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本編

6.婚約者に…… *

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「なッ! ま……まてまてまて!」
「待っても何も解決しませんよね?」

 ベネが爽やかな笑顔を浮かべながら力づくで解決しようとしてくる!
 体術の心得もあるのか、振り回した腕をあっさりつかまれた。そしてその腕の力強さは俺よりも上。
 服の上からでもわかる鋼の筋肉により、俺は抵抗もむなしく、ベネにベッドでおさえこまれた。

 ベネが俺の上に跨ったまま、服を脱ぐ。今まで服に隠れて想像しかできなかった厚い胸筋と割れた腹筋が剥き出しになり、俺は怯んだ。
 服を着ていても昔よりでかいことは察していたが、それでもまだ着痩せしていたのか。
 俺も剣術では鍛えているが、ベネの鍛え上げられた体とは雲泥の差だ。

 これでは、俺がベネをどれだけ押し戻そうとしてもびくともしないはずだ。
 そう呆然としていたら、俺のシャツまで剥ぎ取られてしまった。

「マーカス……本当は怯えさせたくないんです」

 ベネのキスが降ってきた。心をほぐすような優しいキスに、流されそうになる。だがそんな気持ちを奮い立たせるようにベネに怒鳴った。

「怯えてなんていない! おまえが上に乗っているのが腹立たしいだけだ!」
「そうか……怒っているんですね。こんなことになって、私も残念な気持ちです。でも、あなたに触れるのは嬉しい気持ちもあります。ほら、あなたに触れているだけで、心臓がうるさい」

 ベネの手に導かれて胸に手を置くと、奥に強い鼓動を感じる。見た目は鋼のように見えた胸筋も、実際に触ってみると柔らかい。
 その速い鼓動を感じるうちに、俺の胸の奥も締めつけられるような痛みを感じる。
 ベネも逆に俺の胸に手を置いて俺の鼓動を感じると笑った。

「私は、あなたが大好きだったんです。目が合うと笑いかけてくれるし、私が気遅れするパーティではなるべく隣にいるように気を配ってくれたでしょう? あなたの甘い匂いも優しいキスも、胸が痛くなるほど好きでした」
「それは……おまえが引っ込み思案で、俺が守らないとダメだと思ったから」
「もう、守らなくていいから……だから私と婚約破棄したいんですか」

 ベネの表情が暗くなる。
 体は逞しくなり、顔も精悍になった。でも、綺麗な顔は昔の面影があるし、落ち込んだ表情も昔と同じだ。
 そんな顔をさせてしまったことに罪悪感で胸が痛い。
 いつのまにかベネの顔が近づいてきて、口を塞がれた。

「ん……」
「ごめんなさい。そんな切ない顔をさせて」

 唇を引っ付けたまま囁かれる。また唇を塞がれ、今度は深いキスになった。口の中の性感帯を舌先で擦られ、舌を絡ませられると息苦しくなる。
 ベネが離れると唾液が糸を引いた。

「あなたの意志がどうだろうと、私はあなたを抱く。私はあなたにとっての悪役だから、こんな私に罪悪感なんて抱かなくて良い」

 そういってベネは笑う。

「でも、痛めつけるつもりはないんです。たくさん感じさせて、私に溺れさせるつもりなんだから」
「……俺は、男に突っ込まれても感じない」
「それは自分の体を知らないからじゃないですか?」
「自分の体は自分が一番よく知っている」
「そうですか? でも、まさかこんなところ……自分ではいじらないですよね?」

 ベネの手が俺の乳首を摘んだ。

「な……ッ?!」
「自分が触らない場所でしょ? そんなところが性感帯になるなんて、マーカスは知らないんじゃないですか?」

 ベネの手が乳首を擦り上げ、くすぐったい。

「ば、ばかっ! 男の胸が性感帯になるか! くすぐったいだけだ!」
「へぇ……くすぐったいだけですか」

 ベネの声が少し低くなった。その声に背がぞくりとする。
 ベネの悪戯する手つきが変わった。俺の胸に羽根を這わすように、触れるか触れないかの距離で撫でる。大きく円を描くような動きにくすぐったさが範囲を広げる。
 その手がたまに乳首をかすめる。

「あっ……」

 思わず声が出て手で口を塞いだが、その手をベネに剥がされる。

「あなたのここはたしかにまだ性感帯じゃないのかも。小さくちぢこまってしまって」

 ソフトタッチの指先が、乳首の周りをクルクルと撫でる。その動きにムズムズする。

「でも、小さくてもさっきよりツンと立ってきました。ほら、こうやってひっかけるほどに」

 カリッと爪をたてられたとたん、ビンッと体に電気が走った。

「はんっ」
「感じてしまいましたか?」

 ベネが俺の耳を舐めながら、低い声を吹き込む。それにも体の奥がゾクゾクする。

「あ……ぁ……」

 ベネの手が俺の乳首をくすぐるようにこねたり、摘んだりと悪戯してくるたびに、快感に体が動いてしまう。

「や、やめろ……ぁ」
「あなたのここ赤くなってしまいました。舐めてあげますね」
「やっ……!」

 ベネの湿った舌が俺の少し赤くなった乳首を舐める。その卑猥な光景に俺の股間まで熱くなる。
 舌でこねられるとムズムズする気持ちよさに、体がビクンとはねるのをとめられない。
 ジュッと先を吸われるのも電気が走るような快感がある。

「おか、しい……! そんなとこ……あっあ!」

 今までそんなところを触られても快感などなかったのに、何故かベネに触られると快感が生まれてしまう。
 チュッと口を離したベネが、唾液で濡れた唇を指で拭いながら艶かしく笑う。

「ね、だんだん気持ち良くなってきたでしょう? あなた自身が知らない性感帯はここだけじゃない。あなたの体の奥にも……あるんですよ」
「体の……奥?」
「ね、触ってあげましょうか」

 いつのまにか俺の股間のものが立ち上がって下穿きを押し上げている。乳首をいじられているあいだに、俺の快感に弱い息子は自己主張を始めていた。
 上に覆いかぶさっていたベネは、そのことに気づいていたらしい。
 ベネは俺の下穿きを引き抜くと、その下から現れた俺の息子に顔を寄せた。

「あっ……ベネ……」

 ベネにそこをすっぽりと咥えられると背徳感がある。綺麗な顔立ちにある形のいい唇に包まれていると思うだけで興奮する。
 たくましさはあるものの、顔の美しさは昔のままだ。美しい男に跪かれて俺の息子を咥えられているという光景は、たまにする夢想とかさなった。
 ベネの口内は柔らかく絡みつき、上下するたびに快感を引き出していく。
 ベネの紫がかった銀の長髪が俺の太ももをサラサラと撫でていくことすら気持ちいい。

「あ……いぃ……イクッ」

 いきそうになったところで、根本を押さえて止められた。

「あっ……なんで……!」
「まって。体の奥を触ってあげる約束を忘れていました」
「は……?」

 俺の尻に濡れた感触がした。いつのまにか香油の瓶がシーツに転がっている。

「もう一度、もっと気持ちよくしてあげますね」

 一度おさまりかけた息子をまたベネに咥えられて快感が高まるが、嫌な予感もする。
 案の定、尻を触られる感覚があり、穴を押す異物感がある。

「なに…なにを! やめろっ」

 口を離したベネは、俺の息子を手で抜きながら、後ろに触るのをやめない。

「ここの奥に気持ちのいい場所があるんです。たっぷり香油を使ったので痛くはないと思いますが……優しく広げますね」

 尻の奥に潜り込む感覚があり、体が跳ねた。

「やっ! そんな汚いところ!」
「大丈夫ですよ、クリーンの魔法をかけました。それに、下男が事前に準備したと聞きましたし」
「は?」

 下男は俺が王太子ということで、特別に俺について学園で世話をしている男だ。

「なぜ下男が……」
「あなたが婚約破棄を画策している話をして金を握らせたら、すぐに協力者となってくれました。すんなりこの部屋にも通してくれましたしね。あなたが不祥事をおこして路頭に迷うのは彼も困るんでしょうね」
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