいる。俺に抱かれて嬉しそうなのが嬉しい。例えようのない幸福感が胸に満ちる。
 見上げていると、俺の額の汗をぬぐい、前髪をよけてくれた。なんて心地が良いのだろうか。
 
 ―――不意に口付けが落とされた。この人からの、初めての口付けだ。
 自分からするのは慣れていないせいか、とてもつたないのに、どうしてこうも甘いのだろう。
 切なさと狂おしいほどの愛しさに息が苦しくなる。

 それ以上に……ぐつり、と欲望がふくれあがった。
 愛しい。可愛い。大切にしたい。愛おしみたい。腹が空いた。食らい尽くしたい。何もかも食らい尽くしたい。この人のすべて、隅々まで―――

 不穏な変化に気付いたのだろう。慌てて唇を離し、「しまった!」という表情かおになった。……ほんとに可愛いな。
 でももう遅い。
 背と腰に回していた腕へぐ、と力をこめ、同時に下から突き上げた。

「いぁっ! あっ……!」

 彼は俺にぎゅっと抱き付きながら、足に力を込めて腰を浮かそうとした。
 ……逃がしませんよ。
 さらに腕へ力をこめ、逃げようとする腰を密着させてやれば、小さく悲鳴をあげて頭を振った。

「あうっ、や、まってくれ、あ……」

 そんな甘い声で哀願しても逆効果ですよ、我が君……。
 追撃してやろうと思ったが、汗で少し手がすべった。この人に上で動いてもらうのも魅力的だったが、今はとにかく余裕がない。
 背中から倒される恐怖を与えないように、俺へ抱き付かせたまま上半身に体重をかけた。
 シーツに頭が乗ってようやく、押し倒されたのを理解した瞳……これから何をされるのか、察してしまった獲物の表情にますます情欲を煽られる。

 両足に腕をかけ、腰が軽く浮くほどに持ち上げた。
 逃げることもできず無防備なそこへ、熱杭を何度も打ちつける。

「ひあぁっ! まっ、まって、あれっしお! わたし、わたしさっき、だした、だしたからぁっ!」
「そうですね……すぐにまた、出るように、してあげますよ……」
「そ、そんなっ……あんっ! あっ! あぁっ!」

 俺を味わいながらすっかり馴染んでいたそこは、阻むどころか誘い込むように吸い付いてくる。それをいいことに、何度でも穿うがち続けた。
 甘い声で鳴いて、自分を追い詰める相手へ抱き付いてくる彼が愛しくてならない。

「あう、やぁっ、わたしっ、わたしまたっ、あっ……」
「ええ、ほら……一緒に……」
「……あっ、くるっ、あぁうっ、あっ、だめっ、そんな、だめっ……!!」

 ぐ、と腰を押し付け、最も深い場所を穿うがったままぐるりと回してやれば、腕の中の身体が大きく痙攣けいれんした。
 俺の肩や背へ懸命に縋っていた手が外れ、腹から胸へ大きく弓形にしなる。
 同時に強く引き絞られた俺は、抵抗せずに悦楽の証をそそぎ込んだ。
 この瞬間の感覚はもう、例えようがない―――……。

「……あ……あ、ん……」
「オルフェ……オルフェ……」

 息を吐いた。この多幸感をどう言い表せばいいのだろう。余韻にびくびくと震えながら、過ぎた悦楽に涙が伝うその顔さえ、可哀想なのに可愛らしい。
 口付けて涙を吸えば、うっとり安心して委ねてくれるのがなんとも嬉しい。

「わたし……こんな……はずじゃ……」
「どうしました?」
「だって、わたしが……おまえを、きもちよく、するはず……なのに……」
「はず、とは?」

 最初からずっと、現時点でも、最高に気持ちいいのだが?

「これじゃ、いつもと、おなじ、だろう……わたしばかり、されて……」
くありませんでしたか?」
「ちがうっ! ……きもちよすぎて、こわい。でも、しあわせだ……。だからおまえも、きもちよく、してあげたいのに……」

 まだ整わない呼吸、ろれつの回らない口で、少し悔しそうにそんなことを言う。

「何を言うかと思えば……」
「へ? ……あ、れ……?」
「オルフェ。俺のこれ、なんでこうなっているのかわかります……?」
「え? あう……?」
「我ながら、子供ガキかと思いますよ……あなたを前にした時の俺の頭の中、八割方は『可愛い。食べたい』ですからね。さかり方がひどいし、ケダモノにもほどがある……」
「はう……あ、あん……」
「あなたが俺の下でよがる顔なんて最高だ。虐めたくなって困る。その分ドロドロに甘やかしたくなって困る。もうどうしようもない……」

 こんな醜い告白を聞きながら、なおも俺を見捨てずに全部受け止めてくれるであろうあなたが悪い、なんて思うような男ですよ、ここにいるのは。

「ね……奥、好きでしょう? 俺にこうされるの……」

 入り口を一杯に広げて出入りされるのも、奥を突かれるのも好きなんですよね?
 入り口近くにある弱いところを、これでこすられるのも好きでしょう?
 俺はあなたの気持ちいいことだけをしてあげたいんですよ。そうしたら俺も気持ちがいいんです。
 ほら、ちゃんと教えてください。もっと虐めますよ?

「す……すき。……おまえのが、私の中に、全部入るのが……好きだ……」

 恥ずかしがって口ごもるかと思いきや、ほろほろと泣きながらそんなことを言う。

「すごく、深いところまで、おまえがいて……きもちよくて……しあわせで……でも、私ばかり、だから……おまえも……しあわせに……」
「オルフェ……」

 ほんと、何なんだこの人は。的確に俺の急所をえぐってくるな。

「可愛い。オルフェ。可愛い。愛してる……」
「……わたしも、あいしてる……アレッシオ…………んっ、あっ……あう……ふむ、ン……」

 上体を曲げて、濡れた唇に食らいついた。呼吸が苦しくなってはいけないから、名残惜しくも唇を離せば、愛しい人の瞳はすっかりトロリと潤んでいる。
 ぎりぎりまで引き抜いて、もう一度差しこむ動きをゆっくり何度も繰り返してやれば、可愛らしく腰をうねらせながらひんひんと泣いた。
 俺を幸せにしたいんだと泣いた涙の名残の上を、今度は愉悦の涙が溢れて伝ってゆく。

「可愛い。あなたを可愛がりたい。まだ愛し足りない……ね、俺を幸せにしてくれるんでしょう? 愛させてくださいよ。全部、受け止めてください……」
「ひう、……あ、ぁん…………う、うけて、たつっ」

 笑いそうになった。俺は本当にこの人が好きだと思った。
 嬉しくて幸せで、もう何て言えばいいんだ。
 もしもあなたが悪魔なら、こちらから押しかけて魂だろうが何だろうが捧げてやる。
 だからずっと、俺を傍に置いてください。嫌だと言っても置かせますからね、反論は聞きません。


 たくさん愛して、愛し抜いて、やっと気の済んだ頃には、日付が変わっていた。
 気絶同然に眠りに落ちた恋人は、翌日、すっかり腰が抜けて立てなくなっていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王様として召喚されたのに、快楽漬けにされています><

krm
BL
ある日突然魔界に召喚された真男は、魔族達に魔王様と崇められる。 魔王様として生きるのも悪くないかも、なんて思っていたら、魔族の精液から魔力を接種する必要があって――!? 魔族達から襲われ続けますが、お尻を許す相手は1人だけです。(その相手は4話あたりで出てきます) 全体的にギャグテイストのハッピーエンドです。 ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿しています。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!! この作品は加筆修正を加えたリメイク版になります。

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

親友と幼馴染の彼を同時に失い婚約破棄しました〜親友は彼の子供を妊娠して産みたいと主張するが中絶して廃人になりました

window
恋愛
公爵令嬢のオリビア・ド・シャレットは婚約破棄の覚悟を決めた。 理由は婚約者のノア・テオドール・ヴィクトー伯爵令息の浮気である。 なんとノアの浮気相手はオリビアの親友のマチルダ伯爵令嬢だった。 それにマチルダはノアの子供を妊娠して産みたいと言っているのです。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

追放された悪役令嬢は残念領主を導きます

くわっと
恋愛
婚約者闘争に敗北した悪役令嬢パトリシア。 彼女に与えられた未来は死か残念領主との婚約か。 選び難きを選び、屈辱と後悔にまみれつつの生を選択。 だが、その残念領主が噂以上の残念な男でーー 虐げられた悪役令嬢が、自身の知謀知略で泥臭く敵対者を叩きのめす。 ざまぁの嵐が舞い踊る、痛快恋愛物語。 20.07.26始動

処理中です...