巻き戻り令息の脱・悪役計画

日村透

文字の大きさ
表紙へ
33 / 214
★ただ今の呪い

★感謝お礼SS【ただ今の呪い】

しおりを挟む

 開始当初はこれほどたくさんの方々が読みに来てくださると思わず、日々感謝しつつ驚いております。
 本当にありがとうございます!

 今回はいただいたコメントからお遊び・お礼ストーリーを書いてみました。
 感想コメント欄にて某人物へささやかな呪いがたくさんプレゼントされており、その一部だけを実現しました。
 おバカな思い付きで書いたものなので、本編のイメージを絶対壊したくない方は、申し訳ないのですが避けていただければと思います。


※本編とは関係がありません
※心の広い方はお付き合いください


------------------------------------------------------


 新たな妻を迎えた翌年、妻子を本邸に残し、男は例年と変わらず王都邸の門をくぐった。
 今をときめく伯爵家当主たる彼は、美しい妻と、妻によく似た義息子、可愛らしい赤ん坊の話をする時は快い気分になるが、いつもながら将来の不安な長男について語る時は、失望の溜め息を禁じ得ないようだ。
 今年もいつもと同じように、社交界で注目の的として過ごし、家の栄華を印象づけて終わる、そのつもりだったに違いない。

 だが、執務室の机に置かれていた手紙に目を通した瞬間から、不穏な影が漂い始めた……。


 ―――〝【ただ今の呪い】が発動しました〟―――


 男は首を傾げた。差出人も宛先もない奇妙な手紙は、てっきりこの館の老執事が置いたものとばかり思っていたが、彼は心当たりがないという。
 何かの悪戯いたずらとしても、執務室に侵入した者がいるとなれば放置はできない。老執事に調査と手紙の処分を命じ、その日は何事もなく過ぎた。
 本格的な変化があったのは翌朝だ。

「……っ!?」
「……?」

 老執事が、何故か目をいている。
 みるみるうちに蒼白になり、何か言いたそうにしては口をつぐむ。どうしたのだろう。

 朝の支度を済ませ、己の完璧な姿に満足したであろう男に、老執事はそ……と無言で鏡を差し出した。
 姿見に映る姿、その後ろ側から執事が手鏡を向けている。そこに映っているのは、広々として見事な円状のハ……

「…………」
「……た、ただちに準備いたしますっ」

 何も命じられていないのに、老執事は慌てて部屋を飛び出した。しばらくして息も絶え絶えに戻って来た彼の手には、亜麻色のフサフサが握られている。
 メイド達がつとめて無の表情を作り、亜麻色のフサフサを後頭部に当て、ちゃきちゃきと整え始めた。
 しかしその間、どうにもメイド達は息苦しそうに顔を青くしている。気のせいか、やけに香水の量が多い。ようやく準備を終えれば、やっと息ができるとでも言いたげに胸を押さえている者すらいる。どうしたことか。

 それはいいが、今朝になって何故いきなり、これほどのものが出来たのだろう。昨日までは何もなかった……いや、はずだ。すべてがフサフサと美しい亜麻色で埋め尽くされていたはずなのに。
 毛根に良い薬と解決策を探すよう執事に命じ、以前より招待されていた昼食会に参加すべく、男は馬車に乗り込んだ。



 昼食会は、あまり愉快な結果にはならなかった。
 食事中、胃の中から大きな空気のかたまりがせりあがり、とても良い音を響かせてしまったのである。よりによって同じテーブルにいたのは、侯爵家に公爵家に王族といった面々……彼らは何も見ず、何も聞こえなかったと笑顔に書き、なごやかに昼食会を続けてくれた。
 別のテーブルで顔をそむけている者が大勢いたとしても、彼らの肩が震えているような気がしても、それはただの気のせいである。

 そう、何事もなかったのだ。ただ単に空気のかたまりが出ただけである。
 男は堂々と胸を張り、会場を後にした。
 通りすがりの貴婦人達はみな、彼の甘い美貌を見かけると頬を染める。すれ違いざまに小さく悲鳴を上げて赤くなる初々しい女性もいて、その反応は男をおおいに満足させた。
 しかし今朝の老執事のように、従者が何かを言いたそうにしては口をつぐみ、青くなっていた。その理由が判明したのは、再び馬車に乗り込んだ瞬間だ。

「…………」

 ズボンの。
 前が。

 ボタンは取れていない。布も切れてはいない。今朝は完璧だったはずだ。なのに何故、このように広々としているのか。
 男は何食わぬ顔で窓を閉じ、ボタンをはめ直した。なるほど、従者達はこれを伝えたかったようだ。

 早く言え。

 と、彼は紳士然とした表情の下で思ったかもしれない。

(何かが、おかしい……)

 いや、気のせいだ。これは単にズボンの仕立てが悪かっただけだろう。処分させて、ほかの衣類に問題がないかも確かめさせねば。
 その日は寄り道をせずに館へ戻り、衣装の管理の不備と気の利かない従者について執事を叱責し、湯を浴びるべく自室に戻って服を脱ぎ落としていった。

「うっ……!?」

 とたんに、鼻を貫く異臭。
 それが、己の衣類から漂っている―――。
 香水と混ざり合って増幅され、悪寒を覚える臭気に彼は鼻をつまんだ。なるほど、メイド達は皆、だから息を止めて―――。
 というか、こんな悪臭まみれでずっと会食に―――。

(いや……問題はない)

 彼に問題などあろうはずはないのだ。これはたまたま、偶然、今日に限っただけのことである。
 そう、何事も―――

 ゴッ!!

「ふぐっ!?」

 足の小指が段差に衝突した。
 彼はよろめいて壁に手を突くと、手指の先にびりりと痛みが走った。いつの間にかすべての指先、爪周りの皮が棘のようにめくれ立っている。
 保湿用の薬の用意を命じるために振り返り、

 ゴッ!!

「うぐッ!?」

 すねの前面が、浴室の出入口前にある衝立ついたての角に衝突した。
 メイドや従僕の顔が「うわっ」「ひぇっ」と歪められた。
 これは痛い。

 保湿用の薬など、思えば入浴後でもよかった。ヒリヒリするが、急ぐほどのことでもない。
 男は痛みに耐えながら思い直し、再び浴室に向かおうとして―――

 ゴッ!!

 足の小指が段差に衝突した。

「……ッッ!?」

(二度目、だと……!?)

 しかも、何故、同じ場所を。
 あまりの激痛に硬直し、その場から動けない。
 男の脳裏に、昨日の奇妙な手紙がよぎった……。

 いや、あれはただの、何者かの嫌がらせだ。これらとは、全く関係のないものだ。そうだ、そうに違いない。

 彼はまだ知らなかった。もう一通の手紙が、誰も知らぬ間に執務室に置かれていたことを。
 そう、これは始まりに過ぎなかった……。


 ―――〝呪いが一定数に達し進化しました〟―――



 - to be continued …?

------------------------------------------------------


●6/9時点コメントにて

【ただ今の呪い】
後頭部〇ゲ
永遠の加齢臭
足の小指をぶつけ続ける
身動きする度に向う脛をぶつける
毎日ささくれが出来る
上位貴族との会食でゲップが出る
カッコつけ中に社会の窓全開(そしてバレる)


 次回から本編に戻ります。
 お付き合いいただきありがとうございましたm(_ _)m


しおりを挟む
表紙へ
感想 834

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。