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甘く誘う悪魔

110. 愛しい悪魔への誓い -sideアレッシオ*

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 読みに来てくださってありがとうございます。
 本日もまた2話更新&R回となりますm(_ _;m)

 今後の予告なのですが、この章の次がラスト章→エピローグになるため、2話更新が多くなるかもしれません。
 毎日更新は継続していきますので、よろしくお願いいたします。

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 もともと、ご自分を追い込むほどに勤勉な方ではあった。
 わずかな時間さえあればお勉強に仕事にと、たまのお茶の時間すら「この後の効率が上がるから」という理由で取られることがほとんどだった。
 その傾向は領地に移られてから酷くなった。原因はいわずもがなだ。学園を卒業された分、自由になる時間は増えたはずなのに、あの方はいっそう忙しくなった。
 そして仕事中毒に陥ってしまわれた……。

 他の領主と比較して、あの方の仕事量はゾッとするほど多い。俺のような存在が領主の傍に四六時中貼りついていると、普通は眉をひそめられるものなのに、むしろ歓迎の空気が漂っているのは、俺なら閣下を強引にでも休ませることができると信頼されているからだ。
 ろくに働きもせず遊び暮らす領主も不安視されるが、領主が働き者過ぎても周りに心配されるのだなと、あの方に会って初めて知ったかもしれない。

 こんなにも美しい人がいるのかと、毎日飽きずに見惚れてしまう。惚れた欲目を抜きにしても、実にお美しくなられた。
 見た目だけではない。その立ち姿は常に強くしなやかで、とても凛々しい。
 決断力、行動力、ついて行きたいと思わせる求心力。これほど惹きつけられる存在でありながら、俺の恋敵らしき者が出てこないのは、色恋よりも崇拝の方向に行く者が多いからだ。
 恐れ多くてそのような感情は抱けない。―――そんな者が大半である中、もう何年もあの方への欲望をこじらせている俺のような存在もまた珍しいのだろう。

 四月一日。約束の日だ。もしこの日に、あの方が出張らなければ片付かないほどの厄介事を引き起こして持ち込んでくる輩がいれば、厄介事をその者ごとこの世から消してくれる。
 幸いにも大したことは起こらず、夕刻を迎えた。
 いつもと変わらぬ表情、変わらぬ口調だったはずだが、ラウル殿やニコラ殿いわく、ずっと俺から殺気が漂っていたらしい。道理で部下達が青くなっていたわけだ。



   ■  ■  ■ 



「先に、湯をもらった」

 食べていいご馳走が、湯上がりで上気した身体にガウン一枚を纏っている。俺は相当、凶悪な笑みを浮かべてしまったのだろうな……ひるまれてしまった。
 そのまま襲いかかりたいのを堪え、浴室に向かってその日の汗を流す。この一夜は何ひとつ不快な思いをさせたくない。
 だが戻ってみれば、昔より成長した身体を小さく縮め、ちょこんと椅子に座っている姿を認めて、頭の中の何かが切れた。

 抱え上げてベッドに運び、サイズの大きなガウンの前をいた。何年ぶりかにしっかりと見る裸体。
 俺の愛撫に反応して色づいた胸の尖りに、また理性が焼き切れそうになった。とうに何度も触れたこの人の男の象徴といい、この部分といい、どうしてこんなに綺麗な色なんだ。
 未成熟な身体では淡く澄んでいても、成長するにつれ色が濃くなるものだと思ってはいたが、本当にあの色がそのまま濃くなっただけだなんて。

 熟れた果実の色が全力で俺を誘惑にかかってくる。かつて不意打ちで媚薬を飲まされた時の比ではなく情欲を煽られた。
 思うさま味わい尽くした。跳ねる身体を押さえつけ、尖りに吸い付き、その素肌を余すところなく撫で上げた。

「あ、アレッシオ、アレッシオ、もう……」

 涙声が聞こえ、ふと顔を上げた。とうに紐はほどけ、上半身も下半身もすべてが俺の前にさらけ出されている。
 胸や腹、太ももの内側、肌という肌に俺の所有痕が散らばっていた。
 完全にちあがった象徴からはとめどなく雫が流れ、その下は俺の指をもう何本も呑み込んでいる。軽く揺らすと、汗ばんだ腹がびくりと震えた。
 同時に芯の部分も揺れる。そこに食らいつきたい衝動にかられるが……そうしたらきっと一瞬で果ててしまうだろう。これは今後の楽しみにとっておこう。

 指を引き抜いた瞬間、か細い声をあげた。その声にすら煽られながら、すんなりとした両足を抱え上げる。羞恥が限界に達して燃え尽きたのか、されるがままのそこに、香油の瓶の中身を足した。
 俺のガウンの紐を解き、初めて前をあらわにすると、ごくりと息を呑む音がした。

「……それ……はいるの……?」

 怯え切った声と表情が可愛らしくて笑いそうになった。

「入れるんですよ」

 もしや、この行為を始めて以降、俺の第一声がこれか。余裕がないにもほどがあるだろう。
 嗤いたくなりながら、欲望の先をそこに押し当てた。ただ当てるだけでも伝わる、快さ……。

「はっ、あう、あぁ……」
「ん、く……」

 最初に埋め込む時の抵抗感と、凄まじい悦楽。まとわりつき、中が全体で包み込み、吸い付いてくる。
 ひと息に突いてしまいたい衝動と、持っていかれそうな危うさを堪え、ずぶずぶと埋め進んでいった。奥へ、奥へと。

「―――っ!? うそっ!? 待っ……!」

 急に暴れ出した。そうだろうな。はあなたにとって未知の場所だ。
 指をひらいて、ちゃんと入るように気を付けてほぐしてはいたが、直接触れたことはない。
 指では届かない深みに、亀頭がまりこんでゆく。驚愕し狼狽うろたえるその表情から目を離したくないが、傷付けたくはない。この方には俺との行為で、微塵の苦痛すら与えたくはない。―――俺の身体に耽溺して、俺以外との行為など想像すらできないようにしてやりたいからだ。

 そこを確認して、笑みが浮かぶのを止められなかった。
 まったく萎えていない。むしろ、はちきれんばかりだ。
 ぐ、と体重をかけ、最奥まで押し込んだ。俺の身体を押しのけようとしていた手が、今は逆にガウンを命綱のように握りしめている。

「嘘、ふかいっ―――あーっ、あっ、や、あぁあーっっ!」
「っ……」

 下腹がぴたりと密着した瞬間、ビクンと大きく跳ね、内壁が猛烈な強さで締め上げてきた。
 入れた瞬間に暴発など恥どころではない。びくびくと痙攣けいれんする身体を押さえつけ、全力で中の蠢きに耐えぬき、額から汗の雫が伝った。
 ……これは……もしや。

「ぁ…………こんな…………」

 彼は荒く息を吐きながら、呆然とそこを見つめている。
 ……達したのか。
 まだその部分は、ほとんど刺激していないのに。

 快哉を叫びたくなった。嬉しくておかしくなりそうだ。
 初めて俺の大きさを受け入れて、圧迫感はあるだろう。だが苦痛は感じていない。
 柔軟に呑み込めるようになり、中で快楽を拾うことを覚え。
 それからきっと、俺のものが胎内に入っている事実が、この人の性感を増幅させたのか。

 えぐえぐと泣きながら、両手で口元を覆った。自分の身体の反応が信じられないのだろう。
 可哀想なのに、可愛らしい。もっといじめてしまいたくなる。

「可愛い……」
「……そん、な……あ、んん……」

 腰を揺らしてやると、ひくひく痙攣けいれんして素晴らしい締め付けを俺に与えながら、ちゃんと自分でも快楽を味わえているようだ。
 果てた芯が、再び持ち上がり始めている……。

 もう限界だ。

 強く腰を送り込んだ。何度も、何度も奥をえぐった。濡れて色づいた唇から悲鳴に近い嬌声がほとばしり、「ゆるして」と何度乞われてもやめなかった。
 泣いて止めようと、あなたが気持ちいいのはもうわかっているんだ。初めて暴かれる深みに、そこからもたらされる強過ぎる悦楽に耐えられなくて怖いのだということも。
 腰を押し付けたまま、最奥をかき回すように二度、三度と突くと、弓なりになって大きくビクンと震え、また白濁を噴きあげた。同時にあの強烈な締めつけに襲われ、今度は我慢せずに身をゆだねる。
 震える身体を抱きしめて、はらの中にそそぎ込んだ。

「んぅ…………なか……に……」

 ……俺は正直、の立場になったことがないから、出される感覚というものがよくわからない。その箇所の体感は人それぞれと聞いたことがあるが、あなたは少しわかるようだな。
 飴のようにトロンととろけた瞳、唾液で光りながら震える唇……うっとりと気持ちよさそうだ。
 一滴残らずぬりこめるように最奥へ出した。すべて、余すことなく、この人を俺のものにしたい。そんな凶暴な欲求に従って。

「……抱くことさえできれば……多少は、落ち着くと、思ったんだがな……」
「……?」

 半分飛んでぼんやりとした緋色の目に、俺の情けない顔が映っていた。
 いまだに飢えているけだものの顔だ。

「呆れるだろう……まだ欲しいんだ……。あなたをいじめたい。泣かせて俺以外を見られないようにしたい。だが泣かせたくない。笑っていて欲しい……。朝から晩まで頭の中の大半があなたのことだけで占められて、何年経とうが治る気配すらない……。俺をこんな風にしたあなたが憎らしくてならない。苦しめて俺に縋らせてやりたい。だが苦しめたくない。幸せにしたい。堂々巡りだ」
「……あ、れっし、お……」
「―――オルフェ」

 ひく、と震え、目をいっぱいに見開いた。この鮮烈なあかい命の色に、囚われてもう何年も抜け出せない。
 このまま永遠に離れられそうになかった。

「愛している」
「……!!」
「愛している……オルフェ」
「あっ……あんっ……あっ……」

 こんな誓いを立てている真っ最中に、性懲りもなく復活したそれを許しも得ずに突き込む。
 どだい俺に神聖な誓いなど不向きなのだ。この獣じみた情欲もすべてひっくるめて、俺のすべてはあなたにそそがれているのだから。
 そしてあなたは、そんな俺を許してくれる。その気になればいくらでも反撃できる人だ。それを理解した上で、あなたの俺に対する特別な寛容さと愛情を平然と利用できる俺は、到底あなたに相応しい男とは言えないのだろうな。
 だが俺はあなたの傍を離れる気も、この場所を手放す気もない。

「あれ、しお……すき……すきだ……」
「……オルフェ」
「すき……アレッシオ、……すき……あいして、る…………わたし、おまえの、もの……ぜんぶ……」
「ああ……俺のものだ……」
「うん、うん……ぜんぶ……おまえの……」

 歓喜で胸が苦しい。泣きながら熱にうかされて口走っている言葉を、明日もきちんと憶えてくれているだろうか。
 憶えていなかった時は、もう一度言えるようにしてやろう。

 俺も全て、あなたのものだ。
 こんなにも。


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